「保育園落ちた日本死ね!」に共産党が便乗と報じる産経新聞~産経新聞の「反自民はなんでも共産病」には、もううんざり! 2016.3.13

記事公開日:2016.3.13取材地: テキスト
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(文責、記事構成・岩上安身)

 先月2月25日、はてな匿名ダイアリーに投稿されたブログ、「保育園落ちた日本死ね!!」は、大きな反響を呼ぶことになりました。

 2月29日、衆院予算委員会において、このブログを引用しながら待機児童問題の切実さを訴えた民主党の山尾志桜里議員に対し、安倍首相は「匿名である以上、確認のしようがない」と発言。平沢勝栄議員ら自民党議員も、「誰が書いたんだよ」、「ちゃんと本人出せよ」などの愚劣なヤジを飛ばしました。

 厚生労働省が発表した待機児童の数は、2015年の4月時点で2万3167人――。前年比で1796人増え、5年ぶりの増加、7年連続の2万人越えです。これが現実です。確かにブログは匿名でしたが、それは事実の信頼性に傷がつくようなことではありません。こうした統計データが存在することは事実です。匿名の人が指摘しようと、IWJが指摘しようと、事実は事実。対応がきわめて不誠実なものであり、女性と子供に対して冷酷なものであったことは否めないでしょう。

 「すべての女性が輝く国づくり」などという文言を一方では掲げながら、「念願」として通そうとしている自民改憲草案には、第24条など、女性を家に縛り、家父長制を基盤とした家制度への回帰を目指す文言で溢れています。

 「少子化で現役世代の労働力が減ってきているので、お国のために女性も労働力として男性と同様にガンガン働いてもらうからね。でも、少子化だから子供もバンバン生んでね。もちろん、家事や育児や介護は、女性がやってね。日本の伝統だからね」という、自民党の魂胆が見え見えです。

 でも、安倍首相、1万歩譲って女性が家事をやり、子供を生み育て、かつ、外に働きにいくのを受け入れたとしても、それなら、なお一層、女性が子供を預けて外へ働きにいく保育所が必要になるではないですか。外へ働きに行けって、じゃ保育所に子供を預けないで、どうやって働きに出るんですか!? ただでさえ、諸外国からみればありえない日本の長時間労働下で、それでも育児や家事も担当しなければならないのであれば、保育所が不可欠。すごくシンプルな話ではないでしょうか。

 同じように「いい加減にしろよ」、と思った人は沢山いたようです。

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 3月4日には、ブログに共感した市民が国会で抗議活動が行われ、署名サイト「Change.org」で集められた2万8205人分の署名が先述の山尾議員に提出されるに至りました。この動きを受けて、安倍首相は3月11日待機児童解消に対し具体的に取り組む方針を明らかにしました。この身変わりの早さ、何しろ選挙を数ヶ月後に控えていますからね。

 口先だけの安倍首相にはほぼ期待していませんが、それ以上に酷かったのは、この件を報じた産経新聞です。3月9日、産経新聞は「共産も便乗?」とのタイトルで記事を発表、5日の国会前行動に参加した共産党の吉良佳子参院議員と田村智子参院議員をあげながら、この件に共産党が便乗しているかのように解説しました。待機児童が7年連続で増加している現実も、保育士の給料や待遇が非常に悪い現状については、驚くほどまったく触れられていません。

 産経って、エセ保守だなと、つくづく痛感しました。保守ならば、自民族の子々孫々の繁栄を第一に考えるものでしょう。合計特殊出生率が2.07(両親の間から子供が平均して約2人生まれて、人口が維持される水準の出生率のこと)を維持できなければ、若年人口数はどんどん減っていくのです。中国が攻めてこなくても、北朝鮮がミサイルを撃ってこなくても、日本民族は消滅の危機に立たされるのです。それを放置していて、何が愛国だ、何が保守だ、何が伝統派だ、何がナショナリストだ、ぜんぶ嘘だろ、産経、と言ってあげなければいけません。

 岩上さんはフリーのジャーナリストとして、少子化問題を一時期徹底的に調べ、研究し、産経新聞社発行の右派論壇誌である『正論』に、その名も「日本人が消滅する日」というショッキングなタイトルの超少子高齢化と人口減少問題、この結論と人口の二重のデフレスパイラルについて、連載記事を書いたことがあります。そこで提起されている問題は、いまだに色あせていません(これは近々、公開します)。そうした岩上さんの論文を掲載しておきながらも、「産経」は未来の日本のために子育てする若いカップルをへこませ、ささやかな希望を打ちのめし、必死で日本人の子供を減らす方向へ誘導しているわけですね。これが、日本人のための愛国を気取る新聞ですか!? 最も「反日」的、「亡国」の「反日本民族」的な宣伝媒体ではないですか。

 今始まったことではないですが、産経新聞社からすると、すべての反自民を掲げる勢力、自民党やエセ保守的な価値観を嫌う人々は「共産党」という名前でまとめられるようです。

 自分たちの本質がグローバル資本の利益を代弁する「反日」的、「亡国」的プロパガンダであることを隠すために、攻撃目標が必要で、いつも便利に使われるのが「共産党」だというだけのことでしょう。

 2月29日、同紙に掲載された「安保法反対デモに見る若者の政治利用を憂う ナチス青少年部や紅衛兵にソックリではないか…」という記事です。ここでは、SEALDsやT-nsSOWLをナチの青年党になぞらえながら、共産党を始めとする野党に政治利用されている、との記述がされていました(産経ニュース 2015年2月29日)。

 SEALDsやT-nsSOWLが野党に動員されている事実関係を証明する記述は、もちろん一切ありません。つまり、ジャーナリズムでもなんでもない、産経新聞のお家芸、ザ・プロパガンダなのですが、近頃は度を超えて露骨に酷いものがあります。

 さらに、2月29日、勝俣恒久・元会長ら、東電元幹部3人が強制起訴された件に関しても、同紙は「東電元会長ら起訴 天災の刑事責任問えるか」との記事を掲載し、「震災時の津波を予期することができなかった幹部らの起訴を批判する論調で記しています。

 しかし、3月10日、岩上さんによるインタビューを行った海渡雄一弁護士が語るように、今回の起訴状では「元幹部らが事前に津波を予測しており、2008年6月の時点で防潮堤を建てる計画がありながら、握りつぶした」ことがはっきりと、明らかにされています。こうした「真実」について、産経新聞はほとんど報じていません(産経ニュース 2016年3月1日)。

 海渡氏は岩上さんに話しながら、「何度も司法記者クラブで説明したが記事にならなかった。IWJでは全部伝えてくれる。IWJのようなメディアはなくてはいけない」と生中継中に訴えました。産経の記者は、司法記者クラブに入っていないんですか?そんなことはありませんね。寝ていたんですか?そんなこともないでしょう。聞いていて意味がわからなかったほど頭が悪いのですか?その可能性はありますが、たぶん違うでしょう。原発マネーによる広告費が欲しいんですよね。広告マネーの奴隷なんですよね。そのためには真実なんていくらでも犠牲にして、嘘八百の記事が書けるんですよね?違いますか?違わなければ、ご連絡ください。説明を受けたいので、コンタクトお待ちしています。

※岩上さんによる海渡弁護士へのインタビューは、スクープ速報として記事と動画でアップされています。どうか、詳細を以下でご覧ください!

 安倍首相応援団の産経新聞は、戦争大好き、原発も大好き、なのですが、原発大好きと戦争大好きは、大きく矛盾します。産経は「原発と共生」などと肌が栗立つような気色悪い言葉で原発の再稼働政策を支持してみせますが、その原発が戦時に標的になることはまったく「想定外」というノー天気ぶりです。原発リスクと戦争リスクを同時に考えられない。これこそ究極の「お花畑」でしょう。

 他方で、北朝鮮や中国による軍事的脅威を煽る同紙ですが、本当に日本の防衛や国土を案じるのであれば、まず、原発の再稼働を止め、廃炉と燃料の搬出を急ぎ、使用済み燃料も含めて、仮想敵の標的とならない山の中にでもしまい込むなど、「致命的急所」を敵の攻撃から隠すのが最優先でしょう。ミサイルが一発、原発に撃ち込まれれば、日本が焦土と化すことは間違いありません。

 いや、日本の原発を破壊するのに、ミサイルなど必要ない、と証言する元自衛官もいます。

 昨年2015年11月5日に岩上さんがインタビューした元自衛官の末延隆成氏は、「(原発の警備体制は)あまりにもゆるすぎますね、はっきり言って。これは、強行突入すれば、わけなく原子炉近くまで行けるという状況です」と発言し、原発を完全にテロや武力攻撃から防ぐことの不可能性を指摘しています。この動画はぜひ、御覧になって下さい!!

 元自衛官の末延隆成氏への岩上さんによるインタビューは、「後方支援」のリアルや「トモダチ作戦」の裏側などが末延氏の実体験を通じて語られる、大変貴重なお話となっています。こちらのインタビューは、大好評を受け、3月15日(火)に再配信いたします。こちらもどうぞご覧ください。

 さて、デタラメな記事を書いて何百万部もたれ流す新聞が大きな顔をして記者クラブなどという、権力とのなれあいのカルテルを作り、国民に毎日、毎日、薄っすら嘘の混じった(つまりは毒の)情報をのませていて、そういう媒体を大企業が巨額の広告費を払って支えている、そんないびつな日本の情報空間のあり方を、もういいかげんにやめにしませんか!?

 市民のために必要な真実の情報を、市民のスポンサードによって、市民のメディアが産直でお届けする、そういう独立メディアが必要だし、つぶれてはいけない、と思います。私はIWJでは新参者ですが、これまで遠くから見ていて、今度は内側に入って一緒に働いてみて、IWJは必要だ、という思いを強くしました。

 現在、IWJの財政状況は非常に難しい状況にあります。

 しかし、海渡弁護士も指摘するように、大手新聞社が多くの事実に目をつむり、産経新聞社のようなプロパガンダが溢れている今、どこの政党にも企業にも支援されない、独立市民メディアが絶対に必要です。

 もちろん、アゲインストの国にはいつも吹きさらされています。エセ保守、エセナショナリストによる口汚い罵倒で、岩上さんのタイムラインはいつも炎上しています。これだけ攻撃され続けていたら、普通の人だったら神経がまいってしまうと思います。その分、ストレスが体にきているのは間違いありません。岩上さん一人を表に立てて戦っていては、いけません。スタッフも、同じマネはできないけれども、戦わなくてはと思いますし、多くの人にもご支援をお願いしていかなければいけません。

 岩上さんはじめ、IWJスタッフ総力をあげて、産経とは正反対のアベ様の不都合な真実であっても、真実である限り、お伝えし続けていけるよう、しっかり今後とも取り組んでまいります。どうか、会員の登録を、そしてご支援、カンパでのご支援のご検討をいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

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「「保育園落ちた日本死ね!」に共産党が便乗と報じる産経新聞~産経新聞の「反自民はなんでも共産病」には、もううんざり!」への2件のフィードバック

  1. 横山 太一郎 より:

    安倍が言い出したのは見え見えの選挙対策でしかない事を確り見ておく必要があると思います。
    自民党政権は戦後何年して来たのですか?
    民主党の様に数年で駄目になった訳ではないでしょう。
    私は最近では保育所には関係のない年代になりましたが20代頃には大阪の区役所へ何度も
    交渉へ参加しました。
    今に始まった訳ではないのです。何十年も前から保育所は不足していて一向に改善されなか
    事が今に引き継がれている様に思います。
    この様な腐りきった政権を夏の参議院選挙時に必ず引き摺り下ろし新しい政権が出来る事を
    期待しています。そして官僚政治を終わらせないと良くはならないと思います。

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「保育園落ちた日本死ね!」に共産党が便乗と報じる産経新聞~産経新聞の「反自民はなんでも共産病」には、もううんざり! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/291753 … @iwakamiyasumi
    マトモな人は産経なんて読まないだろうけど、あまりに酷い。この新聞の存在価値は何?
    https://twitter.com/55kurosuke/status/709218554625728512

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