2012年8月28日(火)、二本松市民会館で、国会事故調査委員会『黒川清委員長特別講演会』が行われた。
(IWJテキストスタッフ・佐藤)
2012年8月28日(火)、二本松市民会館で、国会事故調査委員会『黒川清委員長特別講演会』が行われた。
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この講演会では、640ページある調査報告書の意味と結果などを説明。黒川委員長からは「量が多いので、時間のあるときにダイジェスト版や要約を読んで欲しい。9月の10日か11日、この本が徳間書店から本屋に並ぶ」と冒頭に紹介があり、さらに詳しい報告が行われた。
まず事故当時の枝野官房長官の記者会見に関して「何を言っているのかわからないもの」と核心をついた。続いて日本の専門家たちが官房長官の会見以上の発言がないことで、日本の国家全部の信用ががた落ちしたと冷静に事実を述べ、このような状態から信用を取り戻すために事故調査委員会が発足したと説明。「事故調査委員会メンバーの中には霞が関関係の人間は一人もいない。私はこの委員会は国民による国民のための委員会だと認識している」とクリアな組織であることを明確にした。
事故調査委員会の役目には未来への提言をあげ、きちんと過去のことを調べてそれをもって将来を見通さなくてはならないとし、この事故を学んで世界がどうやっていくかが大切とした。もし原子力を選ぶのであれば「より安全な対策はどのようなものだったのか」と事故の要因の追及についても触れた。
さらにこの委員会メンバーで12月18日、19日の一泊二日で福島第一に行ってから具体的に始動したことも公表。国会で決まったことなので役所と東京電力はイヤイヤながら協力し、最終的には38人が参考人となった。「調べたものはすべてネットで公開しているので、それを見て皆さんで判断して欲しい」と、あくまで自分たち委員会独自の判断がないことを強調。事実に徹したものであることを全面的にアピールした。
報告書の概要に関して「皆さんが行政を管理する力を持つこと」を提言したと発言。今までの政府が行っていたことは、監視がしにくかったとし、委員会メンバーが民間人であり、それぞれの人が中心になって動いたものであることを語った。また、今回の事故に関して「人災である」と判断した理由には、311以前になすべき対策が出来ていなかったと断言。報告書にはどのようなことが起こったのかが詳しく書かれていると付け加えた。
今まで曖昧になっていた政府の対応については、10の結論と7つの提言を作ったとし、最後は「福島の人だけでなく、日本全体が大変な事故だから立法がしっかりするようにと動けばいい方向に動くと思う。これは国内だけでなく、国外の人たちも同じ」とアドバイスした。
質疑応答では、中間貯蔵施設の問題や4号機の状況について質問があり、黒川氏は「福島県内の市町村の長は悩んでいる。あまりにも大きな問題だから、自分たちでは決められない。国が出来るだけ一人ひとりがどれかのチョイスを出来るという選択肢をあげるべき」と回答。さらに「事故はまだ終わってないというのが、この委員会の認識。状況が変わるかもしれないが、あまりにも情報がなさすぎる。また、福島第一は未だに危ない状態で、汚染水はまだかなり出ている。そのことを世界は知っている。そのわりにメディアの取り上げ方が不十分である」と鋭く指摘した。