少し前のニュースになるが、国民年金や厚生年金などの公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は2019年2月1日、2018年10月〜12月期、四半期ベースの赤字額としては過去最大の14兆8039億円の運用損が出たと発表し、大きな問題になった。GPIFの総資産額は約159兆円なので、その約1割がわずか四半期で消えてしまったことになる。
- 公的年金運用損、最悪の14.8兆円 昨年10~12月(朝日新聞デジタル、2019年2月1日)
GPIFの水野弘道理事兼最高投資責任者(CIO)は8月20日、米国のカリフォルニア州職員退職年金基金の理事会で、GPIFが2018年10月〜12月期、株式と債券、為替のすべてで損失を出したと明らかにした。投資ではリスクを分散させるため、株式で損失が出ても債権では利益が得られるようにするのがポートフォリオ分散の一般通念だが、水野氏は、あらゆる資産クラスで損失を出し、為替差損も被る状況は、それまで起きたことがなかったことだと述べた。
- GPIF水野氏、全資産クラスで損失の危険-市場のシンクロに警鐘(ブルームバーグ、2019年8月21日)
私たちの年金が危機に瀕しているにもかかわらず、マスメディアがろくろく報じない「異常」な状況が続いている。20日の水野氏の発言については、ブルームバーグ以外に報道が見当たらない。日本の大手メディアの沈黙が何を意味するのか不気味だ。
また、GPIFを所管する厚生労働省は、公的年金制度の持続可能性を5年に1度点検する財政検証の結果を、8月27日に3ヶ月遅れで公表した。野党は「参院選対策」だったのではないかと批判を強めている。
年金財政検証では、年金の財政状況が前回2014年に比べ、改善したとしていますが、名目運用利回りが3〜4%と高く設定されているなど、将来の見通しが甘く設定されているとの見方もある。
- 年金財政検証:成長実現ケースで所得代替率50%超、5年前比改善(ブルームバーグ、2019年8月27日)
IWJは今後も、徹底して年金問題について注視を続けていきたい。