2012年8月28日(火)、札幌市民ホールで、「台湾の原発は今?~台湾の反原発アクティビスト、ダン・ギンリン氏講演会」が行われた。
(IWJテキストスタッフ・佐藤)
2012年8月28日(火)、札幌市民ホールで、「台湾の原発は今?~台湾の反原発アクティビスト、ダン・ギンリン氏講演会」が行われた。
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ダン・ギンリン氏は大学で日本語を勉強したので、日本語での講演になった。
台湾では70年代後半から原発が次々と立てられていき、それらはすべてアメリカ製のもの。チェルノブイリの事故が起きて、台湾の人も「原発は危ないな」と思うようになったという。第4原発は1号機と2号機があり、東芝と日立で一機ずつ作られている。タービンは三菱。実質はアメリカだけれども、日本が初めて原発を輸出したようなもの。と、まず台湾の原発状況を説明。アメリカが元請けで日本が輸出したが、実際は台湾の現地のエンジニアが作ったものだから「とにかく台湾の原発は事故が多い」と言う。28時間まったく電気がいかなかったという事故が、ダン氏が帰った(2年前)ちょっと前に起こったと、改めて台湾の原発の危険性を主張した。
90年代は10万人デモがあったが、停滞気味になり2010年の夏、原発がもうすぐ動くとなって、みんな台北市内で抗議をしていた。このようなデモが盛り上がりかけたころ、3.11があった。台湾では1ヶ月くらい毎日のように報道されたので、ますます抗議行動が過熱したという。
4月30日に大きなデモが台湾の4つの都市で行われたが、これは2000年以降で一番大きかった。3.11事故の影響から台湾全土で原発に対して危惧があったが、政府は保守的。福島の事故から3カ月たち、大きなデモがあっても「第4原発の予算が足りないからさらにお金を費やします」と言いだした。しかもそれは津波対策ではなく、国際的原料高騰によるものという、もっともらしい理由をつけたと、台湾政府の発言を批判した。
ダン氏などを中心に原発が危ないことを台湾の人に伝えるため、6月12日の夜から国会の前で集まって朝まで騒いで、国会が始まるときに激しい抗議があったという。このとき国会に突入したが、逮捕されなかった。ここまで大きいことをしないと報道されないと思った。が、結果は何事もなかったように予算がプラスされたと述べた。
第4原発の危険性に関しては「台湾電力は原発を作ったことがない。コンサルタント会社が途中で倒産したので、勝手に台湾電力がやっている。工事が長引いて10年経過していることから、新しい部品も古くなり設備も老朽化。品質管理も悪い。国の原子力委員会の検査機能が働いていないと問題だらけ」と指摘した。
さらに台湾は原発だけが問題ではない。今年の3月、台北で都市の再開発問題があったり、厳しい社会情勢であることなど、複雑な社会問題を抱えた国であると説明した。
「しかし原発は危ない」というダン氏の主張は変わらない。今年の3月に第2原発、1号機の原子炉の下にボルトが7本折れた。定期検査で急に地震ではない揺れがきて、このことが判明したという。こういう現実が台北の28キロ先にあると、原発と都市の近さをアピールした。さらに大統領が5月の記者会見で「わが国が原子力政策をする上で反対の声を聞いたことがない」と発言。「私たちは人間だ」という怒りの声が多数あがったと述べた。
台湾の原子力の割合は去年のデータでは17.1パーセント。予備用は全体の23パーセント。単純に考えても今すぐ原発をやめても大丈夫だと、日本と同様に原発がなくても問題がないという。これに加え、台湾の食品の放射線汚染基準の引き上げがあると発言。チェルノブイリ事故が起こって、370ベクレルになっていたが、この2ヶ月間で異議がなければ600ベクレルになると、食の不安についても語った。
質疑応答では、台湾の核廃棄処理場についてや、福島事故後のこと、食品検査基準について質問があった。台湾の廃棄場は30年くらい前に作られたが、当時は「魚の缶詰工場だと嘘をついて作られた」と公表。現在、最終処分場は2カ所の候補地があり、住民投票を来年から始める予定。1カ所は中国に近い場所だから、そこはやらないだろう。今は50年間置くという中間処理施設を作っていると回答。福島の事故のことはメディアでたくさん報道したのだが、国は今でも原子力を推進しているという。最後に、チェルノブイリの事故前は食品の基準がなかった。しかも検査方法もはっきりしていない。問い合わせても曖昧で「厳しい検査です」と言うだけと、検査方法に対する不安を述べた。