【安倍「破憲」改造内閣の奇怪な正体(3)】大スキャンダル発覚! 世界中に拡散した”Zaitokukai”~ヘイトスピーチ集団との関係が浮上した国家公安委員長・山谷えり子氏に注がれる国際社会の厳しい視線

記事公開日:2014.10.7 テキスト
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(取材・記事:平山茂樹)

 「在特会(在日特権を許さない市民の会)」は、今や国連からも、米国務省からも、ヘイトスピーチ集団として特定され、名指しで非難されており、日本政府は、その差別的煽動活動の規制を要請されている。「Zaitokukai」という名称はそのまま海外のメディアで報じられ、悪名がとどろきわたるまでに至っている。

 その在特会の幹部と、あろうことか全国の警察官の頂点に立つ現職の国家公安委員長につながりがあった。これが事実ならば、空前のスキャンダルのはずである――

 「山谷先生の宿泊されているホテルへ押しかけ、少々遅い『夜明けのコーヒー』。諸々の事案を相談。いつものことながら、先生ハイテンション。あのエネルギーはどこから来るのか。『えりこ先生ホの字の会』(勝手応援団)の設立を検討中」。

 これは、2009年2月22日に、在特会の関西支部長だった男性が書き記した一節だ。現在は表示されなくなっているものの、この一文には、次の写真が添えられていた。

 写真中央に写っているのが、現在の国家公安委員長・山谷えり子氏。「えりこ先生ホの字の会」の設立を検討していたという男性は、そのすぐ右隣にいる。

 この男性の名前は、増木重夫氏。写真は、増木氏が在特会関西支部長だった(現在は解任)2009年2月、「竹島の日」にあわせて訪れた松江市のホテルで撮影された。増木氏は、『週刊文春』9月25日号の中で、「山谷先生とは教育問題を議論する団体の活動を通して20年来のお付き合いがありますねん」と証言している。

 9月3日に安倍改造内閣が発足し、山谷氏が国家公安委員長に就任すると、この写真がTwitterやFacebookといったSNSを介し、インターネット上で瞬く間に拡散された。

 高市早苗新総務相と稲田朋美新政調会長の「ネオナチ」団体代表とのツーショット写真の存在が、欧州のメディアを中心に取り上げられた直後というタイミングだったということもあり、ネットメディアだけでなく、既存大手メディアもこの問題を取り上げた。(朝日新聞 9月18日 山谷えり子氏が在特会元幹部と写真 09年、松江市で)

 この事態を受け、山谷氏と政府は火消しに躍起になった。

 山谷氏は9月18日の定例会見で、「在特会の人であることは知らなかった。国家公安委員長なので、面会の要否については慎重に対応していきたい」と釈明。世耕弘成内閣官房副長官も同じ18日、「本人も在特会の関係者と承知していなかったと言っているので、何ら問題ないと考えている」と話した。(朝日新聞、9月18日 山谷えり子氏「面会、慎重に」在特会元幹部と写真撮影)

 このように、山谷氏も政府も、在特会とのつながりについて、「知らなかったから問題ない」の一点張りである。これは、「ネオナチ」男性とのツーショット写真を「不可抗力だった」などと言って批判をかわそうとした高市総務相と同じ論法である。

▲高市早苗総務大臣

 だが、常識的に考えて、国会議員が、取材や面会を受ける際、相手の人物が何者で、どういう組織に属した人物か、その団体の性格を事前に把握しておかないなどということがあり得るだろうか。山谷氏と増木氏の関係の場合、たまたま記念写真を一緒に撮ってくれと頼まれて、撮影に応じた、というレベルではない。

 増木氏のブログによれば、「宿泊するホテル」で「夜明けのコーヒー」を飲みながら、「諸々の事案を相談」する仲である。「いつものことながら」という表現からも、面会が一度きりのものではなく、複数回におよんでいることは明らかだ。

 「在特会の人であると知らなかった」という弁明は、それ自体、虚偽である可能性が色濃い。その場しのぎの嘘で言いのがれようとしたなら、二重に罪は重い。国家公安委員長としては不適格である。

 万にひとつも考えにくいことだが、もし仮に山谷氏が言うように、「在特会の人であることは知らなかった」のだとしても、何度も会って相談した「諸々の事案」とは何か、説明責任をはたすべきである。「事案」の内容次第では、大臣の職を辞するべきである。ヘイトスピーチをまき散らすレイシスト集団・在特会は、一般の日本人が考えている以上に、国際社会から強い懸念を表明されている。山谷氏には、日本の国際的信頼を失墜させたことに対する、政治的責任がある。

国際社会が危険視するヘイトスピーチ集団”Zaitokukai”

 在特会のヘイトスピーチに対する国際社会の目は、極めて厳しいものがある。国連の人種差別撤廃委員会は8月29日、日本での在特会をはじめとする個人や団体によるヘイトスピーチに対して、「捜査を行い、必要な場合には起訴すべきだ」と勧告した。これに先立ち、国連人権委員会も7月、ヘイトスピーチの禁止を日本政府に勧告している。(毎日新聞、8月29日 ヘイトスピーチ:起訴含め刑事捜査を日本に勧告 国連委)

 安倍総理は、対米関係を重視し、常に米国との関係の強化を主張してやまない。その米国からも、ヘイトスピーチに対しては、強い懸念が表明されている。米国務省が2014年2月27日に発表した「2013年国別人権報告書―日本に関する部分」には、次のように記されている。

 「2013年、極右グループが、東京の在日韓国・朝鮮人が圧倒的に多く住む地域で一連のデモ行為を行った。このグループのメンバーが人種差別的な言葉を用いたことから、ヘイト・スピーチ(憎悪発言)として報道機関や政治家から非難された。6月17日、東京で『在日特権を許さない市民の会』とこれに反対するグループが衝突し、同会の会長および3人の活動家が逮捕された。一部の政府高官は、民族グループへの嫌がらせが差別を助長するとして公に非難し、国内のあらゆる人の権利を保護することを再度確認した」

 このように、米国務省は、在特会を名指しで批判しているのである。米国務省がその名前を出して厳しく批判している団体の幹部と写真を撮っていた山谷氏は、日本人や国際社会に対してはもちろんのこと、米国に対しても個別に説明する責任がある。山谷氏は、はたしてこうした説明責任をはたしたのだろうか。

 山谷氏と在特会の関係について、日本の大手主要メディアの報道は相変わらず腰が引けているが、逆に海外のメディアはこぞって大きく取り上げている。

 英紙インディペンデントは、在特会を”Zaitokukai”と表記し、山谷氏と増木氏の関係について以下のように報じた。

 “This month, a magazine published a 2009 photo of Ms Yamatani posing with Shigeo Masuki, former leader of Zaitokukai. Mr Masuki says he has known Ms Yamatani for 15 years. But at the Tokyo Foreign Correspondents’ Club, the Police Minister said she had “no memory” of where or how many times the two had met.”

 「今月発刊の雑誌に山谷氏が在特会の前代表と写っている写真が掲載された。増木氏は山谷氏とは15年来の付き合いだと述べた。一方、山谷氏は外国特派員協会での会見で増木氏との面会の場所や回数について『全く記憶がない』と答えた」

 他にもロイター通信が、インディペンデント紙と同様、”Zaitokukai”という表記を用い、英文でこの問題を報じている。

 “Shigeo Masuki, who appeared in the photo with Yamatani and on whose website it had been posted, told Reuters he had known her for more than 10 years through a mutual interest in education but had not told her that he belonged to Zaitokukai at the time of the photo. He said he had since left the group.”

 「山谷氏と一緒に写真に写り自身のウェブにその写真を掲載した増木重夫氏はロイターに、山谷氏とは共通の関心事項である教育を通して10年以上の知り合いであるが、写真撮影時点では自身が在特会に所属していることは山谷氏に話していなかったと述べた。その後同会には所属属していないと言う」

 このような海外メディアの厳しい視線が山谷氏に集中したのが、9月25日に行われた、外国特派員協会での会見である。山谷氏は、この会見の場で北朝鮮による拉致問題への対応についてアピールしようとしたが、外国人記者からの質問は在特会との関係に集中。山谷氏は、「いろいろな組織について、コメントをするというのは、適切ではない」などと答え、質問をはぐらかしつづけた。

 さらにこの日の会見では、まるで山谷氏が「在日特権」の存在を認めたかのようは発言があり、会場が一時騒然とするような場面もあった。

 TBSラジオの記者から「『在日特権』というのは、どういうものを指しているのか、教えていただきたいと思います」と問われた山谷氏は、次のように回答した。

 「在特会が言っている『在日特権』というのが、詳しくは何を示すのか。『在日特権』という定義というものは、それはいろいろなグループがいろいろなことをカギカッコで言っているのだと思いますが、法律やいろいろなルールに基づいて、特別な権利があるというのは、それそれで私が答えるべきではないと思います」

▲記者からの質問に答える山谷えり子氏

 「在日特権」など存在しない、と明確に否定すればよいはずであるのに、山谷氏はそう言い切ることなく、「私が答えるべきではない」とはぐらかした。これでは、「在日特権」の存在を暗黙のうちに認めているに等しいのではないか――。

 国家公安委員長という、現職の警察のトップが、ヘイトスピーチ団体と関係を持ち、さらに「在日特権」なるものの存在を否定せず、暗黙のうちに認める。これでは、警察のトップが、取り締まり対象となるべき在特会を後押ししているようなものである。山谷氏は思想的に在特会と大差ないのではないか。

 山谷氏をはじめとする安倍内閣の閣僚たちと在特会との関係は、今や国際的なニュースとなるほどのスキャンダルである。山谷氏は、「在日特権」についての認識も含め、説明責任をはたすべきである。万が一、在特会とつながりがあり、ヘイトスピーチや在日への差別に肩入れしているようなことがあれば、国家公安委員長の職を辞するべきだ。

山谷事務所にFAXを送付するも、いまだ返答はなし

 国内外に対し、極めて大きなスキャンダルをまき散らしている山谷氏。中国と韓国との首脳会談がいまだに開かれないなど、外交上の問題が山積している中において、山谷氏の存在が、日本の国益を損なっているということは、言うまでもないだろう。

 そこでIWJでは、山谷氏の事務所に、以下のような質問をFAXで送付した。

質問1
ヘイトスピーチに対しては、国連の人種差別撤廃委員会が法規制をするよう勧告をした他、米国の国務省も在特会を名指しで指名して懸念を表明するなど、国際社会から非常に厳しい視線が注がれています。このような国際社会からの評価について、政府の一員としてどのようにお考えでしょうか。

質問2
警察のトップである国家公安委員長として、在特会によるヘイトスピーチを取り締まる意志がおありなのかどうか、改めてご見解をお聞かせください。

質問3
山谷議員は、9月26日の日本外国特派員協会での記者会見で、「在特会が言っている、『在日特権』というのが、詳しくは何を示すのか。在日特権という定義というものはそれは、いろいろなグループがいろいろなことをカギカッコで言っているんだと思います」とご発言されています。これは、取りようによっては、山谷議員は「在日特権」が存在すると解釈されていると理解できます。議員は、「在日特権」が存在するとお考えなのでしょうか。改めて、ご見解をお聞かせください。

 この山谷事務所に電話をし、このFAXを送付したのが9月29日(月)である。その後、いっこうに返事がないので、10月7日(火)に電話で問い合わせたところ、「今回は遠慮したい」と回答を拒否されてしまった。外国特派員協会での記者からの追及にコリゴリして、沈黙を貫くことで逃げようとしているのだろうか。

 いずれにしろ、安倍改造内閣の正体が、「トンデモ」な極右の集まりであることが、この一件によって、世界中に拡散してしまったことは間違いない。

 「積極的平和主義」を掲げ、集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、国際紛争に自分から首を突っ込んでいくことを高らかに宣言した安倍総理。しかし、このような「トンデモ」内閣が、国際社会からまともに相手にされるだろうか。

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  1. @ichi3358さん(ツイッターのご意見) より:

    国家公安委員長・山谷えり子氏に注がれる国際社会の厳しい視線 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/179078 … @iwakamiyasumi
    「積極的平和主義」を掲げ、集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、国際紛争に自分から首を突っ込んでいくことを高らかに宣言した安倍総理。
    https://twitter.com/ichi3358/status/519604056830906368

  2. SOPHIA KATO より:

    驚きました!このような報道記事を日本語で読むのは初めてです。顧みれば、日本の記事の多くがカワイコちゃん風もしくはヒラメ風、つまり誰か何かに媚び追従している、また、それに対して週間金曜日などは媚びることはないが、この島に意識が限定されていて、このごとく英国紙の引用なども含め、世界的話題として日本のことを話す視座は、特異かつ重要かつ有効だとおもわれました。感謝。希望の光ひとすじさせり。

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