2020年2月2日投票の京都市長選挙をめぐり、1月26日の京都新聞等に掲載された門川大作候補の陣営による「反共広告」が世間から猛烈な批判を浴びていることは、日刊IWJガイド等でお伝えしているところである。ところが、同じ京都新聞の30日朝刊に、今度は福山和人候補の陣営が、門川陣営の広告にレイアウトなどがそっくりの全ページ広告を掲載して話題になっている。
(IWJ編集部)
2020年2月2日投票の京都市長選挙をめぐり、1月26日の京都新聞等に掲載された門川大作候補の陣営による「反共広告」が世間から猛烈な批判を浴びていることは、日刊IWJガイド等でお伝えしているところである。ところが、同じ京都新聞の30日朝刊に、今度は福山和人候補の陣営が、門川陣営の広告にレイアウトなどがそっくりの全ページ広告を掲載して話題になっている。
記事目次
福山陣営の広告のキャッチコピーは、
「大切な京都だから
すべての市民の声を聞く市長に『YES』」
となっており、門川陣営の広告のキャッチである、
「大切な京都に
共産党の市長は『NO』」
という言葉をパロディにしたのは一目瞭然。
門川陣営の広告が「いまこそONE TEAMで京都を創ろう!」と訴えた部分に、福山陣営の広告では「いまこそ市民の力で新しい京都を創ろう!」と記載して、「ONE TEAM」=「反共連合」と「市民の力」を対比している。
また、前者が「地下鉄延伸」「北陸新幹線」「文化庁本格移転」などの「土建型政策」を国と府の協力で実現すると訴えた部分には、「返さなくてもいい奨学金」「中学卒業まで医療費無料」「小学校のような中学校給食」「敬老乗車証の現行制度を守る」「ホテル・民泊は総量規制」など、「市民の暮らしが潤い、地域にお金がまわり、それを教育、医療、福祉に宛てる『住みたい街NO.1』の京都を創っていきます。」と記して、政策内容もはっきりと対照させている。
顔写真付きの応援団のスペースには、50音順に13人の方々が掲載され、香山リカ氏(精神科医、立教大学教授)、志位和夫氏(日本共産党委員長)、浜矩子氏(同志社大学教授)、山口二郎氏(法政大学教授、政治学者)、山本太郎氏(れいわ新選組代表)など著名な文化人や政治家の顔が並ぶ。
そして門川候補の顔写真スペース同様、福山候補の顔写真にも「期日前投票に行ってください」と記されたうえ、前者で自民党・公明党・国民民主党・立憲民主党・社民党など応援団体のスペースに共産党・れいわ新選組・新社会党などが記されるという徹底ぶりである。
福山候補の応援団に名を連ねる西郷南海子氏(大学院生)は、両陣営の広告紙面を対比させて、「京都市そして全国のみなさま、これがわたしたちの『YES』です!!」とツイートしている。
■西郷南海子氏のツイート
京都市そして全国のみなさま、これがわたしたちの「YES」です!!#大切な京都だから全ての市民の声を聴く市長にYES#福山和人#京都市長選
上=京都新聞2020.1.30(福山陣営)
下=京都新聞2020.1.26(門川陣営) pic.twitter.com/COgTyDbq8r— 西郷南海子🌹Minako Saigo (@minako_saigo) January 29, 2020
相手陣営の侮辱的広告を逆手に取って自陣営の政策を訴える、このウイットに富んだ切り返しは、何とも見事である。
一方、門川候補を推薦する立憲民主党の幹事長、福山哲郎参議院議員は、28日にツイッターで、門川陣営の「反共広告」に「違和感を感じる」と発言している。同日に行われた立憲民主党の定例会見でも、記者からこの広告を中心に、京都市長選挙についての質問が集中した。
そもそも立憲民主党京都府連が門川氏を推薦するのは、門川氏が京都市の教育長から京都市長に立候補した2008年当時からで、そのころ民主党だった福山議員らともつながりがあり、これまで「市民と共に成果をあげてきた」実績を評価しての推薦だと福山議員は説明した。
「『コンクリートから人へ』の立憲民主党が、学校給食の改善や待機児童解消への対策には消極的で、仁和寺前にホテルを作る門川氏をなぜ推薦するのか」との質問には、「門川氏はトータルとして政策をしっかりやっている」と曖昧な回答に終始した。
そして26日に新聞各紙に掲載された「反共広告」については、「選挙戦が過熱していることは理解するが、あのような広告が出されたことについては、違和感を覚えたというのが率直な感想」と述べた。
SNS上では、28日の福山氏の「違和感」というツイートに対して、「『違和感』という言葉だけでお茶を濁すのか」といった批判が多く寄せられた。定例会見の場で、福山氏はこのことについて問われると「『違和感を感じた』が、それ以上でも以下でもない」と開き直り、「具体的にどのような点に違和感を感じたのか」という質問には終始明言を避けた。
福山幹事長は、立憲民主党が門川氏を推薦するのは「共産党推薦候補を推薦できないから」ではないと言いたいのかもしれない。記者から衆議院選挙や東京都知事選挙について質問された時は、共産党を含む野党共闘は否定しないとも取れる回答もした。また、繰り返し質問をした京都新聞の記者に「あなたのところの新聞が審査をせずにあのような広告を載せたのはなぜか」と、苛立ちをむき出しにして「逆ギレ」気味に質問を投げ返した。
件の広告に勝手に顔写真を掲載され、あたかも自身が特定の政党を認めない姿勢かのように社会から受け取られたと遺憾の意を表明した、日本画家の千住博氏や放送作家の小山薫堂氏のように、「反共」広告に対して明確に「ノー!」と答える姿勢が、福山幹事長には見られない。福山幹事長自身、これまでの言動から基本的に「反共」主義者であり、近年の野党共闘においても、共産党との共闘には実は消極的であると見られていた。過去にIWJでも、福山氏のそうした一面をうかがわせるような場面をとらえている。
福山議員は2016年の参院選を目前に控えた1月22日、市民勝手連「ミナセン(みんなで選挙)」の全国各地29団体が集まり、岩上安身が司会をつとめたシンポジウムに、当時の民主党を代表して参加した。「みんなで勝てる候補者を応援していくことが重要です!」と繰り返し、「そのことに対してみなさんも協力をしてください!」と訴え、オール野党による共闘を呼びかけた共産党に対して候補者を下ろせとも取れる発言をして、聴衆のブーイングを浴びた。
この時、福山議員は「それぞれの地域の事情は別なので、そこは理解をしてください」と訴えている。福山議員が訴えた「地域の事情」とは、このシンポジウムの直後、2月7日に投開票を控えていた前回の京都市長選だったことは間違いない。
こうした姿勢こそが、野党共闘を切望する有権者たちから立憲民主党がいまひとつ信用されない一つの要因であろうと思われる。今回の「反共広告」は、単なる「失礼」「非常識」のレベルにとどまらず、戦前戦中の日本の政府が、治安維持法等の名の下で、共産党をはじめとして、平和主義者、民主主義者全般までを弾圧、排除していった過程に通じる。放置すればまたあの「暗黒時代」が到来することになりかねない。日本共産党の小池晃書記局長も「古典的な反共攻撃」と門川陣営を批判している。
野党共闘そのものへの希望はつなぎつつも、「京都の特殊事情」という言葉を易々と認め、受け入れてはならないとIWJ代表の岩上安身は30日、ツイートしている。
「僕は野党共闘に今後も希望を抱きたいと思います。不信感を持つべきは、野党共闘そのものではなく、『京都の特殊事情』との言い訳で与野党の『反共』野合を押し通す福山氏や前原氏です。『京都の特殊事情』を認めれば、『日本の特殊事情』を認めることになりかねない」
■岩上安身のツイート
僕は野党共闘に今後も希望を抱きたいと思います。不信感を持つべきは、野党共闘そのものではなく、「京都の特殊事情」との言い訳で与野党の「反共」野合を押し通す福山氏や前原氏です。「京都の特殊事情」を認めれば、「日本の特殊事情」を認めることになりかねない。 https://t.co/ZQVy354Dhr
— 岩上安身 (@iwakamiyasumi) January 30, 2020
一方で、門川氏を推薦する社会民主党では、他の県連や議員から「自由投票にすべきでは」などといった意見も出始め、社民党京都府連は当該広告について「一切関与していない」という抗議声明を出すに至っている。しかしながら、門川候補の推薦は取り下げていない。
やはり門川氏を推薦する国民民主党でも、原口一博衆議院議員が、広告の掲載があった26日にツイッターで「良識を疑う」と発信している。しかしこちらも党として門川候補の推薦を取り下げるという動きはまだ見えていない。国民民主党の京都府連会長は、前原誠司氏である。
■原口議員のツイート
①良識を疑う広告。ヘイトではないか?
②この広告に国民民主党や立憲民主党の名前?どういう経緯で名前が出ているのか?機関決定をしている?事実ならその責任を問われるだろう。要調査。
③下のACの広告は何?上の広告とあたかも関連するかのように私には見えるが偶然なのだろうか? https://t.co/2NLGHlJmE2
— 原口 一博 (@kharaguchi) January 26, 2020
この件に関して、国民民主党代表の玉木雄一郎議員に、ジャーナリストの横田一氏が直撃取材した記事を掲載した。ぜひご覧いただきたい。
※【特別寄稿】「福山和人候補が市長になれば京都市庁舎に赤旗が立つ」!? 京都市長選で現職・門川大作候補の総決起大会で支持団体会長の立石義雄・京都商工会会頭が「反共」新聞広告に続き、嘘八百の反共演説!(ジャーナリスト横田一)
(URL入る)
各党とも、党の確認や了解を得ずに広告に党名を出したことについては、抗議する姿勢を見せているが、推薦する候補として門川氏がふさわしいのかどうかを再度検証するまでには至っていないようである。
門川陣営を推薦する側のこうした混乱状況の中、1月30日の日刊IWJガイドでも紹介したように、ジャーナリストの横田一氏からIWJに届いた、門川陣営が福山和人候補の健闘に危機感を持っているというレポートを記事として掲載している。
このレポートから、今回の新聞広告は門川候補側の「焦り」が形になったととらえることもできる。しかし、やはり「反共広告」を生み出した動きと人々の心性は、民主主義の破壊につながりうるとの警戒心をもって厳しく見ていくべきである。ぜひレポートをご覧いただきたい。
岩上安身は昨年11月18日に福山和人候補のインタビューを行っている。このインタビューでは、共産党をのぞく野党が自公と「オール京都」と称して共産党を排除しようとする京都の特殊事情についてもお話をうかがっている。この「オール京都」こそ、今回の「反共」広告の主体である「ONE TEAM」であると思われる。
IWJではこのインタビューから切り出した下記の動画も、YouTubeにアップしている。SNS等での拡散へのご協力と、YouTubeのIWJアカウント「Movie Iwj」へのチャンネル登録を、ぜひよろしくお願いします!
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IWJでは毎日YouTubeへ様々な動画をアップしています。
一方、告示前の1月13日に、IWJの関西中継市民の方が、公明党京都府本部代表・竹内譲衆議院議員らが行った街頭演説で門川市長の業績をたたえる演説を収録した。この映像は、竹内議員が映像の削除を求めて妨害し、IWJが公明党に削除要請の理由に関する回答を求めたが、再三の問い合わせにも関わらず、得られなかった。回答がない場合は録画配信を行う予定と通告していたため、ここに公開する。
なお、IWJとしては公平を期するため、岩上安身によるインタビューを門川大作候補と村山祥栄候補にも申し入れたが、両候補から断られた。このことは特筆大書しておきたい。