安倍総理は2015年9月30日、アベノミクスの「新3本の矢」を発表した。その中の第2の矢が「夢を紡ぐ子育て支援」で、2017年までに、待機児童ゼロ、希望出生率1.8%を掲げていた。にもかかわらず、子育てを巡る環境は一向に改善されず、2016年2月、「保育園落ちた日本死ね!!!」ブログに端を発した待機児童問題は、母親たちが国会に抗議に行くほど大きなうねりになった。
それを受けて、厚生労働省は3月28日、「待機児童解消に向けて緊急的に対処する施策について」を発表。しかし、そこでは肝心の保育士の給与拡充には一切触れておらず、逆に、定員数を増やすという規制緩和対策が盛り込まれた。緩和が進めば、保育の質の低下は避けられず、保育中の事故の可能性も高まる。低賃金で激務の保育士の仕事はさらに激務となり、資格をもっていても保育士の仕事につかない人がさらに増える。人材確保がますます困難になり、待機児童問題の解消はさらに遠のく。
当然のことながら、親たちの間には「定員だけ増やしても、保育士の待遇が改善されないのなら、逆に保育の質が低下してしまう」との不安の声が高まった。
5月18日に政府が決定した、今後10年の施策をまとめた「ニッポン一億総活躍プラン」。この中では「(全産業の女性労働者の平均賃金との差が)月額4万円程度であることを踏まえ、賃金差がなくなるよう処遇改善を行っていく」という記述が盛り込まれた。これに対して、保育士の給与の平均は、全産業の平均月給よりも月額11万円も低いのだが、その格差を小さく見せるため、わざわざ女性の平均賃金と比較するという卑劣なごまかしが用いられたと、批判の声が上がったが、政府はそうした批判を一蹴した。
しかも、実際の実施は2017年度に先送りされた。さらに、野党が必要な財源や具体的な引き上げ額を聞いても「お答えすることは困難である」と答弁する始末。本当に実行する気があるのか、今から疑いの声があがっている。参院選前のアピール、空手形にすぎないのではないのかとの批判の声もある。
2016年4月11日、東京都千代田区の衆議院第二議員会館で、「保育園!!!詰め込みやめて!給料上げて!保育園つくって!私たち声をあげます!大作戦 ~保護者&保育士~」と題した集会が開催された。幼子を抱きながら参加した母親たちが、厚生労働省や内閣府の担当者に、「待機児童問題の対策には(入園者の)数ではなく、保育の質の確保が重要だ」と訴えた。
大田区在住の母親は、保活(子どもを保育園に入れるために保護者が行う活動)を経験した母親に、インターネットでアンケートを実施したという。「47.4%の母親が、妊娠中もしくは出産後3ヵ月未満で保育園探しを開始している。妊娠中でも保育園見学などに動き回り、その厳しさから、2人目の出産は諦めざるを得ない、という声も上がっている」と訴えた。
安倍政権のすすめる規制緩和は、たくさんの子どもを一人の保育士がみる羽目になり、保育の質の低下だけでなく、安全性の低下、事故の可能性も格段に高まる。実際、規制緩和は何年も前から進んでおり、子どもの死亡事故が規制緩和前より格段に増えている。
保育事故で生後4ヵ月の子どもを失った女性は、「子どもを亡くすことは、本当に地獄だ。厚労省の人たちでも、議員でも、子どもを亡くすことの悲しさは同じはず。保育士の待遇改善は、子どもたちの命に直結する」と悲痛な面持ちで語った。
自身も保育園に子どもを預けている民進党の山尾志桜里衆議院議員は、「この問題が国民へ広がったのはよかったが、対策は(保育の)質を下げて量(人数)を拡大することではない。厚労省は、ポイント制の入園審査などで母親たちを競わせないでほしい」と語気を強め、対策として「自治体別に待機児童の正しい数を公表すること。保育士の給与を上げること。働く母親が、わが子と接する時間が持てる労働環境の改善」の3点を挙げた。
厚労省からは、当初予定した保育課長は欠席。代理に出席した担当官は、「それぞれの家庭事情を踏まえ、検討を要すると改めて思った」と応じた。内閣府担当官は、「待機児童解消のため、3000億円の財源を確保するようにしたい」と述べるに留まった。
2016/04/11 保育園!!!詰め込みやめて!給料上げて!保育園つくって!私たち声をあげます!大作戦~保護者&保育士~(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/296124 … @iwakamiyasumi
この保育園問題が日本を変えるキッカケになるかもしれない。もう黙らない。
https://twitter.com/55kurosuke/status/719807514338983937