選挙期間真っ最中の12月6日(土)19時から、東京・新宿駅西口小田急前で、厳しい寒さの中、「24時間ハンガーストライキ」が行われた。
ちょうど一年前のこの日、国民の多くの懸念、反対を押し切って「秘密保護法」が成立。施行は今年2014年12月10日だ。
「消費増税」だけでなく、「日米同盟ガイドライン改定」、「集団的自衛権行使の具体的法制化」、「TPP締結」、「原発再稼働」など、重要な「争点」がぼかされ、安倍政権圧勝が伝えられる中で、「もう止められない、暴走が始まる! 」と警告する声があがった。
その暴力的とも言える強権行使がすでに始められている実例が、沖縄の「辺野古新基地建設」だ。沖縄県民は「反対」派の翁長雄志氏を知事に選び、改めて意思を示したが、安倍政権は新基地建設の手を緩めない。
現地のこの危機感を、体験談や記録映像などで伝えようと、この日ストライキをよびかけたのは、「辺野古リレー 辺野古のたたかいを全国へ」。一人でも多く、現地の実態、自然、人々と触れてもらいたいと、カンパで交通費をまかない、次の誰かに伝えつないでいく運動だ。
安倍政権の「わけのわからない解散総選挙」の本当の狙い、争点とは?
園良太氏(以下、園・敬称略)「みなさん、私たちは沖縄北部の辺野古基地建設に反対して、24時間何も食べないハンガーストライキを行います。安倍首相が今、自分の都合で解散し、14日には選挙があります。一体、何のための選挙でしょう。
実は沖縄県知事選挙で翁長候補が仲井真知事に圧勝し、辺野古基地反対の民意が鮮明にされたその直後、安倍首相は解散を発表したのです。自民党の敗北が全国に拡がることを誤魔化し覆い隠すためだと、沖縄では言われています。
実際に、首相が自分の都合だけで解散を決めたことで、辺野古のほか、さまざまな問題が吹き飛んでしまっています。だから私たちは選挙期間ですが、ここで座り込みます。辺野古で起きている問題を知ってください。そして声を上げてください。
私たちが求めているのは3つです。まず『この選挙で新基地建設を争点にすべき』。次に『新基地建設を絶対許さない。今直ぐ中止せよ』。最後に『その基地建設のために、海上保安庁と防衛省、沖縄県警が、沖縄の人々に毎日毎日、暴力を振るっている。これをやめろ』、この3つを、私たちはハンストを通して要求します。
この場所には、明日の昼間も多くの選挙カーがやってくるでしょう。私たちは訴えます。基地建設に反対して欲しいと」
「どれだけ不当に工事を強行しているか」――。
辺野古から帰ってきた男性(21)「実際に行ってみて、どれだけ不当に工事を強行しているか、肌で感じることができました。新しい米軍基地をつくるということですが、沖縄だけの問題ではありません。県外に住む私たちこそ問われているのです。なぜなら差別の問題だからです。
そういうことを沖縄に行くと肌身に感じることができます。このヤマト、本土とよばれる日本から沖縄に向けられた何百年にもわたる差別、搾取の歴史の流れに乗ってさらに、米軍基地を押し付け、自然を壊し、命を壊し、そこからまたアメリカの侵略戦争に加担する、そういうものを沖縄に押し付けるわけです。
だから我々こそが反対し、選挙中だからこそ、一票でも示すということが大切になってくると思います。だから僕もここで24時間ハンストに参加し訴えます」
参加者の女性「初めてハンストというものに参加しました。新宿のみなさん、沖縄が大好きで、旅行する人も多いと思います。でも、辺野古に基地ができても生活に、日本に、特に関係ないと思っているでしょうが、殺され、死んでしまうジュゴンやサンゴ、守りたいと思っている沖縄の人たちのことを知ったら、きっと同じ思いになってくれると思います。みんなで守りましょう」
トランペット吹きの男性「沖縄の高江村にはヤンバルクイナという貴重な鳥がいますが、米軍ヘリパットを作り、また辺野古にはジュゴンのえさ場がありますが、基地建設で奪おうとしています。ものを言えないものたちの思いを汲んで、私は今日ここでハンストに参加します」
翁長氏の勝利は「まさに沖縄の地殻変動」
園「この『わけのわからない選挙』、冷めている人も多いでしょう。『どうやら自民党が300議席をとるらしい』、そんな報道が選挙2週間前に出る。それは『どうせ選挙に行ってもしょうがない』と棄権させるために、わざと流して自民党を圧勝させるためだという記事が11月26日の時点でありました。
みなさん、安倍政権を勝たせたら好き放題やり、大変なことになります。(過去に)カヌー隊の首を羽交い締めにし、陸上では84歳のおばあさんを『病院送り』にしました。24ミリ機関砲という大砲を積んだ船を10隻、20隻も海に並べ、沖縄辺野古の住民に向けて威嚇する、といったやり方がまかり通っています。こんな安倍政権を勝たせてはいけない。私たち一人ひとりのアクションで、彼らをとめる、やめさせる! これが何より大事です」
年配の男性スタッフ「本土ではなかなか報道されませんが、沖縄辺野古では毎日、粘り強い闘いが続けられています。沖縄県知事選は従来、保守対革新の対決でしたが、4年前、辺野古移設は『現実的ではない』という消極的な言い方をしながらも反対を公約した仲井真知事の再選時の選対本部長、自民党の県連幹事長を務めた翁長さんが、公約を破った仲井真知事、そして安倍政権に今回、挑み、勝利したわけです。そのスローガンは『イデオロギーよりアイデンティティ』。まさに沖縄の地殻変動です」
女性スタッフ「今回の選挙、投票に行く前に考えてください。基地をつくれば戦争を助長することにもなります。沖縄だけでなく、京都でも米軍のXバンドレーダー基地が80%完成していると言われています。どうか自分の身に置き換えて考えてみてください」
「戦後初」辺野古が今までの基地と異なる理由とは?
男性スタッフ「今、安倍政権は、沖縄に新しい米軍基地を作ろうとしています。これは戦後、いまだかつてないことなんです。今までは米軍が銃剣とブルドーザーで、人々の土地、家を奪い、基地をつくってきた。しかし今、名護市辺野古の基地建設は、沖縄県が、そして日本政府が、自ら米軍に土地を差し出すということなんです。日本にとっても重大な問題なんです。
安倍政権は今、総選挙で『アベノミクス』『消費税増税先送り』を問うなどと言っていますが、全くの嘘です。そんな選挙に650億円もかけるなら増税するなって話です。ひとのカネをジャブジャブ使って、さらに日銀に円安誘導させ、私たちの年金、税金をジャブジャブ使って、国土強靭化計画とか『3本の矢』、3本ともうっちゃった。でも景気は、私たちの雇用や経済は何ら変わることはないのが現状です。
安倍政権はこの選挙で、経済政策の失敗、集団的自衛権、原発再稼働そして、この沖縄の問題を覆い隠しています。僕も辺野古の海に潜ってみて、美しさに感動しました。沖縄戦を経験した島袋文子おばぁは、『どうしても基地を作るなら、私をブルドーザーで轢き殺し踏み潰していきなさい』と叫びました。
もはや自然も、法律も無視し、海を守らず、反対する人の『顔を無理矢理(水に)浸ける』などの暴力を、海上保安庁の『海猿』たちにさせているのも安倍政権です。もういらない、退場しろと訴えていきましょう」
参加した女性「ルイ・アームストロングが『この素晴らしき世界』という歌を謳いました。彼の時代もそんなに素晴らしくはなかったけれども、みんなで素晴らしくしようという思いを込め、また最近、詩人のアーサー・ビナードさんが日本語訳をつけたので、辺野古の海、高江の緑を想い浮かべながら聴いてください。
『森の緑、花の赤も、誰のものか、ふと思う。素晴らしい、みんなのもの。空の青、雲の白、昼と夜も、誰のもの? 輝かしい、みんなのもの』。辺野古の基地も、高江のヘリパットも、戦争もいらない」
続いてトランペット独奏、沖縄の記録映像が流された。スピーチや、音楽に合わせてプラカードダンスする人たちの姿も見られた。
「自分が生きている間にそんなことないだろうと思っていたことが、いつ起きてもおかしくないとわかった」
※以下、IWJによるレポートを掲載します