再び安倍政権の大臣が批判を浴びている。開票日前日の24日、埼玉県さいたま市の大宮駅前で知事選の応援演説をしていた柴山昌彦文部科学相に対し、大学入試改革への反対などを訴えた若い男性が警察官たちによって排除されたことが、ネット上で話題になった。
- 演説中に抗議受けた文科相「大声出す権利保障されない」(朝日新聞、2019年8月27日)
- 柴山文科相に批判の嵐 英語民間試験に異議の学生を即排除(日刊ゲンダイ、2019年8月28日)
発端は来月4月から導入される「英語民間試験」に関する書き込み。英語民間試験について、「大半が批判なのに」というツイートに対して「サイレントマジョリティは賛成です」と一蹴。また、「エキスパートはこう主張しています」と、賛成する論者の記事を取り上げた。
- 柴山昌彦文科相のツイート(2019年8月16日)
- 柴山昌彦文科相のツイート(2019年8月16日)
朝日新聞出版が発行する週刊誌「AERA」では、8月、アエラネットやSNSを通じて、共通テストについてアンケートを実施。教員や保護者、生徒など271人から回答を得た。英語の民間試験については、9割が「不安」(93%)、「問題がある」(91%)と回答。実施については、「中止すべき」が7割、「延期」が2割。9割が「20年度の実施を見送るべき」という、結果となった。
- 英語民間試験「中止」「延期」が9割 高校生が直訴する異常事態(AERA 、2019年8月26日)
また、IWJは教員らによる大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用中止を求める記者会見を取材している。こちらもあわせてご覧いただきたい。
高校生や保護者、学校関係者から不満が噴出する中、実施団体である「TOEIC」も離脱。こうした状況の中での柴山文科相の「サイレントマジョリティは賛成です」といった発言は「驕り」であり「偽り」であると言わざるを得ない。
こうした柴山文科相にしびれを切らした慶応大学の1年生が、24日、埼玉県知事選の応援に来た柴山氏の演説中、「若者の声を聞け」などと記したプラカードを掲げ「柴山辞めろ」「入試改革を白紙撤回しろ」と発言。すると、スーツ姿の警察官に3人がかりで引っ張られ、排除され、ベルトがちぎれたとのこと。
柴山文科相はこの強制排除について26日に、「少なくともわめき散らす声は鮮明にその場にいた誰の耳にも届きましたけどね。」とツイートした。
- 柴山昌彦文科相のツイート(2019年8月26日)
さらに、柴山文科相は27日の会見で「(演説会場で)大声を出すことは権利として保障されているとは言えないのではないか」、「表現の自由は最大限保障されなければいけないが、選挙活動の円滑、自由も非常に重要」、「演説会に集まっておられた方々は候補者や応援弁士の発言をしっかりと聞きたいと思って来られているわけですから、大声を出したり、通りがかりでヤジを発するということはともかくですね、そういうことをするというのは、権利として保障されているとは言えないのではないか」との見解を示した。
- 演説中に抗議受けた文科相「大声出す権利保障されない」(朝日新聞。2019年8月27日)
公選法第225条は、「選挙の自由妨害罪」について規定している。ヤジやプラカードを掲げての抗議などの行為が、選挙の自由妨害といえるのだろうか。
IWJは、7月19日の日刊IWJガイドで、札幌市で起こった街頭演説を行った安倍晋三総理にヤジや抗議の声を上げた聴衆が北海道警に取り押さえられた同様の事件で、上脇博之・神戸学院大学教授に取材を行っている。
上脇教授は、公選法第225条の2の「演説を妨害し」という文言に注目し、「演説をする人も演説を聞く人も、これだともう演説できないよ、というくらいの妨害でないと無理なんです。これはどう考えても、演説する側も演説を聞く側も、演説を行うこともできないし、演説を聞くこともできないくらいの妨害でない限り、選挙の自由妨害罪には該当しないと解釈すべきなんですね」と述べた。
- 札幌市で街頭演説を行った安倍晋三総理にヤジや抗議の声を上げた聴衆が、北海道警に問答無用で取り押さえられる事態が発生! IWJの直接取材に応じた上脇博之・神戸学院大学教授は、「選挙の自由妨害罪には該当しないと解釈すべき」「基本的人権を侵害している」と批判!(日刊IWJガイド、2019年7月19日)
こうした警察の過剰警備は、現在の政権特有の不寛容さや基本的人権を尊重しない姿勢が表れているように思える。