佐藤正久外務副大臣が明かした自衛隊に残る「日本軍体質」!! 原発への散水ヘリ搭乗に全員が志願!? 「『希望者は手を挙げろ』というと全員が手を挙げた」――第31回 戦歿者追悼中央国民集会 2017.8.15

記事公開日:2017.8.16取材地: テキスト動画
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(取材・文:谷口直哉 記事構成:岩上安身)

※8月27日テキスト一部修正しました。

 例年、強い日差しが降り注ぎ、夏らしい晴天になることが多い「敗戦の日」。戦後72年目を迎える今年2017年8月15日は、朝から小雨が続き、昼過ぎからは大粒の雨が夕方まで降り続いた。

 この日、東京・靖国神社にて、「英霊にこたえる会」と「日本会議」共催の、第31回 戦歿者追悼中央国民集会が行われた。

 靖国神社外苑の参道に立てられた特設テントは、あいにくの雨模様にも関わらず、多くの参加者で埋め尽くされた。

▲外苑の参道に立てられた特設テントは雨模様にも関わらず満員になった

 集会は参加者全員が起立しての「君が代斉唱」からスタート。その後、敗戦を告げた昭和天皇の「玉音放送」が会場に流されると、まるで、昭和20年(1945年)8月15日にタイムスリップしたかのように、参加者は直立不動でうつむいたまま、昭和天皇の声に聞き入っていた。

■ハイライト

  • 登壇者 田久保忠衛氏(日本会議会長)、寺島泰三氏(英霊にこたえる会会長)、佐藤正久議員、井川一久氏(元朝日新聞編集委員)、高清水有子氏(皇室評論家)

「中国の増大」と「アメリカの混乱」の時代~日本は生き延びるために憲法改正が必要!? ――日本会議・田久保忠衛会長が持論を展開

 主催者代表として挨拶に立った日本会議の田久保忠衛会長は、現在の国際情勢を、「中国の増大」と「アメリカの混乱」の時代と表現し、この現状を生き延びていくために、日本は好むと好まざるとに関わらず、憲法改正をすることになるであろうと持論を述べた。

 過去の戦争の日本の責任、敗戦に至った日本の失敗、侵略戦争を行った日本の反省については、何も言及がなかった。先の戦争に関してだけでなく、20年以上にわたる長期不況を招いている現在の「経済戦争」における惨憺たる「敗北」についても、何も語られなかった。彼の話には、過去も現在も「現実」がまったく見すえられていなかった。

 彼らが改正しようとしてやっきになっている戦後の日本国憲法のもとにおいて、日本と日本国民は、近代以来、いや有史以来、まったく経験したことのない未曾有の繁栄と平和と幸福を享受できたというのに、そうした現実もまた、まったく念頭にないかのようだった。

 日本会議に加わっている人間たちは、まったく空想と妄想の中で生きているのだ、と改めて実感させられた。

▲憲法改正を訴える日本会議・田久保忠衛会長

 現在の日本の「経済戦争」については、「東芝解体 電機メーカーが消える日」著者でジャーナリストの大西康之氏へ岩上安身が2度にわたって行なったインタビューを、ぜひ重ね合わせてご視聴、あるいはお読みいただきたい。

 このインタビューで大西氏は、日本メーカーが海外市場で次々と失敗を繰り返す理由を「意思決定のプロセスに合理性がない。本当に勝てるのか?と検証しない。そして失敗から学ばない」と断じた。

 『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』という、日本軍の敗北を組織論から説いた名著がある(戸部良一他著・中公文庫)。大西氏が東芝の敗戦記を書くにあたって、念頭に置いていたという名著である。

 「失敗の本質」から学ばない者は、同じ失敗を延々と繰り返し続ける。それは日本という国の命運にもつながる。電機メーカーの株主や社員、その家族だけの悲劇ではすまない。系列の下請けや融資してきた銀行、あらゆる機関、人々に影響が出る。東芝を筆頭とする電機メーカーの「大敗戦」は、誰にとっても決して他人事ではないのだ。

憲兵からナチス・ドイツまで!軍事オタクの「コスプレ会場」と化す2017年「敗戦の日」の靖国

 正午になると、戦没者への黙祷が捧げられた。

 特設テントの外でも、多くの参拝者が本殿に向かって黙祷を捧げていたが、その中には、旧日本兵の軍服を着て「最敬礼」をするグループなども見られた。

▲旧日本軍の軍服姿で黙祷を捧げるグループ。一体何のための「コスプレ」なのか。

 このグループのひとりで「憲兵」の腕章を付け、軍刀を腰から下げた男性に話を聞くと、「『兵隊が足りないから来て欲しい』と誘われた」と話してくれた。コスプレをした自分たちの事を「兵隊」と呼んでいるらしい。刀をもっているところを写真に撮らせて欲しいと頼むと、模造刀を抜き「精悍な憲兵」をカメラの前で演じてみせた。

▲IWJのカメラに模造刀を抜いて見せる「憲兵」のコスプレをした男性

 こうした、日本兵のコスプレをして、靖国神社に集まる人たちは珍しくない。今では、8月15日に多くの「コスプレ愛好家」が靖国神社に集まるのは、恒例行事のようになっている。中にはナチス・ドイツの軍服を身に付けている人までいて、追悼とは程遠い「コスプレ大会」の様相を一部では呈しているのだが、そうした「似非兵士」の姿を写真に収める人も多くいる。

旧日本軍の軍服コスプレを娯楽として「消費」する行為は、非業の死を強いられた兵士たちへの侮辱に他ならない!

 憲兵といえば、軍を取り締まる軍事警察である。しかし、旧日本軍においては、軍事警察だけでなく、司法警察権も握り、治安維持法を悪名高き特高(特別高等警察)とともに、一般国民に適用する任務を帯び、国民の思想弾圧にも力を尽くし、恐れられた。

 1923年(大正12年)の関東大震災直後に、甘粕正彦憲兵大尉がアナーキストの大杉栄と、伊藤野枝、その6歳の甥まで拘束し、裁判も抜きに惨殺したという事件を起こしたことは、あまりにも有名である。憲兵にいわれのない嫌疑をかけられ、凄惨な拷問によって命を落とした人は他にも数多くいたと言われている。

 要するに「憲兵」は「特高」と並んで、日本軍の非支配地域の住民のみならず、日本国民からも怨嗟の目で見られていた、いわば「残虐な日本軍」の象徴のような存在である。

 一体何のためにこうした格好で、わざわざ「敗戦の日」に靖国神社に集まるのか、理解に苦しむ。

 現行の日本国憲法においては、憲兵や特高による残酷な拷問によって多くの人々が命を落とした、その痛切な反省に立って、36条で「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と定められている。ところが、自民党の改憲草案では、この36条の「絶対に」という文言を削ってしまう。時には拷問も行う、と言わんばかりだ。

 戦争で大切な人を亡くした遺族が、亡き人の魂に会いに来る8月15日の靖国神社。その場で日本兵や憲兵のコスプレを楽しむことは許されるのだろうか。日本兵の軍服を「格好いいコスプレの衣装」として楽しむことは、惨憺たる大敗北を喫して、日本を滅亡の淵まで追いやった旧日本軍を美化し、過去の戦争を正当化することになるのではないだろうか。

 何より、現代の平和を享受する人間が、日本兵の軍服を趣味や娯楽の道具として「消費」することは、靖国に祀られた兵士たちに対して失礼ではないか。

 日本兵のコスプレ姿で、喜々として「敗戦の日」に靖国神社に集まることは、将官の無謀な作戦指導により、虫けらのように命を落としていった兵士たち、武器や食料の補給も受けられないまま、熱帯のジャングルで、餓死や病死を余儀なくされた兵士たち、大切な人を国に残したまま非業の死を強いられた、多くの兵士たちの魂への侮辱に他ならない。

「『希望者は手をあげろ』というと全員が手をあげた」!――福島原発事故で「志願」の強要!? 特攻隊を彷彿させる佐藤正久外務副大臣の「自己犠牲賛美」!

 自民党の佐藤正久外務副大臣が、予定より遅れて到着すると、会場からは大きな拍手がおこった。

▲元陸上自衛隊員でもある佐藤正久外務副大臣

 佐藤外務副大臣は、自身の息子が自衛官になったきっかけが、2011年3月11日の東京電力福島第一原発事故における自衛隊の活動だったことから、次のようなエピソードを語った。

 爆発して放射能が出ている原子炉の上空を飛行し、海水を投下した陸上自衛隊ヘリコプター部隊の隊長は、「隊員にもいろんな事情がある。これから子どもが生まれる人間、結婚する人間もいる」と誰を搭乗員に選ぶか悩んだ上で、隊員たちを全員集めて「希望者は手を挙げろ」と声をかけた。すると、全員が手を挙げたという。

 佐藤外務副大臣は最後に「これが自衛隊なんです」と、自衛隊の自己犠牲の精神を誇らしげに語った。

 まるで、第二次世界大戦中の特攻隊の賛美を聞いているようだ。本当に、自衛隊のヘリの搭乗員たちは、自分の意志だけで手を挙げたのだろうか?

 自衛官の全員が必ずしもこうした考えを共有しているわけではないだろう。そもそもあの日、あの一連の作業で、自衛官達はどれだけ被爆したのだろうか?自衛官も生身の人間であり、一人ひとり人権があるのだ。まず隊員の命と健康に留意する姿勢を、なぜ指導者が示さないのか?

 佐藤議員の発言は、自己犠牲を美化しようとする安倍政権の考え方を反映しているように思えてならない。安倍政権は、「自衛隊を憲法に明記する」と改憲に熱心だが、改憲の前に、肝心要の自衛隊員の人権を保証する義務を守る必要があるはずだ。そうした角度からの議論が、この国ではあまりに不足している。

 太平洋戦争末期、自爆攻撃への志願を「強要」され、死んでいった多くの特攻隊員の魂は、この佐藤外務副大臣の話をどのような気持ちで聞いていたのか、問いかけてみたくなった。

IWJ以外にも特攻隊に関しては、多くのコンテンツが存在するが、以下にあげる作品は、年端もいかない若者が「志願」を強制された、特攻隊の非人間性を浮き彫りにした優れた作品なので、ぜひご覧いただきたい。

 IWJでは自衛隊員の人権という角度から考える取材を、これまでずっと続けてきた。これからはさらに声を大きく上げる必要が出てくるだろう。

(…会員ページにつづく)

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    戦没者の死を政治利用し、過去の過ちから何も学ぼうとしない。日本の未来に暗い影を落とそうとしている人たちの考えがよく分かります。どうぞお読みください。――第31回 戦歿者追悼中央国民集会 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/395439 … @iwakamiyasumiさんから
    https://twitter.com/55kurosuke/status/901923980478619649

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