2012年12月28日(金)19時より、東京都千代田区の日比谷図書文化館(旧都立日比谷図書館)で、日比谷屋内集会「『集団疎開裁判』と福島の今までとこれから」が行われ、ふくしま疎開裁判の歩みや、今後の活動方針について、さまざまなアイデアが話し合われた。
(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)
2012年12月28日(金)19時より、東京都千代田区の日比谷図書文化館(旧都立日比谷図書館)で、日比谷屋内集会「『集団疎開裁判』と福島の今までとこれから」が行われ、ふくしま疎開裁判の歩みや、今後の活動方針について、さまざまなアイデアが話し合われた。
■ハイライト
冒頭、主催者の挨拶と、金曜アクション演劇班による福島原発をテーマにした寸劇上演。続いて、弁護団の柳原敏夫弁護士の基調報告「『集団疎開裁判』と福島の今までとこれから」が行われた。
柳原弁護士は「発災後の3月19日に、長崎大学医学部の山下俊一氏、高村昇氏が、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就任。21日、山下氏は『放射能の影響は、ニコニコ笑っている人には来ません。クヨクヨしている人に来ます』と話し、汚染被害の矮小化を図るような講演を行った。4月19日、文科省がICRPの勧告を基準に年間20ミリシーベルトを設定。5月23日、27日、文科省前において、福島県の親たちが年間20ミリシーベルト基準の撤回抗議を行い、27日、文科省はこれを撤回した。6月24日、外部被ばくに争点をあてて仮処分の申し立てをする。7月5日、第1回裁判。郡山市は自主避難(転校)を主張。12月16日、野田総理の『収束宣言』に合わせ原告敗訴。12月27日、仙台高裁に異議申し立てをした」と、一連の経緯を話した。
柳原弁護士の講演のあとは、質疑応答と参加者たちの意見交換になった。「裁判にはどうやったら勝てるのか。なぜ、疎開裁判の勝率が低いのか。なぜ、子どもの疎開が実現しないのか。郡山裁判所が却下し、救済がないのはなぜか」などの質疑が寄せられた。
柳原弁護士は「国がここで疎開を認めると、今まで事故を小さく見せてきたことが、破綻をきたす。それは、原発産業への全否定につながる」とした上で、「なぜ、もっと医者や教育者たちから声があがらないのか。それは権力側の圧力があるからだ。サイレントマジョリティの底上げをしながら、福島からの声も、もっと政府に届ける必要性がある」と語った。
次に、「行政訴訟でなく民事訴訟、人格権のような仮処分で訴える理由は? セカンドオピニオンの受診拒否は人権侵害そのものだが、今回の疎開裁判を仮処分一本で申し立て続けている理由は?」との、問いがあった。柳原弁護士は「今回の提訴は、14人の子どもたちを疎開させる裁判で勝って、一点突破、全面開放を目ざす手段をとった。のちに、年間1ミリシーベルト以上の地域の子どもたちを、すべて疎開させることにもつながる。人権侵害などで訴える方法はあるが、時間的なことも考慮に入れて、ひとつに絞った作戦を立てた」と答えた。
他の参加者からも「反原発運動は、子どもの被ばくと原発労働者の命が基本的な出発点だ。すでに奪われた生存権の回復があまり議論になっていない。原発事故子ども・被災者支援法があるが、中身が決まっていない。年間20ミリシーベルトという線引きをして、支援対象を少なくする方向で行政は動いている。早く疎開裁判などで訴えていかなくては」という声があがった。
また、「政府はセシウムのみを調査しているが、水に溶けやすいベータ核種のストロンチウムも危険だ。生物の骨などに蓄積しやすい。アルファ核種は内臓にたまりやすい。これらも調べる必要がある」「今度、原子力規制委員会の『緊急被ばく医療』と『福島原発事故による住民の健康管理のあり方』の2つの検討チームの答申が、2~3月にでてくる。これが、のちにデファクトスタンダードになる可能性があるので注視すべきだ。最近、セシウム心筋症のショック死も増えている」など、数々の情報も寄せられた。