コロナで親子収入減なのに、学費減免対象年収下げられ、支援なくし退学も!! 怒りが支援受ける弱者層に向き「分断」が!! ~10.12 コロナ禍での学費と奨学金への支援の要請に関する記者会見─大内裕和中京大教授と中央労福協会長・事務局長 2020.10.12

記事公開日:2020.10.13取材地: テキスト動画
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(取材・文:木原匡康)

 2020年10月12日(月)14時より東京都千代田区の文科省記者クラブにて、「コロナ禍での学費と奨学金への支援の要請に関する記者会見」が開催された。会見では、労働者福祉中央協議会(中央労福協)の神津里季生(りきお)会長と南部美智代事務局長、大内裕和中京大学教授が登壇した。

 はじめに神津会長が挨拶し、「今日の最大のポイントは、春学期の状況に比べ、(学生生活が)今一段と厳しい状況があるということ」「先週末に中央労福協として(文科省への)第三次の要請をしましたが、(中略)その中でも実態の把握を文部科学省としてしっかりやってもらいたいと要請しています」と述べた。

 「要請」とは、10月9日、中央労福協が萩生田光一文部科学大臣に提出した、「新型コロナウィルス感染症の影響拡大に伴う学費と奨学金への支援に関する第三次緊急要請」を指す。4月3日と6月24日に提出した緊急要請書に続くものである。

 続いて大内教授が、「今回の要請をしなければならない社会的背景」として、「緊急事態宣言が解除されてからも(学生の現状は)良くなっていない」と語った。

 大内教授は、大学生・院生向けアンケートをもとに、「7月の時点で学生のアルバイト収入は全体として減少傾向が続いている」「アルバイトが見つかりにくい状況が続いている」と指摘、「後期(秋学期)の学費・学生生活費は前期よりも厳しくなる危険性がかなり高い」と指摘した。

 具体的には、4月学費の準備時期にアルバイトが減少した期間は3月1か月だけだったのに対して、10月学費の準備時期にアルバイトが減少したのは3~7月と長いこと。さらに、前期は「オンライン授業」が多く、都市部の下宿から実家に戻って家賃・生活費の負担が軽減されていた学生が、後期は「対面授業」が増加して下宿から通うための負担が増加したことをあげた。

 8月以降、大内教授のもとには、本人のアルバイト以外に親・保護者の失職・収入減にともなう相談が増加しているという。大内教授は「コロナで父の鬱が再発して仕事を失い、母のパートと残りの貯金のみで生活」「死ぬ気で(学費の)60万を手に入れなければ退学か休学」等の生々しい声を紹介した。

 大内教授は対応策として、大学による学費の延納・分納の対応を強く求めた。

 また、5月19日に閣議決定された政府の支援策「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金制度」の問題点として、学生総数370万人の半数以上がアルバイトをする現実に対して、支援対象が43万人で少なすぎる点や、実態に合わない申請要件の厳しさ等を指摘した。

 さらに、2020年から始まった「大学等における修学の支援に関する法律(大学等における修学支援制度)」の問題点として、奨学金利用者が全学生の約半数に上るにもかかわらず、同制度には最も人数の多い、年収380万円以上の中位所得世帯を対象から除外していることをあげた。

 特に、授業料減免基準の年収が2019年までよりも引き下げられたために、去年までは減免された学生が、今年は減免されなかったり、減免額を減らされる事態が起こっているという。

 大内教授は、政府・与党が支援対象を約1割に限定する厳しい「選別主義」を取っていることが、大量の中退者や、実質的に学ぶ時間のない学生を出す危険性を指摘した。

 さらに、全国的な中退者数の定期的・継続的な調査が行われていないことが、実態を見えなくしている問題も指摘した。

 続いて、中央労福協の南部美智代事務局長が、文科省に提出した「新型コロナウィルス感染症の影響拡大に伴う学費と奨学金への支援に関する第三次緊急要請」の内容を紹介。要請には、大内教授が指摘した、後期の学費の「延納・分納・減額」の周知・要請や、「学生支援緊急給付金」の支援対象43万人の拡大、「大学等における修学支援制度」の支援対象枠拡大や、「緊急特別無利子貸与型奨学金」の拡充、さらに中退者数の調査ほかが盛り込まれている。

 南部事務局長は、奨学金制度の問題に関して、中央労福協のホームページに寄せられた生の声も紹介した。

 中でも、新制度の対象外となった中間層から、納税しても中間層に恩恵がなく、低所得者層のみの支援に使われること、自分たちが奨学金返済を背負う不公平感や不満の投稿が多数寄せられたことが目を引く。怒りの矛先が、支援を受けている生活保護世帯、住民税非課税世帯、母子家庭など社会的弱者に向けられた投稿が多数あり、「社会の分断が懸念される」と指摘した。

 中央労福協は、奨学金に関する無料の電話相談会を11月6日(金)にフリーダイヤル0120-602911で行う。同日に全国32都道府県の労福協でも相談会を実施、他の県でも10月~11月に別日程で実施するとのことである。

■全編動画

  • 日時 2020年10月12日(月)14:00~
  • 場所 文科省記者クラブ(東京都千代田区)
  • 詳細 大内裕和氏 Twitter
  • 主催 中央労福協、大内裕和氏

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