社会保障と税の一体改革にかかる、自民公明民主による三党合意は、野田総理が前原氏に、自民党案を基調に修正案を出すことを一任し、修正案に自民公明各党が合意することで成立した。改正案には、民主党がマニフェストに掲げた改革案と矛盾する条項が多く、鳩山氏をはじめとする民主党内の、消費増税関連法案の採決で棄権・反対した議員らが、消費税研究会を発足。第4回の勉強会では、三党合意の問題点について、福島議員、階議員が解説した。
(IWJテキストスタッフ・芳川)
特集 消費税増税
社会保障と税の一体改革にかかる、自民公明民主による三党合意は、野田総理が前原氏に、自民党案を基調に修正案を出すことを一任し、修正案に自民公明各党が合意することで成立した。改正案には、民主党がマニフェストに掲げた改革案と矛盾する条項が多く、鳩山氏をはじめとする民主党内の、消費増税関連法案の採決で棄権・反対した議員らが、消費税研究会を発足。第4回の勉強会では、三党合意の問題点について、福島議員、階議員が解説した。
記事目次
■ハイライト
三党合意の問題点について、福島氏は、「増税で景気が悪化したから、公共事業で景気浮揚策をやるというのは、最大の失策。橋本政権以来の、増税で景気悪化してから、公共事業に予算を振って、景気対策を打つ、という失敗のルートを、もう一度やろうとしているとしか言えない。」と指摘した。
階氏は、「今後の公的年金制度、高齢者医療制度にかかる改革については、予めその内容等について、三党間の合意に向けて協議する、ということになっているが、これでは自公が協議に応じない限り、法案を出すことも出来ない。これではマニフェストの自殺ではないか。先送り、棚上げというレベルではなく、ほとんど死んだに等しいととられても仕方がない」と厳しく指摘した。
他の参加者から、民主党の理念に反する決定をした野田総理の責任を追及する声もあがった。
【以下、内容書き起こし】
財政赤字だから税を上げなくてはいけない、は間違い。財政が良くなるという保障もない。かろうじて根拠といえるのが、社会保障改革とセットになっている点だったが、後期高齢者医療制度の廃止や、最低保障年金の創設など、マニフェストの最大のアピールポイントが棚上げされていて、社会保障と税の一体改革ではない。逆進性対応のための高額所得者の負担増の部分が削除、財務省も痛みを伴う、歳入庁の設置が骨抜きにされた。消費増税による税収増分を、公共事業に充てることが明記された。
社会保障と税の一体改革と、かろうじて言っていた根拠は、2月17日閣議決定された社会保障税一体改革大綱、しかし、法案には反映されていないことが党内からも批判があり、議論されてきた。とはいえ、大綱の中で、後期高齢者医療制度廃止の法案は、この通常国会までに出す、年金制度の抜本改革は来年の通常国会までに出す、ということを閣議決定し、閣議決定に基づき法案提出することを定めている。その一点においてかろうじて一体改革と言っていた。この約束を反故にされた時点で、社会保障と税の一体改革では無い。
国会議員と有識者が入って決定する、国幹会議的なプロセスがとられていない。国会議員が何人入るのか、衆参、与野党の人数比も定められてない。これは審議会であり、役人が内閣総理大臣の名で参加者を任命する名前だけの機関に任せることになる。この意味でも、一体改革の前提が崩れた。
歳入庁の創設による、税と社会保険料を徴収する体制について本格的な作業を進める、という条文があった。こう書いてある以上、政府は立法府の作った法律に基づいて、本格的な作業を進めなければならない。しかし、今回加わった条文をみると、年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等をを幅広い観点から検討して実施する、となっている。作業の実施が先送りされて、検討するだけになった上に、年金保険料の徴収体制強化等という言葉に言い換えて、税務署には手を付けず、厚生労働省の所管分野の見直し、ということにしてしまった。また、歳入庁”その他の”と、”その他”という表現は法律的には違っており、”その他”としたときには列挙であり、歳入庁が必ず入るのに対し、”その他の”としたときは、あくまで例示であり、歳入庁が必ずしも入るわけではなくなる。霞が関文学。こうして歳入庁創設が骨抜きにされた。”幅広い観点から”も、やらない理由を述べたてていく作業であり、この表現は、霞が関文学の世界では、やらないと宣言したに等しい。
増税で景気が悪化したから、公共事業で景気浮揚策をやるというのは、最大の失策。橋本政権以来の、増税で景気悪化、公共事業に予算を振って、景気対策を打つ、という失敗のルートを、もう一度やろうとしているとしか言えない。
財務省は財政赤難で悪くない、と分かってる。財務省の力の源泉はどこにあるか、主税局ではなく主計局にある。財務省の力の源泉は予算の配分にあるから。予算配分でいちばん都合が悪いのが社会保障、査定もしないのにお金が出ていく。公共事業なら細かく色々査定できる。自分たちが裁量を持てる予算に力を注ぎたい財務省と、自民党の利益が一致して、公共事業にお金を振り向けようとしている。
参加者:消費増税分は社会保障以外には1円も使いません、と総理も言っていた。しかしその前提が崩れていき、使途についてはっきり決めない。だから私は反対した。増税だけ決めて選挙になれば、言ったとおりにやらないだろう。結局、公共事業に使うのだろうと思う。
福島:今回の増分(5%)をただちに公共事業に使うわけではないと政府は反論すると思う。実際に税法の改正案の条文にも消費増税分を社会保障に使うと書いてある。しかし、増税が行われれば、おそらくこれまで一般会計から社会保障にまわしていた分を削るだろう。あるいは増税で国債の信任が高まるので、それを持って建設国債の発行を増やし、それをもって公共事業に回すだろう。間接的に公共事業に回すことになるので結果は同じ。
参加者:竹下、橋本政権下での増税は、消費増税と同時に、所得減税を行って、徐々に減税を軽減していくことで、一度に経済に与えるインパクトを抑えていた。今回それを公共事業で行おうとしているのはおかしな話。
福島:ここ20年、増税で景気悪化させてからの景気対策で、財政収支が悪化し続けている。1000兆円の財政赤字を産んできたサイクルを、また繰り返そうとしている。
参加者:素朴な疑問、政権交代があった場合、自公政権は消費増税5%のうち、民主党が、最低保障年金などの新たな充実に充てるとする1%分をどう使うか。使途についてどういった扱いになるのか。
福島:1%、4%も法律で担保されてる部分とそうでない部分があって、現状、社会保障と税の一体改革の閣議決定にすべて集約されている。閣議決定のみに関わらず、と言ってしまえば、もう一度白紙から議論出来るようになっている。法律で、5%を社会保障に回す、とピン止めはされているけれども、その内訳については白紙の状態。
主催側からの補足:消費増税分は社会保障に使うと定めているが、その分、一般会計や国債発行に余録が出来るため、そこから公共事業に回すことができる。このモデルは、そもそも財政再建を目指していないモデルとなっている。
福島:4%をどうするかも、これから、社会保障国民会議で、我々が考えたのと違う内訳になることもありえます。
続いて階議員。動画では35分から
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