インターネットのビジネス情報サイト「ビジネスジャーナル」が7月1日、「世界3大投資家」の一人で、「投資の神様」とも称される米国人ジム・ロジャース氏のインタビューを掲載している。
今年になって日本株や円をすべて売ったというジム・ロジャース氏は、インタビューの冒頭、その理由を次のように語っている。
「安倍政権の政策を見ていると、少子化対策もろくにしないし、債務は膨れ上がるばかり。そのため、長期的に見れば、日本が衰退すると思ったからです。日本株は、あくまでも中期的な投資であって、長期的なものではありません」
- “投資の神様”が日本株をすべて売った理由…「コメ等への高関税で日本人が多大な不利益」(ビジネスジャーナル、2019年7月1日)
この記事を紹介するツイートに、岩上安身はリプライする形で、以下のようにつぶやいた。
2019年7月2日の岩上安身のツイートを加筆、修正して掲載する。
これは、あたり前の見解だと思いますね、本当に。歴代自民党政権のツケでもある。少子化対策をやろうとして現金給付に着手した民主党政権は、野党だった自民党に強く反発され、小さなスケールで始めた子ども手当も結局、廃止された。で、民主党から政権を奪った安倍自民はアベノミクスで国債を爆増。
このあと、どうするんですかって話ですよ。出口なしですよ。超低金利政策もインタゲ(インフレターゲット)で、2年で上向くからと言いながらもう6年。金融機関はゼロ金利で利ざやを稼げるわけなくて、地方金融機関は安倍政権下で瀕死の状態。大手メガバンクも、野村證券ですらも、アップアップです。しかも円安。
最大の根本問題である人口問題には手をつけず、日本の金融機関も、企業もボロボロにしてしまい、しかも円安となれば、あとは外資に買っていただく、ということしかなくなりますね。G20のあと、何が都内で起きていたか。どこもニュースにしないが、ある会合が都内のホテルで開かれていた。
この7月1日、某国の投資家たちと日本の金融機関関係者が集まるフォーラムが行われていました。ホテルに確認すると、参加者は1000人。主幹事の金融機関に取材すると「内容は言えない」の一点張り。まるで秘密会合のようです。
某金融機関のサイトには中途半端にご案内が残っていますが、詳細を記していたはずのPDFは削除されています。何がどこへ売られるのか、私は知りません。もし知って書けばインサイダー取引の疑いをかけられかねない。私は一切、株も為替も債権も売買しませんが、それでも面倒に巻き込まれかねない。
いずれ、色々な商談がまとまったら表に出てくるでしょう。メディアの各記者らがこの1日の巨大フォーラムについて知っているかどうか。知って気づいて取材しても、書くのははるか先になるでしょう。
金融ネタでもう一つ付け加えておくと、今、金の匂い、バブルの匂いをかぎ付けることには敏感な一部の富裕層が、証券会社の営業マンに「次はMMTがくるって?」と、問い合わせが相次いでいるそうです。
アベノミクスは金融緩和が足りなかった、アベノミクス以上の超異次元金融緩和を、と公言しているのが、立命館大学教授で山本太郎氏のブレーンの松尾匡氏。こうしたアジテーションを聞いて、市井の人々はピンとこないかもしれないが、利にさとい富裕層連中はピンときてしまいまくりなんですね。
富裕層は、アベノミクスの継承バージョンであるMMTをも材料にし、バブル期待で、金をつぎ込む。株価が上昇したところで売りぬけて利益確定するつもりです。なので、言い出したのが左派のリフレ派の松尾匡氏であろうと、採用して旗を掲げたのが急進左派と見える山本太郎氏であろうと構わないんです。
一部のマスメディアも、れいわ新選組が自民党の一部層を取り込んでいると、チラッと書いています。どういう層なのか、何を期待してのことなのか、具体的には彼らは書きませんけど。これまでの山本太郎氏の政策で、自民信者受けする政策はありません。それが急に自民支持者を惹きつけ始めた。
これまでの山本太郎氏の政策にプラスされたのはMMTですね。「そもそも国民に主権があることがおかしい」(2012年7月27日、「朝まで生テレビ」での発言)で有名な自民党の西田昌司さんも熱心に勧めるMMTです。山本太郎氏と西田昌司氏は、分配政策は正反対。原発政策も正反対。外交安全保障政策もおそらく正反対。だけどMMTでは一致する。
不思議ですが、MMTならバブル期待で一部の富裕層は動く。彼らは金儲け以外、関心ないんでしょうかね。自民党支持者の全てがこんな富裕層ではなく、貧乏クジ引いてるのに気づかないネトウヨやヘイト馬鹿もゴマンと含まれているのはよく知られていることですが、富裕層の一部は、かぶる皮が変わってもいいんですね。儲かりさえすれば。
まだ、書けない、言えないこともあるんです。知ったこと、知っていること、何でも書けるわけではないので。特に市場に関わる話は、さっきも書いたように、インサイダーとアヤがつけられかねないので。
政府はデフォルトを選ばないと思いますよ。その代わりインフレを選ぶ。国民から借りた金の返済、つまり国債の償還も行う。ただし、インフレで減価させた上、大増税で国民から巻き上げた金で返す。国民から金を巻き上げて国民に返したから、ほら、国債破綻しなかっただろ、と胸を張る。
これは実際に、終戦直後、日本政府がやったことです。新円切り替えと言って、預金封鎖して、その間に国民が財産をどれだけ持っているか把握して、一挙に最高税率95%もの財産税をかけた。富裕層も含めて国民は戦争遂行で疲弊していたのにすっからかん。
そうした強行措置を可能にしたのが緊急勅令と呼ばれる国家緊急権。戒厳令も国家緊急権の発動の一つ。あまりにも危険ということで、現行憲法からは削除された。それを復活させ、万能の権力を内閣に持たせようというのが自民党の改憲4項目の一つ緊急事態条項。これは戦前の国家緊急権よりひどい。
普通に考えて、まともな思考力と理性や知性があれば、こんなものは導入しようとしない。それをやろうとする自民党と政府が、いかに傀儡政府か、ということ。限定され制約された国家緊急権は、国家主権の強化につながるのが普通だが、日本は歴然たる属国。属国のファシズムとは捨て駒のファシズム。
なので、愚かなネトウヨやヘイト馬鹿や安倍信者らは、改憲と聞くと、「人口急増下の帝国の夢、再び」と夢想するが、待っているのは「人口急減下の属国の悪夢」。前者も後者も過剰人口の解消が課題に。前者の過剰人口とは若年人口。だから侵略と植民に向かった。後者の過剰人口は老年人口。
後者の場合、植民地を拡大する理由はなく、逆に若い生産年齢人口を受け入れなければならない。それをローテーションで回せる使い捨て労働力として扱うと途方もない摩擦が起こる。移民を移民として、その人権や社会保障を受ける権利を守って受け入れなければならないのに、そんな準備は与党政府に見当たらない。
外国人の人権を守らず、安いガストアルバイターとして使い捨てようとすると、結局、移民でも子供を産み育てられない。日本人の出生率も上がらない。合計特殊出生率が2.07にまで上がらない限り、定常人口は維持できず、少子高齢化人口急減地獄は延々と続く。
団塊の世代が退出したら、あるいは団塊ジュニアがみんな鬼籍に入ったら、そこで、人口動態のアンバランスは解消すると根拠なく信じ込んでいる人が多いが、そんなことは全くない。出生率が回復して、何十年間か持続しない限り、人口急減フリーフォールは止まらない。ずっとだ。日本人が消滅するまでだ。
だから、子供を産み育てられる社会を作り、出生率を回復することは、今すぐ全力で取り組むべき急務であり、そして将来にわたって半永久的に手を抜かずに、その仕組みを維持することが必要なのだ。移民として生産年齢人口の時期にこの国に来た外国人にも、同じ待遇を与えることも大事なこと。
ルーツがどこであれ差別なく日本国民としてリプロダクションが可能で年金と介護の保障された老後を送れる。そういう制度を構築し、レイシズムと絶え間なく戦い続けないと、日本の人口動態は変わらず、破局は避けられない。
話を戻すと、この人口危機を冷静に乗り越えていかないと、老年人口の過剰問題が、年金問題、国債乱発による財政問題とも絡み、インフレで「解決」してしまえ、という誘惑を招く。ハイパーインフレが起こると、年金の上昇率は物価上昇率に間に合わない。医療保険も介護保険制度も破綻する。
ハイパーインフレが起これば、政府の債務負担は急減する。10倍のインフレならば、債務は実質10分の1となる。単身世帯の老人は食べるものもなく、餓死してしまう。医療保険制度も崩壊するので貧乏人は医者にもかかれず、病気になったら死ぬしかない。平均余命は一気に縮まる。
つまり、ハイパーインフレは、老人に対する不作為に見えるジェノサイド政策なのだ。積み上がった債務の実質的な踏み倒しでもある。額面上は償還しても価値はインフレ分減価してしまっているのだから。
年金財政の問題も解消する。受給年齢前に人々が死んでしまうのだから! 実際、ソ連邦崩壊後、ロシアの男性の平均寿命は、崩壊前は60代後半だったのに、一気に58歳にまで縮んだ。僕はソ連邦崩壊前後の取材を足かけ6年続けていたので、あの崩壊期のハイパーインフレを僕は肌で知っている。それは凄絶なものだった。
ハイパーインフレ下のロシアでは、外貨をもつか、暴力で奪うか、身体を売るか、何も売れない高齢者は死ぬしかなかった。それでも当時のロシアと今の日本では基礎的な条件が違う。ロシアは世界一の資源大国であり、エネルギー自給ができる。国土の面積は世界一であり、耕作面積も広い。国民は食料を自給できた。
広々とした農村で自給できる、というのは当たり前だが、食料が正規ルートに流れず、闇市場に回って暴騰しても、モスクワのような都市住民も飢餓にまで陥らずにすんだのは、ダーチャの存在が大きい。
ロシアは社会主義国であり、画一的で無味乾燥な集合住宅に住まわされるのだが、郊外にダーチャという別荘を誰でももつことができた。粗末な小屋だが、菜園がついていて、みんなジャガイモを植えて収穫する。都市住宅の地下の倉庫はそんな個々のダーチャで採れたジャガイモの山だった。
日本は農村が疲弊している。ここにTPPだの、日米FTAだの、自由貿易協定を結んで関税を取っ払い、外国、特に米国、オーストラリアなどの耕作面積のだだっ広い国の安価な農作物を受け入れたら、自給率は一時期の農水省の試算通り、10数%にまで下がる。農家、農業は、畜産も含めて壊滅である。
それでも、安定的に安価に食料が入るならばいい。だが、円安が続けば輸入物価も跳ね上がり続ける。また、米国に、安全保障だけでなく、食糧もエネルギー(シェールガス・オイル)までも依存したら、日本側に価格決定権は全くなくなる。いつまでも気前よく安く売ってくれる保証はない。
安全保障上の主権、エネルギー資源と食糧自給、ここがロシアと日本との決定的な違いである。ハイパーインフレが起きても、ロシアはエネルギー自給できて、ジャガイモは自分で耕作できた。しかし日本はどうか。超高齢化し、農村が壊滅し、輸入食料に全面依存した状況下で、国債が暴落し、円も暴落したら、どうなるか。
いうまでもなく、飢餓が襲う。一部の人は食べられても、高い輸入食料を手に入れられない人が出てくる。動ける若者はどうにでもなるかもしれないが、人口の半分近くが高齢者という時代が目前に迫っている。年寄りに自給自足しろというのは無茶である。だから、ハイパーインフレは絶対に起こしてはいけないのだ。人口問題を、ハイパーインフレによる過剰老年人口の精算というところで「解決」しようとしてはならない。そんな民族は確実に滅ぶ。
長くなりすぎて、なんでこんな連投を始めてしまったのかと軽く後悔しているが、ここに戦争か平和か、という問題が加わる。日本の残り少なくなった国力を、米国のための戦争に使われたら、それだけで庶民には金が回らない。まして極東で隣国と戦争となったら、日本は即、列島全部が戦場である。
中国が攻めてくるというプロパガンダを撒き散らすネトウヨの脳内では、中国軍と自衛隊との戦いは、南西諸島のみで行われることになっている。もう何度も指摘していることだが、ミサイル戦の時代である。そのミサイルの射程は日本列島全土に及ぶ。何で戦闘が南西諸島だけの地域戦で終わるのか。
なぜ自衛隊に島嶼奪回作戦の演習を米軍の指導下でやらせ、水陸両用車を買わせるのか。それが本当に必要な場面がくると本気で思っているのか。いざ開戦となれば、首都や大都市圏にミサイルが打ち込まれている。そんな時に中国軍が無人島を占領するのか。それを自衛隊は奪回している暇があるのか。考えてみればわかる話だ。
ただでさえ、深く考えないのに、戦時となれば、当然、緊急事態条項を発令して、考えることを許さなくなる。人々も適応する。主権がどこにあるのか、誰のため、何のために戦争するのか、もう考えない。すでにその徴候は現れている。属国の破滅的独裁の準備は進んでいる。改憲はその不可逆的な一歩だ。
だから、声を大にしていう。緊急事態条項が含まれている自民党の改憲案を、発議させてはならない。この2019年夏の参院選で、自民・公明・維新の改憲勢力の議席を、発議可能なラインである3分の2の議席に満たないように減らすことだ。
まず、それをなしとげてから、落ち着いて日本が、日本人がサバイバルしてゆく道筋を考えよう。人口動態はこのままでいいのか? ノーだ! 際限のない国債の増発は危険ではないのか? イエスだ! そうした議論を始めよう。まず、自民党の改憲案を退け、緊急事態条項を葬り去ってから。