「原発・核燃マネーをあてにした三村申吾知事の3期12年は、誘致企業が破綻し尻ぬぐいに巨額の県税を費やしている。原発・核燃をやめて、原子力に頼らない青森を作ることは、私に課せられた使命だと考える」──。
2014年11月26日、青森市内で開かれた記者会見で、「なくそう原発・核燃あおもりネットワーク」共同代表であり、前青森県保険医協会会長、医師の大竹進氏が、2015年6月の青森県知事選挙へ出馬する意向を表明した。
大竹氏は、「原発ゼロ社会を目指し、安全第一で県民の命と財産を守るために全力を尽くす。原発・核燃マネーをあてにしていては、未来は見えない。地場企業に集中的に投資して大きく育てていく」と抱負を語った。
- 日時 2014年11月26日(水) 14:00~
- 場所 リッチモンドホテル青森(青森市)
原発マネー依存では豊かな青森県はつくれない
はじめに、青森県内の反核燃団体などで作る県知事選考委員会の委員長を務める浅石紘爾弁護士が挨拶に立ち、このように語った。
「悲惨な福島原発事故を目の当たりにして、多くの原子力施設を抱えている青森県民としては、他人事ではない思いをしてきた。われわれも、いつ被曝者になるのかという恐怖にさいなまされながら、3年余りを過ごしてきた。
ところが、県民の命、財産、生活を守る責務を持つべき三村申吾知事の県政は、核燃施設についてはすべて国任せ、われわれの意見や提案にも県民不在の回答を繰り返している。何とも頼りない残念な思いをしてきた」
浅石氏は、青森県の財政は核燃・原発マネーに依存し、非常に脆弱な状態に陥っていると指摘。「これではいけないと、私たちは3.11を契機に『核燃いらない青森ネットワーク』をつくって、核燃・原発に反対する多くの県民の声を背負って運動してきた。
しかし、よりよい青森県をつくるには、それだけではダメで、政治の場で、国策である原子力政策を変えていく必要がある。今までも何回か、核燃の白紙撤回を求めて知事選を戦ってきたが、今回、われわれの声を代弁できる代表者を選ばなければ、という結論に達した」と語る。
その上で、県知事選候補者の5つの選考基準を、1. 政治とお金に無縁で清廉潔白な人、2. 日本国憲法を遵守し県政に生かす人、3. 地方自治を尊重し県民が主人公の県政に転換を図れる人、4. 原発・核燃をやめて、原子力マネーに頼らない安全で豊かな青森県を目指す人、5. 民主主義を尊重し県民の合意形成に努め、公約を守る人、と説明した。
選考委員会は3回にわたる協議を経て、最終的に大竹進氏を選考することを決定し、本人の承諾を得たという。
県民投票条例を制定、原発・核燃について「県民的合意形成」を目指す
次に、大竹進氏が決意を語った。「私に立候補の決断をさせたのは、東日本大震災と原発事故。福島の原発事故は終息どころか、汚染水問題はますます深刻化している。福島での小児甲状腺がんの患者は100人を越えた。にもかかわらず、福島の事故がなかったかのように、大間原発の建設工事は再開され、むつ市の中間貯蔵施設では使用済み燃料の受入れ準備が進む。再処理計画は変更に次ぐ変更が繰り返されているが、完工を目指している」
このように現状への憂慮を語った大竹氏は、「原発・核燃をやめて、原子力に頼らない青森を作ることは、私に課せられた使命だと考える」と口調を強めた。
大竹氏は医療、介護、社会保障といった専門分野の政策に自信をみせる。三村県政との政策上の大きな違いについては、「三村知事は福島の教訓を生かすことなく、原発・核燃を推進している。県民の命と財産を守るべき知事としての責務を果たしていない。私は原発ゼロ社会を目指し、県民の命と財産を守るために全力を尽くす。アリバイ作りではない、実効性のある全県的な避難計画を作る」と述べた。
さらに、青森県民の原発・核燃に対する意見が二分されている現状にふれて、「県民投票条例を制定し、県民的合意の形成を目指す」とした。
「三村県政は、原発・核燃マネーをあてにした財政運営をしているが、この3期12年では誘致企業が破綻し、その尻ぬぐいに巨額の県税を費やしてきた。『失政のない三村県政』と言われているが、この構図の繰り返しでは未来は見えない。私は地場企業に集中的に投資し、大きく育てていく」
原発・核燃問題に保守も革新もない「オール青森」でまとまろう
原発・核燃マネーは危険ドラッグだ、と指摘する大竹氏。「心と身体が徐々にむしばまれ、依存症の治療には苦しみを伴う。しかし、今、離脱しないと心も身体も健康を取り戻すことはできない」と訴える。
さらに、大竹氏は「原発をやめ、核燃をやめ、一方で農林水産業や社会保障を発展させ、原発・核燃依存症を克服するプログラムを、県民と一緒に作りあげる。すべての人がそこそこ豊かで、あずましく(居心地よく)暮らすことができる青森県。オケラもミミズもアメンボもみんな仲良く生きていける、自然豊かなふるさとを目指す」と続けた。
また、沖縄知事選での翁長雄志氏の勝利に言及し、「原発・核燃問題には保守も革新もない。経済か基地か。経済か原子力か。このような二者択一はやめるべきである。沖縄に学び、保守革新を乗り越え、オール青森でまとまって、未来の子どもたちにも胸を張れるよう、誇りを持てる青森県を作ろう」と話した。
大竹氏は、青森が変われば日本も変わると力を込め、「今こそ、地方自治を変え、国を変える時である。全国からも青森県の挑戦にエールを送っていただきたい」と呼びかけた。
最後に大竹氏は、基本政策として、以下の6つの大きな柱を示した。1. 原発核燃をやめて命とふるさとを守る。2. 働きやすい、暮らしやすい心豊かな青森県をつくる。3. 医療・介護・福祉を充実し、社会保障分野の雇用を増やし青森県を元気にする。4. 子どもがのびのびと成長する教育環境を実現する。5. 県財政を県民の暮らしを支える財政に転換する。6. 日本国憲法を遵守し県政、県民の暮らしに生かす。さらに詳しい内容は、県民、分野ごとに専門家の意見を取り入れ、後日発表すると表明した。
青森で原発に反対したら身の危険がある?
質疑応答に入り、まず、「県民投票条例は、原発についてだけなのか。それとも、大きな問題があれば他のテーマでも行うのか。具体的に知りたい」との質問があった。
今年の5月に、函館の湯川に行きました。湯川は私が子供のころ、毎夏をすごした祖母の家があったところです。
ついた時はよく晴れて、対岸の青森がよく見えましたが、夜になるころからくもりだして海風が止まりました。
もし放射能が対岸からきていたなら、流されず滞留するな、ということも思いました。
祖母は99歳で、湯川からはすこし離れた介護施設にいます。元気ではありますが、なにか災害が起きても安全に逃げられるものではないことをお見舞いに行って実感しました。避難すれば済むというわけにもいかない。「避難に耐えられるか」が問題になると思います。
北海道知事は道民としてもちろん、青森県知事にも、こうしたところを考えられる方に就任してもらいたいのです。
大竹氏のような方が現れてくれたことがうれしいのです。