燃料税増税への反対をきっかけに、フランスで2018年11月17日以来、4週にわたり週末ごとに大規模なデモが続いている。デモの参加者の中心は、地方に住む労働者階級で、フランスのドライバーが車の故障の際、安全のために着用を義務づけられている黄色い蛍光素材のベストを着て抗議を行うことから、「黄色いベスト運動」と呼ばれている。
デモでは一部の参加者が暴徒化し、これまでに4500人以上が拘束されている。また、業界団体によれば、デモの影響で小売業界は約11億ドル(約1200億円)の損失をこうむったという。
こうした事態の沈静化のため、マクロン大統領は12月10日(日本時間11日未明)、国民に向けてテレビで演説を行った。
▲エマニュエル・マクロン仏大統領(Wikipediaより)
マクロン大統領は演説で、「暴力的なデモは容認できない」と強く非難する一方、人々の要求を「正当」だと認め、来年1月から最低賃金を月額100ユーロ(約1万3000円)引き上げることや、残業手当に課税しないこと、月額2000ユーロ(約26万円)以下の年金生活者への増税の中止を約束した
しかし、デモ参加者らが要求している富裕税の復活には「応じない」とし、かわりに脱税を厳しく取り締まることで国民の怒りをかわそうとしている。
フランスでは低所得者層を中心に急進左派、極右ともにマクロン大統領の政治姿勢を富裕層や大企業優遇として非難しており、「マクロン大統領退陣」を求める声が広がる中、混乱は今後も続くとみられている。
パリ在住のIWJ会員村岡和美氏の協力を得て、IWJ では大統領の演説の重要な政策発表を中心に全体の約3分の2の仮訳を緊急に行った。以下にこれを掲載する。
デモは「正当な要求」と認めつつ、無秩序な破壊行為は「許しがたい暴力」と非難
フランスの皆さん、私たちは今、私たちの国と私たちの将来のためにこうして集まっています。
この数週間、フランス本土と海外領土で起きた出来事は、「正当な要求」と「許しがたい暴力」とが連鎖し、国に深い混乱を起こしました。まず、皆さんに言いたいのは、こうした暴力はどんな寛容の恩恵にも預かるものではないということです。
▲黄色いベスト運動 東フランス・ヴズールでのデモ(Wikipediaより)
私たちは、真摯な怒りを利用して非道なことをするオポチュニスト(ご都合主義者)のやり口のすべてを見ました。私たちは、無秩序とアナーキーな状態をもたらして共和国を揺るがすことが唯一の目的である、無責任な戦略を見ました。
どんな怒りも、警官や軍警官を襲い、商店や公共施設を破壊するような行為を正当化できません。私たちの自由は、一人ひとりが自分の意見を述べ、意見が違っても恐れることなくそれに同意しないでいられる点に存在します。
▲フランスの軍警察・国家憲兵隊(Wikipediaより)
暴力が荒れ狂うと、自由は終わります。従って、今後は静謐と共和国の秩序によって統治されなければなりません。市民生活の平和に不安がある時、維持可能なものは何も建設できないので、私たちは秩序回復に全力を注ぎます。
この点において、私は政府に最も厳しい指示を与えました。
多くの国民が持つ、さまざまな怒り、それは理解している
しかしまず、怒りがあること、多くのフランス人が共有できる怒りがあることを、私は忘れていません。しかしその怒りを、今非難したような受け入れ難い振る舞いに帰するようなことはできません。
まず、税金への怒りがあります。首相がすでに答えたように、来年予定されていた増税をすべて撤回、廃止します。
大統領演説の訳どうもありがとうございます。
意思表示がいかに重要か改めて感じました。
日本では、お上に盾突く事を御法度とする風潮があります。
日本国民は羊のままでいるのか・・・
さすがIWJ、仕事が早い。
富裕税復活はフランスの国力を弱体化させる!? 最低賃金の増額や低年金生活者への増税中止の約束で仏国民の怒りは収まるのか!? IWJはマクロン大統領が演説で発表した重要政策を独自に仮訳! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/437471 … @iwakamiyasumiさんから
https://twitter.com/55kurosuke/status/1072615016719884288