新型コロナウイルスによる肺炎に関して、1月28日、日本人で初の感染が確認された。しかも武漢への渡航歴がない奈良県に住む60代の男性である。男性はバスの運転手で、1月8日から11日と、12日から16日の2回、武漢からのツアー客をバスに乗せていたとのことである。
断定はできないが、バスツアー客からの感染を疑わざるを得ないだろう。
さらに28日は、武漢に住み日本を訪れた、40代の男女2人も新型コロナウイルスに感染していると確認された。今後さらに増えていくことは確実と思われる。
28日、野党が厚生労働省に、中国政府の発表よりも実際には患者数はもっと多いのではないか?と質問したところ、厚生労働省は「数理疫学の専門家から提供された数字では、実際には発表の3倍から4倍程度の患者がいてもおかしくない結果」と回答した。
- 新型肺炎 「患者は中国発表の3~4倍の可能性も」厚労省(NHK、2020年1月28日)
1月28日の日刊IWJガイドでお伝えしたように、コロナウイルスはインフルエンザのウィルス同様に、発症するまで感染が分からない。そのため、感染していながら何も症状がなく、自分でも気づいていない人がたくさんいる可能性が非常に高いのである。中国での感染者が発表の数倍というのもうなずける。
したがって日本にも、表に出ていない感染者がすでにかなりいるはずである。
そうした中で、28日、日本政府のチャーター機が武漢に向けて出発し、206人を乗せて29日朝、帰国した。約650人が帰国を希望していることから、順次チャーター機を手配する予定である。
厚労省の発表によると、機内検疫で4人に発熱等の症状が認められた。この4人には、機内で周囲への感染防止措置がとられ、日本到着後に医療機関へ搬送された。また、1人が降機後、空港で待機中に吐気の症状が認められたため、医療機関へ搬送された。
医療機関へ搬送された上記の5人以外の201人のうち、同意の得られた199人に対して国立国際医療研究センター(NCGM)において再度医師による問診、診察、検査が行われ、191人は特段の症状無しと確認された。この191人には、少なくとも2週間は外出を控えるよう要請し、定期的に健康状態を予定している。
また、NCGMでの検査に同意の得られなかった2名については、検疫官が自宅に送り、今後、厚労省が健康状態についてのフォローを行うとのこと。
- 新型コロナウイルスに関連したチャーター便に係る帰還邦人の状況について(厚生労働省、2020年1月29日)
しかし、「外出を控える」とはいえ、部屋から一切外出しない、家族も含めて誰とも接触しないとの「隔離」が義務づけられているわけではない。潜伏期間で症状の出ていない感染者が、悪意なくコロナウイルスを広めてゆく可能性は否定できない。国の対応は懸念した通り、中途半端なものになったのではないだろうか?
現在、猛威を振るっているのにスルーされているアメリカのインフルエンザ!! コロナウィルスと比べ、死者数で62倍以上、感染者で3000倍!!
現在、コロナウイルスに日本社会は戦々恐々としているが、実はその一方、アメリカでは、インフルエンザが恐るべき猛威を振るっている。
アメリカ、シアトルの日本語情報サイトJUNGLE CITY .COMによれば、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が1月18日に、感染者がなんと1500万人、入院患者が14万人、死者8200人以上と発表している。
- アメリカでインフルエンザ感染が拡大 入院患者は140,000人、死者は8,200人以上(JUNGLE CITY .COM、2020年1月24日)
- アメリカ疾病予防管理センター(CDC)
岩上安身は29日、次のようにツイートしている。
「この米国でのインフルエンザのパンデミックは、まだ日本ではほとんど報じられていないが、規模は拡大中。死者8200人というのも、ワシントンDC発行の政治専門誌、ザ・ヒル誌によると「at least」、つまり少なくとも、ということです。続報は、IWJは日刊ガイドその他で出していきます。ぜひ会員登録を」
- 岩上安身のツイート(2020年1月29日)
29日現在、新型コロナウイルスによる死者は132人に、感染確認された患者の数は5000人を超えたとされるが、比較すればアメリカのインフルエンザの被害の方が、死者数では62倍以上、感染者で3000倍と、はるかに大きいことがわかる。なぜ、日本のマスメディアはこの現実を報じようとしないのだろうか?
- 新型肺炎 中国国内の死者132人 患者5000人超(NHK、2020年1月29日)
1月24日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)はインフルエンザの危険性に改めて目を向けることを勧めている。コロナウイルスよりインフルエンザの方が危険だという説もあるのである。
- 「新型コロナウイルスよりもインフルエンザが危険」な理由とは?(Gigazzine、2020年01月27日)
1月23日時点の新型コロナウイルスによる死亡者の年齢の中央値は75歳。もともと高齢で、抵抗力が弱く、しかも亡くなった方の多くは、高血圧や糖尿病、パーキンソン病などを抱えていた。若くて健康な人に対して、コロナウイルスが死に至る強い毒性をもっているとまでは、言いきれないのである。
また、世界保健機関(WHO)は「ウイルスなどがどれくらい多くの人に感染しうるか」の能力を示す「基本再生産数」について、新型コロナウイルスを「1.4から2.5」つまり「1人の感染者から約2人に感染」としている。
一方インフルエンザの基本再生産数は「2から3」で、「1人の感染者から2人ないし3人に感染」とされる。つまり、コロナウイルスよりもインフルエンザウイルスの方が感染力が強いのである。
全世界的には、季節性インフルエンザは毎年300万人から500万人に感染し、最大65万人の死者を出すとされる。日本でも2018年から19年のシーズンの推定患者数は累計約1210万人と厚生労働省が発表している。
こうしたことから、新型コロナウイルスについて、WHOは2020年1月24日に「緊急事態にはあたらない」と発表。一方、季節性インフルエンザは各国で毎年流行しており、アメリカのヴァンダービルト大学医療センターのワクチン専門家、ウィリアム・シャフナー氏は「インフルエンザに比べれば、新型コロナウイルスの危険性は微々たるもの」と語っている。
コロナウイルスにばかり偏重して騒ぎ立てている日本政府のマスコミのパニックぶりには、すこし冷静になって受けとめる必要がありそうである。
もし、コロナウイルスの危険性ゆえに、中国から日本人をチャーター機で引き揚げさせる必要があるならば、それ以上に深刻なアメリカからも、チャーターで日本人を引き上げさせなければならないはずである。しかし、在中国の日本人の数は約12万人、それに対して在米の日本人の数は約44万7000人(外務省調べ、2018年10月1日現在)。日本人観光客は中国約268万人、アメリカ本土約360万人、ハワイ約159万人と、途方もない人数となる(日本政府観光局調べ、2017年)。
希望者全員の帰国は非現実的であり、同時にインフルエンザ感染者を帰国させてしまうリスクについても真剣に考えなくてはならない。
微力な市民には、マスク、人混みを避ける、手洗いといった日常生活の中での防衛を心掛けるしかない。新型コロナウイルスに注意をするのと同じくらいインフルエンザ予防にも力を入れる必要がありそうだ。それが、コロナウイルスの感染予防にもなると思われる。