【安倍「破憲」改造内閣の奇怪な正体(4)】「ゴスロリ」ファッションの中身は極右政治家! 安倍総理お気に入りの稲田朋美・新政調会長、その政治的背景 2014.10.7

記事公開日:2014.10.7 テキスト
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(取材・記事:平山茂樹)

 9月3日の党役員人事で、自民党の政調会長に就任した稲田朋美氏。自民党の政調会長とは、政務調査会長の略で、幹事長、総務会長とあわせて党三役と呼ばれる。党の政策の調査と政策の立案を担当する要職である。当選回数3回での政調会長就任は、異例の抜擢だと言える。稲田氏は、行革担当相として、官邸に官僚の人事権を一元化する「内閣人事局」の発足に尽力。安倍総理から、高い評価を受けた。

 行革担当相時は、クールジャパン推進担当として、「ゴスロリ」ファッションを披露したこともある稲田氏。女性議員として、若者文化にも理解のある頭の柔らかい政治家かと思えば、その正体は、ゴリゴリのタカ派思想の持ち主である。

日の丸を背後に、笑顔で「ネオナチ」とツーショット写真におさまる現職の国会議員

 安倍改造内閣発足直後、2枚の写真が欧州のメディアを賑わせた。新しく総務大臣に就任した高市早苗氏と、稲田朋美氏が、「国家社会主義日本労働者党(NSJAP)」を名乗る男性とツーショットに収まっている写真である。

 同団体のホームページには、ナチスを思わせる鍵十字のマークが多数用いられている他、「基本理念」として「我が国において『民族浄化』を推進しなければならない」など、極右的・排外主義的な文言が並んでいる。

▲「国家社会主義日本労働者党」の山田一成氏(左)と稲田朋美氏(右)

 このツーショット写真について、AFP通信や英紙ガーディアンが相次いで報じた他、米国のユダヤ人団体「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」も「(安倍)首相の新しい閣僚のネオナチとのつながりに関して、非常に懸念しており、困惑している」とのコメントを発表したことは、IWJでもすでに報じている。以下の記事をご覧いただきたい。

 この写真について稲田氏は、9月10日付けで以下のようなコメントを発表した。

 「一部報道にあるご指摘の人物は、雑誌取材の記者同行者として、一度だけ会い、その際写真撮影の求めには応じたものだと思われます。記者の同行者という以上に、その人物の所属団体を含む素性や思想はもちろん、名前も把握しておらず、それ以後何の関係もありません」

 この「雑誌」とはどのような媒体か、その詳細は、高市氏が9月12日の定例会見で、IWJの質問に答えてその詳細を語っている。

 「稲田政調会長や西田先生のお名前も出ていたというふうに聞きましたので、3事務所で協力をして、これが一体誰なのかと特定をする作業、相当秘書たちは苦労をしました。当該の年月、その月に3事務所に共通して訪れた客は誰かということまで調べました。私の事務所は、過去数年程度でしたら、私自身の日程というものは、全てまだパソコンに残っておりますので、それらを突き合わせましたところ、共通して訪れたのは月刊誌の取材であったということが分かりました」

 「大変苦労して3事務所で調べましたら、『撃論』という月刊誌のインタビューを3人とも同じ月に受けたということが判明いたしました」

 「そのときの状況なども、3事務所でどうだったのだろうということで記憶をたどりました。私自身はおそらく、編集長さんなどと名刺交換をしていると思うのですけれども、ただ、雑誌にしても、テレビにしても、インタビュー取材に来られるとき、大体スタッフ4、5名で来られます。編集部の方、インタビュアーがライターや有識者の場合はその方、後、カメラマンの方、また、照明の方とか様々来られますので、後の方については名刺も交換してないし、承知をいたしておりません」

 稲田、高市、西田の三事務所が調べあげたという『撃論』という雑誌は、オークラ出版を版元とし、主に右翼・復古主義を唱えるオピニオン誌である。現在は廃刊しているが、インターネット上では、稲田氏と高市氏がインタビューされた際の『撃論』の目次が出回っているので、以下に掲載したい。

 稲田氏と高市氏は、「日本亡国を進める”コリアン議員の巣窟”民主党に日本を任せられない」という特集の中に登場する。当時の与党である民主党を「コリアン議員の巣窟」などと呼称することは、在特会による「ヘイトスピーチ」と変わらない。

 高市氏と稲田氏は、「撃論」がどういう雑誌か知っていたはずだ。彼女らの日頃の極右的主張と響きあう雑誌だと判断し、取材依頼を快諾してインタビューに応じた。それは、彼女らのこれまでの極右的な政治・言論活動から考えて、少しも不自然ではない。したがって、その取材のあと、同行していた「ネオナチ」の男性とツーショット写真に収まったというのも、「不可抗力」どころか、彼女らの日頃からの思想・信条上の「必然」であったというべきだろう。

 差別的で、事実に反するタイトルの特集に、首をそろえて寄稿したことを、知らなかった、わからなかったではすまされない。取材を受けてインタビューが掲載されたり、自身が寄稿したりする場合、その媒体がどのような媒体か、バックナンバーはどんなものか、確かめないなどという迂闊な政治家や言論人など聞いたこともない。

 自民党の党の要職にある、稲田、高市、新藤氏らがそろいもそろってそんなに迂闊であるとしたら、それはそれで本人も事務所も含めて、政治家としての資質が疑われる。

従軍慰安婦は「合法」だった~国会議員だけでなく、弁護士としても失格の暴論

 稲田氏の「問題発言」「問題行動」は、今回の件だけではない。これ以前にも、IWJは取材の過程で、いくつもの稲田氏の矛盾した発言に行き当たってきた。掘り起こしてみると、ザクザクと出てくる。以下、順番に見ていこう。

 2013年5月13日に橋下徹大阪市長が「慰安婦は必要だった」と発言。この、ほとんど「妄想」に基づいたものとしか思えない暴言に対して、内外からは当然のように厳しい批判が寄せられた。

 当時、内閣府特命大臣だった稲田氏は、橋下発言に対して一応のところ批判的な立場をとり、「慰安婦制度は女性の人権に対する大変な侵害」との見解を示した。

 しかし、稲田氏のこの発言は、一貫性を欠いたものなのである。というのも、稲田氏は、2012年8月31日に産経新聞紙上で、「当時は、慰安婦は『合法だった』」と記しているからである。

 この点についてIWJは、2013年5月24日の定例会見の場で、「戦時中に慰安婦の強制連行はなかったかと認識しているか」と質問。稲田氏は、現在でも戦時中でも、慰安婦制度が人権侵害であると理解していることを重ねて強調。しかし、その直後に次のような驚くべき発言が続いた。

 「戦時中は、慰安婦制度が、悲しいことではあるけれども合法であったということも、また事実」

 IWJは、さらに2013年6月4日、稲田氏の定例会見で、この「合法」発言に関して追及。まず最初に、この発言は、戦前・戦中の公娼制度を念頭に置いたものであるのかを確認しようとした。

 しかし稲田氏は、これまでの会見で答えたことのほかには話すことはないとし、「申し上げることはありません」「会見の議事録を読んでください」「とにかく、これ以上お話することはありません」といった回答に終止。最終的にIWJの質問は、会見の事務方に遮られることとなった。

▲IWJ平山記者の質問に答える稲田朋美行革担当相

 このように稲田氏は、従軍慰安婦制度が「合法」だったとする一方で、具体的にどの法律に準拠したものであったかについての説明を一切しようとしない。稲田氏の念頭には、「公娼制度がかつては合法だった」という主張があるのかもしれない。

 しかし、当時の公娼制度を規制する「娼妓取締規則」に照らし合わせてみると、女性たちを強制的に売春行為に従事させることは、違法行為とみなされるのである。

 稲田氏は、国会議員であると同時に、弁護士でもある。まがりなりにも弁護士であれば、戦前・戦中の公娼制度と、従軍慰安婦との関係について、その法体系を知らないはずがない。おそらく、過去の日本の暗い歴史を修正するために、意図的に発言しているのだろう。仮に、もし万が一知らないということがあれば、議員バッジとともに、弁護士のバッジも外す必要があるだろう。

「立場が変わっただけ」!? TPPに関しても、一貫性のない稲田氏の爆笑答弁

 稲田氏の「問題発言」は、歴史認識に限ったことではない。

 稲田氏は自民党が野党だった当時、TPP交渉参加反対の急先鋒だった。

 2011年11月、野田佳彦前総理がAPECへ出発する直前、当時の与党・民主党は、TPP交渉参加をめぐって分裂状態に陥っていた。TPP参加の是非を検討する民主党経済連携PTでは、前のめりでTPP推進を主張する党執行部と、「TPPを慎重に考える会」前会長の山田正彦氏を中心とする反対派の間で、連日のように深夜に至るまで大激論が交わされた。

 この、マスコミをシャットアウトした密室で経済連携PTの模様は、メルマガ「IWJ特報!」でテキスト化しているので、ぜひ、ご一読いただきたい。TPPに関する論点が、この時点でほぼ出尽くしており、現在でも必読の内容である。

 さて、当の稲田氏が参加していたのは、自民党を含む野党の超党派の議員による議連である。この議連は、新党日本の田中康夫代表が音頭を取り、阿部知子衆議院議員(当時は社民党)、斎藤やすのり前衆議院議員(当時は民主党)などが参加して結成された。自民党から参加したのが、稲田氏、そして、安倍内閣で防衛大臣を務めた、小野寺五典衆議院議員だった。

▲TPP参加への反対を訴える稲田朋美氏

 この席上、稲田氏は次のように発言している。

 「普天間の外交上の失敗を、TPPでツケを払うというのは、売国的な暴論であると思っております」

 「普天間の外交上の失敗」とは、鳩山由紀夫政権による、普天間飛行場の県外移設のことを指していると思われる。これを「外交上の失敗」と断定するのは議論が分かれるところだと思うが、「TPPでツケを払うというのは、売国的な暴論である」とは、至極もっともな発言である。当時の稲田氏は、TPPを「売国的」と認識していたのである。

 実に素晴らしい。稲田氏は、国益とは何たるか、正確に理解した、「愛国的」な政治家ではないか。

 ところが、第2次安倍政権で入閣をはたした稲田氏は、この発言を一転させてしまう。2013年3月15日、安倍総理が会見で、TPP交渉への参加を正式に表明した。総理が参加表明をした以上、閣僚がそれに従わないわけにはいかない。この事態をうけ、5月15日の参議院予算委員会で、民主党の櫻井充参議院議員が、稲田氏の矛盾を突く、鋭い質問を行った。

 櫻井議員は、皮肉たっぷりに、「TPPに関して、稲田大臣はいつからお考えが変わられたのでしょうか」と質問。これに対する稲田氏の答弁が、以下のものである。

「考えは変わっておりません。状況が変わっただけでございます」

 予算委員会の模様を収録した動画を確認すると、議場が一瞬静まり返った後、爆笑に包まれていることが分かる。言うまでもなく、TPPという条約の内容そのものが変わったわけではない。変わった「状況」とは、ただ一点、自民党が野党から与党へと返り咲いたということ、そしてその安倍内閣で自身が大臣に抜擢され、「出世」した、ということだけである。閣僚のポストに就任するやいなや、これまでの主張をかなぐり捨て、安倍総理の言うがままにTPP推進派に変身した稲田氏の姿には、節操もなければ、恥もプライドもない。

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    【安倍「破憲」改造内閣の奇怪な正体(4)】「ゴスロリ」ファッションの中身は極右政治家! 安倍総理お気に入りの稲田朋美・新政調会長、その政治的背景 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/179120 … @iwakamiyasumi
    知りたくないけど、知らなくてはいけない事実がここにある。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/519412188117614592

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