山本朋宏・防衛副大臣は12月17日に山口県庁を訪れて村岡嗣政(つぐまさ)知事らと面談、イージス・アショア配備について「陸上自衛隊むつみ演習場」(萩市と阿武町)が唯一の適地とする再調査結果を報告した。
防衛省が5月に山口と秋田で地元説明をした調査報告書に、角度違いなどのミスがあることが発覚し、共に再調査をしていたのだが、不思議だったのは秋田が隣県の青森と山形を含めた再調査を続けていたのに対し、山口では隣接する福岡県の調査をせずに早々と1ヶ所に絞り込み、前回と同じ結論を出したことだ。
しかも秋田については12月11日付の東京新聞が「地上イージス 秋田見直し 反発に配慮、政府検討」と題して、政権内の見直しの動きについて「菅義偉官房長官は住宅地との距離を考慮するよう既に防衛省へ指示」などと報じてもいた。
- 地上イージス 秋田見直し 反発に配慮、政府検討(東京新聞、2019年12月11日)
当然、誰もが「見直しの動きは山口にも飛び火する可能性は十分にある」と考える。安倍首相ら自公が支援した村岡知事でさえ、「秋田県と山口県への配備で日本全体を最も効果的に守れる」という防衛省の説明を紹介した上で、「もし(秋田の新屋演習場以外の)別の場所になれば、山口に置くことの意義について改めて確認する必要はあると思う」と釘を刺したのはこのためだ。
この知事発言に萩市の藤道健二(ふじみちけんじ)市長も同調。「秋田県が再検討されている状況では、萩市長として配備に関する態度の表明はできない」と強調し、門前払いに等しい対応をした。
「町の存亡に関わる危機」として一貫して配備断念を求めてきた花田憲彦・阿武町長も、「候補地の演習場は、住民の生活圏や生産活動圏にあまりにも近接しすぎていて、住民の理解は到底得られない」「住宅地との距離が判断要素になるのであれば、秋田であっても山口であっても人の命の重さには変わりはない」と畳みかけた。
秋田での適地見直しの動きが山口の関係自治体トップにも波及した形だが、なぜか、地元山口が輩出した憲政史上最長総理大臣である安倍首相(山口4区)が、秋田以下の差別的対応を受けていることに対して異論を唱えていないのだ。