エネルギー戦略の構成素案をもとに活発に議論~第21回大阪府市エネルギー戦略会議 2012.12.14

記事公開日:2012.12.14取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・久保元)

 2012年12月14日(金)14時、大阪市都島区の大阪市公館において、大阪府市エネルギー戦略会議の第21回会合が開かれた。この会議は、電力消費地である大阪府と大阪市が、原発依存を脱却するためのエネルギー戦略を策定する場として設置しているもの。

■全編動画
・1/2 会議

・2/2 会議後の記者会見

  • 出席者
    植田委員、大島委員(※)、河合委員、古賀委員、佐藤委員、長尾委員、加藤大阪府環境農林水産部理事、玉井大阪市環境局長
    ※大島委員はインターネットを利用して会議に参加
  • 議題
    1. 大阪府市エネルギー戦略の策定に向けて
    2. その他
  • 日時 2012年12月14日(金)14:00~
  • 場所 大阪市公館(大阪府大阪市)

 この日の会合では、これまでの会合での議論をベースに作成した、「エネルギー戦略の構成素案」をもとに議論を行った。素案は全8章からなり、(1)エネルギー戦略策定の経緯(2)原子力中心の日本のエネルギー政策について(3)地方自治体がエネルギー戦略を策定する意義(4)今夏の電力需給状況の実態と、脱原発のメカニズム論(5)安全確保などの諸問題や電力システム改革、再生可能エネルギー普及等(6)エネルギー政策移行期における電気料金の変化(7)原発依存からの脱却、供給者目線から需要家・消費者目線への変革、国から地方への権限委譲等(8)新しいエネルギー社会への移行スケジュール――で構成した。

 この素案について、冒頭に事務局が、「核燃料サイクルやプルトニウム処理が、外交や安全保障に関わってくる点への対処や、脱原発に伴う原子力技術継承の問題についてもエネルギー戦略で示してほしい」とする橋下徹大阪市長の意見を紹介した。

 続いて、委員らが活発に議論を行った。このうち、長尾年恭委員(東海大学地震予知研究センター長)は、「原発周辺や直下に存在する活断層の問題や、地震災害に対する見解を盛り込むべき」とする意見を述べたほか、古賀茂明副会長(元経済産業省官僚)は、「核と外交」の問題に関連し、「原発を経済合理性のある形で安全に動かすのは不可能。にもかかわらず、アメリカとの外交関係があるから原発を動かすという選択はありえない」との見解を示した。また、古賀氏は、「(廃炉によって)電力会社の経営が破綻するということを前提とした仕組みづくりが急務である」との意見も述べた。

 大島堅一委員(立命館大学教授)は、廃炉の問題に関して、一般的に、「脱原発によって原子力技術者がいなくなり、廃炉のための人材が不足する」とされている点に疑問を呈した。これについて大島委員は、ドイツの廃炉事業者にヒアリングした結果として、「原発を運転する際に必要な原子力工学は、廃炉の際には必要ないので、これを維持する必要はない。廃炉に必要なのは、放射線防護や医学、化学の知識である」との見解を述べた。

 佐藤暁委員(原子力コンサルタント、元GE技術者)は、使用済み核燃料をどうするのかという問題について言及し、ネバダ州で永久貯蔵することが決まっていたアメリカにおいて、その実施が頓挫していることを示した上で、「中間貯蔵を、あたかも最終処理の方法のようにしていくことは認められていない。それは日本にも当てはまる」と述べた。

 このほかにもテロ対策や安全対策、電力料金など、さまざまな観点から活発な意見交換を行った。最後に、事務局がこれらの意見を集約し、次回以降の会合でさらに内容を精査していく方向性を確認し、会合が終了した。

 なお、会合の終了後、会議メンバーが緊急声明を発表した。この声明は、日本維新の会の代表代行である橋下市長が、12月16日に投開票が行われる衆議院選挙に向けた街頭演説や記者会見などの場で、「エネルギー戦略会議に関して、事実と異なる発言を続けている」として苦言を呈する内容となっている。


◆緊急声明(全文)

大阪府市エネルギー戦略会議の活動について

2012年12月14日
エネルギー戦略会議委員一同

日本維新の会の橋下徹代表代行及び松井一郎幹事長が選挙活動の一環として、大阪府市エネルギー戦略会議及び同会議の委員の個人名を挙げて発言を続けておられますが、その発言には理解に苦しむ部分が多く、当会議の活動の趣旨に対して多くの国民の皆様の誤解を招く恐れがあると懸念しております。このため、当会議委員の総意として、以下の点を明らかにさせていただきます。

1.当会議は、大阪府市統合本部の下に置かれた会議であり、大阪府市という地方公共団体のために活動しています。決して、日本維新の会のために活動しているわけではありません。

2.原発に関する委員の考えは様々ですが、原発ゼロを目指すべきであり、それは可能であるという点について大きな異論はありません。

3.飯田哲也元委員が当会議に提出した原発ゼロからゼロへのシナリオについては、これから議論する予定であり、現時点で多くがこれに反対しているという事実はありません。

4.橋下市長は、当会議で原発ゼロのシミュレーションを出していないことを脱原発を公約にしなかった理由の一つとして挙げておられます。しかし、当会議が工程表を完成していない最大の原因は、大阪府市の法令上の不手際により、9月以降の活動が停止されていたことにあります。

5.当会議としては、今後とも地方公共団体の審議会としての立場から活動を続ける所存です。

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