2012年11月9日(金)、東京都千代田区の衆議院第一議員会館で、「人にやさしい都政をつくる会 記者会見」が行われた。
2012年11月9日(金)、東京都千代田区の衆議院第一議員会館で、「人にやさしい都政をつくる会 記者会見」が行われた。
■全編動画
■内容 宇都宮健児氏会見
都知事選(29日告示、12月16日投開票)に立候補した宇都宮健児氏(前日本弁護士連合会長 65歳)は「『人にやさしい東京』をめざして都政で実現をめざす4つの柱」」として、記者会見で、以下の4点を発表した。
(1)誰もが人らしく、自分らしくいきられるまち、東京をつくります。
(2)原発のない社会へー東京から脱原発を進めます。
(3)子どもたちのための教育を再建します。
(4)憲法のいきる東京をめざします。
自身のこれまでの主な活動として、長年のクレジット・サラ金問題への取り組み、差し押さえ問題、貧困問題、2010年4月日弁連会長就任後の様々な人権保護活動、東日本大震災、原発事故災害の被災者支援活動にへの取り組みを紹介し、政策については、以下の点を掲げた。
都知事としてすすめる政策について、まず言及したのは「脱原発を掲げ、東京から脱原発政策をすすめる」ことである。
「原発事故で多くの人が被災し、福島県では16万人が今も避難し、そのうち6万人が県外避難している。これらの被害者を救うために、昨年9月に『原子力損害賠償紛争解決センター』を設置させた。避難する、しないに関わらず、適切な支援を国が行うための『原発事故被害者支援被害者援護特別立法』を提案し、これが本年6月の『原発事故被害者支援被害者援護特別立法』につながっている」と今までの活動を紹介し、「東京は福島原発からの電力の最大の供給を受ける最大の現力消費地であり、都は東京電力の最大の株主である。原発事故被害者支援は東京都と都民にとっての責任であると考える。知事になった場合は全力で支援したい」と被害者支援に力を入れる事を表明した。
さらに原子力政策の転換の必要性に言及。特に、高レベル放射性廃棄物処分問題 については「10万年管理しなければならない高レベル放射線廃棄物処分について、責任ある議論のないまま原発を作っている。次代に大変なツケを残す問題を国会で真正面から議論すべきだ」とした。
また「原発は被曝を伴う下請け労働者の非人間的労働に支えられている。この点からも現在の原発は認められない。取り返しのつかない甚大な被害を発生させる原発事故が、もう一度おきれば、日本社会が崩壊していく。東京都として脱原発政策を進め、国や他の地方自治体にも働きかけていく必要がある」と述べた。
脱原発の思いを強くしたエピソードとして、夫の死に目に会えず、遺影すら飾れずに避難先に暮らす老婦人のエピソードを紹介し「このような惨いことを強いるのが原発事故だと知って、今回の事故と、その後の東京電力や政府の対応に憤りを感じずにはいられない。都が脱原発政策を進める上では、被害者と向き合い、被害者を支援しながら、脱原発政策を進めていかなくてはならないと考えている」と脱原発と被害者支援への思いを語った。
次に、「人にやさしい都政」への転換として、宇都宮氏は貧困問題に言及した。
「日本社会では貧困の格差が広がり、昨年の政府調査では貧困率が過去最悪となっている。全労働者の3人に1人が非正規労働者、年収200万未満の労働者が1000万人を超える。都を含め6都道府県の最低賃金が生活保護水準以下。300万人失業者の約2割しか失業保険を受給していない。年金のみで生活できない高齢者が急増。20%以上の世帯が健康保険を滞納し、医療難民が激増している。貯蓄ゼロ世帯も1980年代の全世帯の5%から28.6%になり約3割と急増。自殺者が14年間連続で3万人を超えている」と現状の数字をあげて、「私は昭和21年愛媛の漁村に生まれた。戦争直後はみな貧しかったが、地域と家族のつながりがあったが、今の貧困は経済的貧しさの上に、さらに社会的人間的に貧困者が孤立する‘’関係の貧困‘’があり、生きづらい社会になっている」と現代社会の貧困問題の特徴について指摘した。
貧困問題について「孤立死や餓死が東京でも起きている。経済的余裕のない世帯の修学援助児童が石原都政の間に1.5倍に急増。都内の受給率は全国で5番目に多い。財政的に豊かで貧困に歯止めをかける事が可能な東京都が、実はいっそうの貧困格差を拡大させている。石原都政は弱者切り捨ての冷たい都政だった」と石原都政を批判し、今後の問題解決のためには「一人一人が孤立しない思いやり、助け合い、支えあいのある社会を作っていかなければいけない。貧困格差の拡大に歯止めをかけて福祉を充実させ、『人にやさしい都政、人にやさしい東京をつくろう』」と抱負を述べた。
教育については、君が代斉唱時の起立斉唱の問題は思想・良心の自由の問題であり、処分は問題と批判。大阪府条例案も批判しているとし、「日の丸君が代問題は、教師に対する管理統制問題だと受け止められているが、一番被害を受けるのは子どもたちだと思う」「教育の目的は、子どもたちが自分の頭で考え、意見の違う人との議論を重ねて合意を達成するという民主主義社会の担い手を作っていくことだ。教師そのものが管理統制で萎縮してしまって本当の教育ができるだろうか」と教育の本来のあり方に触れ「これまでの石原都政のあり方を大きく変えなければならない。このようなことが子どものいじめ、不登校、自殺問題にも大きく影響している面があると考えている」と教育改革の重要性を訴えた。
尖閣諸島問題は「石原都政はまったく都政と無関係の尖閣諸島購入問題に火をつけ、日中関係を悪化させた。その結果、経済を混乱させ、憲法改定や集団的自衛権行使容認勢力が台頭してきている。この状況に私は大変、危機感を持っている」と現状への懸念を表明。「憲法の基本原理、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義の原理を変容させるような憲法改定には反対し、許さないことを東京都は宣言し、平和で人権を守る首都を目指すべきである。首都東京で、このメッセージを発することは、必ず、アジア諸国との関係改善、友好的関係と交流を発展させる契機となるだろう」とアジア外交改善の意欲を述べた。
憲法については「人間らしい生活を保証する社会を作るためには、憲法9条と憲法25条は車の両輪である」と憲法護持を表明した。
会見の最後には、国内米軍基地問題に触れ「沖縄の普天間基地の辺野古移転には反対する。オスプレイ配備も認めるべきではない。米軍基地のない東京を目指したい」とし「私自身の弁護士経験をふまえ、以上の政策を掲げた。今後、市民グループや都民と練りあげ、良いものにしていきたい」と結んだ。
◎ 次に、宇都宮氏を応援する3氏が以下のようなメッセージを送った。
加毛修氏(東京第一弁護士会元会長)「今、日本は重大な危機に瀕している。政治家らしい政治家がいない。信頼が払拭しているなか、宇都宮さんにぜひ都知事になっていただき、東京を変え、日本を変え、憲法改悪を阻止し、民主主義、平和主義社会を築き上げてほしい。全面的に応援する」
吉岡達也氏(ピースボート共同代表 脱原発世界会議実行委員長)「都知事選は、日本がこれから国際社会でどう見られるかに直結し、日本がまたも原発依存し第2、第3の福島、チェルノブイリをおこす可能性を残すのか、そうではないのかが問われている。国境紛争を平和的に解決するために九条は非常に重要であり、変えた瞬間にこの地域の平和は非常に不安定になると実感する。首都東京で何を掲げた知事が選ばれるかは世界の問題だ」
河合弘之氏(弁護士・脱原発弁護団全国連絡会共同代表)
「都政と原発は関係ないと言うのは大きな間違い。浜岡原発、東海第2原発が事故を起こすと、首都圏は壊滅する恐れが強い。都民の命と健康を守る職責を選ぶ選挙において、脱原発を主張するかどうかは決定的な違いだ。宇都宮氏を私たちは支援するべきであり、その価値がある。宇都宮氏を当選させる投票行動は、国政選挙で脱原発をせまる第一歩としても重要である」
◎ 最後に会場の報道陣との質疑応答が行われた。主な質疑応答は以下の通りである。(映像42分より)
野田総理の30年台原発ゼロ方針について「脱原発については、私自身は早ければ早いほうが良いと考えている。代表世話人をする『脱原発基本法制定全国ネットワーク』では、遅くとも2020年から25年までに原発ゼロにすると提案しているが、年限が重要ではなく、原発ゼロの合意をできる限り早くつくりあげることが重要と思う」
東電株主の半数以上が国である以上、国の方針に従わなければならないのではないか?という質問に対しては「原発許可を与えるのは国であるが、自治体として反原発を訴えることは可能であると考える。国に再稼働反対、早期の脱原発を働きかけたい。都も(東京電力)株を持っており、株主総会で福島や柏崎の廃炉を提案し、国にも理解を求めたい」と回答。
首都圏反原発連合などへの都の公園使用については「集会、結社の自由、表現の自由が保証されない社会は不十分な民主主義社会だと思う。メディア媒体等を持たない市民が自分の意見を発表できる集会やデモは、最大限保証されなければいけない」「今回の都の公園使用不許可はきわめて不当で、知事になって、その権限があれば(デモ団体の公園使用を)許可したい」と述べた。
日米関係で都として国の方針に対抗する場合については「東京都も基地を抱えている。地位協定はきわめて不平等な状況で、米軍基地に逃げ込めば日本の裁判にかけることができない治外法権がある。本来、国が地位協定を廃止すべきだが、沖縄県知事の国への働きかけのように、知事になったら日本全国の自治体に協力を呼びかけて、国に地位協定の廃止を求めていきたいと語った。
また、今後の政党との連携については「4つの基本政策が認められるならば、全政党に支持を求めたい」と語った。
「五輪招致」「築地市場移転」「新銀行東京」は、現場の声を聞き検討するとしたが、場合によってはこれまでの政策の見直しの可能性もあるとした。
脱原発表明の他候補と区別する具体的な政策について問われ「脱原発については、大阪府の橋本氏以上の強い気持ちを持っている。専門家やあらゆる人材を総動員し、脱原発をすすめていく決意だ。脱原発の言葉だけでなく具体的な行動を、市民国民が見極めていくと思う」と述べた。さらに、民主党政権の脱原発表明について、「民主党政権は脱原発というが、閣議決定をせず、大間原発建設、大飯の再稼働、核燃料サイクルを認め、脱原発では矛盾している」と批判し「(最大の電気消費地)東京都としての福島の被害者に対する責任として、福島から避難されている方への住宅提供、交通費補助などの経済的な支援をやるべきだ。国に対して発送電の分離と自然再生エネルギー促進をすすめるよう提案し、(東電の)大株主である都として、福島と柏崎(原発)の廃炉を要求する」と述べた。
尖閣諸島寄付金については「尖閣諸島は国が買い上げたので寄付金は寄付した人に返却するのが筋だと考えている」と述べた。
石原都政のなかで、何が一番の失政だったか?の問いに対しては「貧困と格差の広がりだ」と断言。「都は7000〜8000億の黒字になっているが、福祉教育充実に手当ができなかった。世界の大都市(東京)で貧困格差が広がっている」と貧困問題の現状を指摘し「政治の基本的役割は、社会的経済的弱者を支援することだ。勝者は生きていけるが、社会の中では、必ず障害を抱えたり、行き詰まったりの人が出てくる。そういう人たちに手を差し伸べるのが政治の役割。石原さんは福祉は無駄だと言っているが、とんでもない発想だ」と「人にやさしい都政」への転換を強調した。
TPPについては「問題は情報がなかなか開示されず国民の前に明らかになっていないことだ。TPPをすすめると、どんな影響があるのか正確な認識がもたらされていない。悪影響を与える可能性があるという危惧をもっているが、まず、国、外務省等は情報を国民の前にあきらかにすべきと考えている」とした。