TPP、今国会での成立見送りに共産・畠山氏「先送りのプラス効果は一時的」と警戒解かず、反TPP鮮明な米大統領選で民進・篠原氏「安倍総理よ、消えゆくオバマ大統領に合わせてどうする!?」と喝破! 2016.4.20

記事公開日:2016.4.20取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田充)

特集 TPP問題
※5月24日テキストを追加しました!

 日本政府はこれまで、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で高い成果をあげてきたとアピールしてきた。外国からの安価な農産物の大量流入から農家を守るため、コメや麦などの「重要5品目」を「聖域」と位置づけて、関税は撤廃しないと約束。その5品目の加工品など、細品目数594のうち、交渉で押し負けて関税を撤廃することになったのは170品目。残りの424品目は「関税を残し、国益を守った」と胸を張ってきたのである。

 ところが、実態はそうしたアピールからはほど遠いものだった。重要5品目のすべてにおいて、「交渉の圧力」を受けて譲歩を重ねており、「無傷」な品目はひとつもないと、4月19日、森山裕農水相が国会で認めたのである。

 2016年4月20日、参議院議員会館講堂でTPPに断固反対する国会議員らによる集会が開かれた。前日19日の衆院TPP特別委員会で、野党勢の1人として審議に臨んだ、共産党の畠山和也議員がスピーチし、19日の森山裕農水相の答弁を重大視した。そもそも「聖域」である「重要5品目」は、「交渉の対象外」というのが、国会の決議だった。その国会決議に「違反している」と指摘したのである。

▲日本共産党・畠山和也議員

▲日本共産党・畠山和也議員

 熊本・大分大地震を受け、与野党は今国会におけるTPP承認案と関連法の成立見送りで合意したことについて畠山氏は、「成立が見送られれば、ひとまず安心だが、われわれが目指すのはあくまでもTPPの(丸ごとの)廃止だ」と訴えた。

 集会では、民進党の篠原孝衆院議員も登壇。米大統領選の候補者がそろって「TPP反対」を表明している点をめぐる議論で、TPP承認に前のめりの安倍晋三総理を、「日米関係を短期的展望でしか見ていない。消え去りゆくオバマ大統領に歩調を合わせてどうする」と、強く批判した。

記事目次

■ハイライト

  • 日時 2016年4月20日(水) 17:00~
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)
  • 詳細 STOP TPP!!官邸前アクション
  • 主催 TPP批准阻止アクション実行委員会

野党「TPP交渉=国会決議違反」を焦点に──自由化圧力を跳ねのけられた品目は存在せず!

 4月半ばの衆院TPP特別委員会の審議状況について共産党の畠山和也議員は、自民党が民進党に提出した交渉資料が黒塗りされていたことと、国会では情報公開しないのに、交渉にあたった西川公也委員長が自著の中で交渉経過を書いていることが火種となり、審議が止まっていた点を指摘した。その上で、「金曜日には審議が再開することで与野党は合意していたが、熊本地震(前夜の4月14日木曜日21時過ぎ発生)を受け、震災対応が優先された。そして、16日土曜日未明に本震が起きたため、月曜日の実施も無理と見通していた。が、(各党の国会対策委員長の会談で)与党は『総理の意向なので、ぜひ開いてほしい』と協力を求めてきた」と説明した。

 月内の衆院通過のために審議時間を積み増したい安倍総理が、震災対応への専心を望む野党側を押し切ったことを明らかにしたのである。

 4月18日の審議会で畠山議員は、政府の震災対応について質問した後で、TPP交渉の国会決議との整合性をただした。「農産物の重要5品目は『交渉から除外』の対象にするとしていたが、森山農水大臣は『実際の交渉では除外の区分はない』と答弁した。そこで私は、それでは、いつの時点で『ない』とわかったのか、と詰めた」。

 畠山議員の追及に対し、石原伸晃TPP担当相は、「交渉の経過について話せない」「決まったことがすべてだ」などと曖昧な答弁を繰り返すばかりだった。こうした不実な答弁をふり返りながら、集会の場で、畠山議員は、「最初から『区分なし』を知りながら交渉に臨んだとすれば、国会決議に違反している」と改めて怒りをにじませた。

石原大臣が認めた「『関税撤廃の例外』と『7年後再協議』はセット」

 翌19日の審議会では、民進党の玉木雄一郎議員が「594品目のうち、無傷(=関税撤廃・引き下げの対象外)で残ったものはいくつか」と、さらに追及。石原TPP担当相も森山農水相も、午前の審議ではこれに答えられず、審議はいったん打ち切りに。4時間後に再開された審議の場で、森山農水相は「無傷の品目はない」という事実をついに認めた──。

 畠山議員は、「あの場で森山大臣が(無傷な品目が)『ない』と答弁したことは重大な問題だ」とし、次のように重ねた。

 「19日の審議では、日本のみに課せられた『7年後再協議』を拾い上げ、『この規定をセットにするから、(ひとまず)関税撤廃の例外を認めてほしいという(米国などへの)譲歩だったのではないか』と石原大臣にぶつけたところ、彼は『セットであること』を認める発言をした」

 つまり、国内向けに「聖域は守った」という政治的なアピールをするために、7年後に再協議する約束を「セット」で行なった、ということ。米国は、関税の完全な撤廃をTPP交渉の原理原則として押しつけてくる。その姿勢には何ら変わりはない。

 さらに畠山議員は、「TPPの国会審議は、昨日の分を含めて3回しか行われていないが、すでに(国会決議と整合しないという)重大事実が発覚している。今後は、ISDS条項(の問題性)なども追及していく」と意気込みをみせ、「成立が見送られれば、ひとまず安心だが、われわれが目指すのは、あくまでもTPPの(丸ごとの)廃止だ」と表情を引き締めた。

(…会員ページにつづく)

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