放送法撤廃をめぐり読売を含むマスコミと全面対立した安倍総理!4条撤廃は断念か!?「具体的な検討を行ったことはない」と閣議決定も油断は禁物!「検討」はおこなっていないが「議論」は続行中!? 2018.4.5

記事公開日:2018.4.5 テキスト
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(文:IWJ編集部)

 安倍総理に牙をむいたマスコミに忖度し、放送法4条撤廃を断念か――

 政府は4月3日、放送番組の政治的公平などを規定する放送法第4条の撤廃について「政府として具体的な検討を行ったことはない」との答弁書を閣議決定した。

 立憲民主党の初鹿明博衆院議員の質問主意書に対する回答だが、「具体的な検討を行ったことはない」と政府が言わざるを得なかった背景には、安倍総理が検討をすすめる放送事業見直しに対し、大手マスコミが一斉に反対の論陣を張ってきた経緯がある。渡邉恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役にいたっては「首相がその気なら全面対決だ」と発言し、親安倍から反安倍に路線変更するかと噂されるほどの剣幕だった。

 3月17日の読売新聞朝刊の政治面では、放送法をめぐる政府の動きに釘を刺すように、「民放解体を狙うだけでなく、首相を応援してくれる番組を期待しているのでは。政権のおごりだ」と話す放送業界の見解を紹介。 

 日本民間放送連盟も急遽、「放送の価値向上に関する検討会(仮)」の設置を決定し、井上弘会長(TBSテレビ名誉会長)は会見で、「単なる資本の論理、産業論で放送業を切り分けてほしくない」と安倍総理の放送制度改革に批判的な意見を寄せた。

▲野田聖子総務相(IWJ撮影、2017年8月4日)

 また、放送法を所管する総務省の野田聖子大臣も4条の社会的役割を重要視し、3月22日の衆院総務委員会では「撤廃した場合には公序良俗を害するような番組や事実にもとづかない報道が増加するなどの可能性が考えられる」と答弁し、一貫して慎重な姿勢を見せてきた。

 立憲民主党の枝野幸男代表も先月30日の会見で、「ますます、中立・公正な放送が求められている時代に、放送法をなくすのが論外。議論にも値しない」とし、「本当にやろうとしてくるのであれば、安保法制以上の大対決法案にしなければならない、それくらい深刻な話だ」と語気を強める場面もあった。

規制改革推進会議「投資等ワーキング・グループ」では放送法規制緩和による効果や影響が議論されてきた!

 親安倍の読売にまで背かれ、四面楚歌の安倍総理は、もはや放送法4条撤廃を声高に主張することはできない状況だ。しかし、「撤廃について政府として具体的な検討を行ったことはない」との答弁をそのまま鵜呑みにすることはできない。そもそも「具体的検討をしていない」は事実ではなく、放送法4条の要否についてはこれまで、専門家を交え、議論が進められてきたことは否定できない。

 3月8日、放送制度改革を議論する規制改革推進会議の「投資等ワーキング・グループ」が開いた会議では、AbemaTVに出資している株式会社サイバーエージェント取締役からヒアリングし、「放送法が規制緩和されることによる効果、影響」について座長や委員らが意見交換をしている。また、22日にも同ワーキング・グループで、ヒアリングに呼ばれた次世代メディア研究所代表の鈴木祐司氏が「放送法第4条の撤廃などは、私は個人的に疑問に思っている」と発言していることからも分かるように、放送法の規制撤廃に関する「議論」は着々と進んでいるのである。

 「具体的な検討を行ったことはない」と閣議決定したとはいえ、今後、具体的な検討を行なう可能性は大いにあるのだ。油断は禁物である。

放送法の要否を議論するワーキング・グループ座長は『ニュース女子』コメンテーターの原英史氏!BPO委員長代行・是枝裕和監督が4条撤廃の動きを警戒

▲是枝裕和監督(IWJ撮影、2016年3月1日)

 放送制度改革は、昨年2月から「投資等ワーキング・グループ」で議題にあがったというが、座長を務めているのは、株式会社・政策工房代表の原英史氏。原氏は、BPOが2017年1月2日の放送内容をめぐり「重大な放送倫理違反」だと指摘した『ニュース女子』に出演しているコメンテーターの一人である。

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