岡田外務大臣会見 2010.4.2

記事公開日:2010.4.2取材地: テキスト動画
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  • 外務大臣会見記録(平成22年4月2日(金曜日)15時15分~ 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)ハイチ支援国会合及びG8外相会合について

【岡田大臣】三点申し上げます。一点目は出張の件ですが、今回3月31日にニューヨークで開催されたハイ チ支援国会合に出席のため、ニューヨークにまいりましたが、そのことと加えてG8外相会談、そして米国のゲイツ長官とのバイの会談、クリントン米国務長官 とのバイの会談などを行ってまいりました。

 先ず、ハイチ支援国会合ですが、全体で59の国や国際機関から53億米ドルの支援表明が行われたということで、非常に良い会合だったと思います。私(大 臣)からは仮設住宅の建設、感染症対策などを含む、プラス3000万ドル、総額1億ドルの支援を行うことを表明したところです。どこかの新聞が書いており ましたが、クリントンご夫妻の姿が非常に目立っていた会合で、どちらかが挨拶の中で言っておりましたが、「新婚旅行はハイチに行った」ということもあっ て、大変思い入れが深いということだったようで、非常に力を入れて会議の主催をしておられたと思います。

 G8外相会談は、ニューヨークで夜に食事を取りながらということを(昨年)9月にいたしましたが、それに続いて今回1日半かけて様々な課題を議論すると いうことでありました。議長声明、或いは外相会談の結果はもう既に紙になっておりますのでご覧いただいていると思いますが、どちらかというと少人数で自由 に議論しようと、これはカナダ政府の方針もあったと思いますが、G8+EUですから、代表者は9人いる訳ですが、それに一人づつ付いて、日本の場合ですと 佐々江外務審議官が付いて、全体18人で一つの机を囲んで議論をするということです。もちろん発言できるのはその内の代表者9人だけです。それぞれ外務大 臣(の経験)が長い方もいらっしゃって、それぞれの経験に基づいて非常に興味深い意見のやりとりがありました。フランスのクシュネール外相などは、やはり 国境なき医師団の創設者の一人ですから、その時の経験の方がむしろ饒舌になって話しておられたと思います。その中で私(大臣)からは核の問題で「『核なき 世界』と言うために一歩踏み出す」、そういう表現をなんとか文書の中に盛り込めないかと、もう一つは「核の役割を低減する」ということを盛り込めないかと いうことで、これは実務的にも徹夜のような状態で交渉してもらった訳ですが、なかなか難しいということで、私(大臣)が改めて提起をして、全体で写真撮影 の前後合わせて60分くらい議論をいたしました。私(大臣)も5回か6回発言しましたが、最終的にはコンセンサス方式ということで、フランスの強い反対が あり、それに他のEUの国々も最終的には荷担したということで、残念ながら今回は文書化はされなかったということです。ただ、非常に良い話し合いができま したので、核の軍縮の問題、不拡散の問題、特に今回は軍縮の問題ですが、引き続いて、こういったG8外相会合などの場で話し合いをしていけば、次第に議論 が深まっていくのではないかと思います。

 クシュネール仏外相には、この会議が終わった後、立ち話で「フランスの核政策についてよく勉強してウィークポイントもよく探し出して、次回は必ず論破す るからな」と言っておきましたが、それぞれの国は核について、核を持っている国は論理と思い入れがありますから、そういったこともしっかり把握をしなが ら、更に議論を深めていきたいと思っております。

 バイの会談はそれぞれ行いましたが、特に米国の関係でゲイツ長官と40分くらい意見交換を行いました。非常ににこやかに会談が行われました。中身は既に ブリーフを行っておりますので、繰り返すことはいたしませんが、これからよく話し合っていこうということになりました。「また近々お会いしたいですね」と ゲイツ長官が言われるので、私(大臣)が「6月が良い」と言いましたら、ゲイツ長官は「シンガポールで会うのか」と、シンガポールで防衛大臣会議を毎年 やっていて、それだと思っていたので「いや、そうではなくて、5月末の後だ」と申しまして「そうか」ということで、「5月末に普天間問題をきちんと解決し た上で6月にお会いしたい」というように申し上げておきました。もちろん、それまでにお会いすることもあるかもしれません。クリントン米国務長官とは、会 議が始まる直前でしたので25分くらいですか、この普天間の問題もやりましたが、特にイランの問題、それからミャンマーの問題を中心に意見交換を行いまし た。なお、ジョーンズ補佐官とは、ジョーンズ補佐官がアフガニスタンに大統領とともに行かれたということで、ワシントンでほぼすれ違いのような状態になり ましたので、改めてカナダで1時間程かけて、電話で会談をいたしました。会談の中身は普天間の問題も若干触れましたがが、ほとんどはイランの問題というこ とでありました。何れにしても、有意義な意見交換が行われたと考えております。

米軍再編問題

【毎日新聞 野口記者】普天間飛行場の移設問題についてです。ゲイツ長官との会談の後、大臣は記者団に対 して、現行計画については非常に難しいということを述べておりました。これまで大臣は、現行計画については、ゼロベースなので現行計画も検討の対象になる という趣旨の発言をしておりましたが、ゼロベースだったものが現行計画が難しいという認識に至った変化について教えて頂けないでしょうか。

【大臣】あなたの書かれた記事も読みましたが、私(大臣)は、考え方は全く変えておりません。従来からゼロベースで、つまり検討対象に入っていると いうことを申し上げて参りましたが、検討対象に入っているということと、しかしそこに困難さがあるということです。我々が今考えている案と比べて、より困 難さがあるということは首尾一貫している訳ですから、何か意見が変わったということは全くありません。

【共同通信 西野記者】日本側が考えている方が、日米で合意した現行計画よりも実現可能性が高いということでしたが、鳩山総理も国会の中で「腹案」 と称されて実現可能性が高いということでお話になっています。大臣がルース駐日米大使にお示しになった日本の考え方というのと、総理が腹案というように 仰ったものは、大体同じものだと考えてよろしいのでしょうか。

【大臣】大体ではなくて同じです。

【共同通信 西野記者】全く同じものだと。

【大臣】はい。

【時事通信 高橋記者】ゲイツ国防長官との会談についてお伺いします。会談の後にペンタゴンが声明を出しまして、その会談の中身でゲイツ長官の発言 の一端を紹介しておりまして、沖縄海兵隊という在沖海兵隊の重要性、その海兵隊が運用面でもオペレーションの上でも、政治的にも、「ポリティカリー」と書 いていましたけれども、その両面で持続可能になるように日本政府はしっかりと力を尽くしてほしいというようなことをゲイツ長官は発言したと、公式に発表し たペンタゴンの声明の中で書いております。

  それから、日本政府のブリーフでは、運用面、政治面というような発言は我々には紹介はなかったのですけれども、なぜこの紹介はなかったかという点と、この発言に対して大臣の方からどのように反論といいますか、御主張をなさったのかということをお聞きしたいと思います。

【大臣】会談の中身をどこまでお話しするかというのはそれぞれの判断ですので、日本側から細かくは言っていないと理解いたしますが、ゲイツ長官は、運用面で抑止力を維持したままそれができるのかという意味で、当たり前のことを仰っていたと私(大臣)は理解しております。

 もう一つは、政治面というのが地元の問題です。あと、日本の政治状況ということで仰ったのですが、私(大臣)からは、「それは日本政府が責任を持ってや る話なので、任せてもらいたい。政治状況まで御指摘いただかなくても、それは日本政府の中できちんとやります」と申し上げておきました。

【朝日新聞 鵜飼記者】今のお話に関連して、地元の理解とか了解を得るという作業ですけれども、これを今後どのように進められていくのでしょうか。 今回、ルース駐日大使への説明を皮切りに米国に説明をされて、これから対米交渉というのも始まっていくのかと思いますけれども、それは並行して進んでいく のか、地元の方が先行して進んでいくのか、そういったタイムラインを少し御紹介いただけますでしょうか。

【大臣】どういう順番でどうやるかという話については、私(大臣)からこの場で申し上げることは控えたいと思います。しかし、最終的な姿としては地元の理解を得、そして米国と合意する中で初めて移転ということが可能になるということであります。

【時事通信 水島記者】今後の取り運びも含めてですけれども、本日の官房長官の午前の会見では、ちょうど岡田大臣も帰国されたので関係閣僚による関 係閣僚会議というのでしょうか、本日中にもやる方向でやらなければいけないようなということを仰っておりますが、本日中にそのような機会を持たれるので しょうか。

【大臣】それは官邸がお決めになることですけれども、官房長官がそう仰るのであればそういうことだと思います。

【NHK 禰津記者】大臣が訪米されているので、一方で北澤防衛大臣は沖縄の方に行かれまして、地元に説明を行っていますけれども、今後、北澤大臣や防衛省側とも今回の成果というものはどのように共有していって、どのように話し合っていくおつもりなんでしょうか。

【大臣】大臣間の連携は十分に情報交換を密に行っておりますので、「どのように」と言われても「いつものように」と言うしかないと思います。

【ニコニコ動画 七尾記者】海外同行取材をさせていただき、ありがとうございました。少し話が前後するかもしれないのですけれども、G8外相会合の 共同記者会見の後、クリントン米国務長官が普天間基地の移設問題につきまして、「我々はなお現行案が望ましいと考えている」と語りましたが、その一方で、 「日本政府から提案があれば考慮する用意がある」とも仰いました。この発言について、現地で大臣は、「解釈はいろいろできるから分からない」と仰ったので すけれども、時間を置きまして、今、改めて思い起こしてみて、クリントン国務長官の発言の真意についての解釈のほどはいかがでしょうか。

【大臣】長官の真意がここにあるなど、私(大臣)が言わない方がいいと思います。別に新しいことを言われたわけではなくて、現行案は最善であるとい うのは米国が一貫して言ってきていることです。しかし、では現行案でなければならないのかというと、それは聞く耳は持つということを仰いました。それは聞 く耳を持つからこそ、ゲイツ米国防長官に我々の考え方というのを先週説明を行ったわけであります。

【共同通信 西野記者】クリントン国務長官、ゲイツ国防長官とお話をされたということで、今後は実務レベルでやっていくことになると思うのですけれども、その見通しのようなものというのは、今のところどうなっているのでしょうか。

【大臣】それは一生懸命やるしかないと思います。

【共同通信 西野記者】局長クラスでやるのでしょうか。それとももうちょっと下のクラスでやるのでしょうか。

【大臣】それは特に申し上げる必要はないのではないかと思います

【フリーランス 岩上氏】政府案、或いは腹案と言われるものが、もう既に決まっていらっしゃるんだろうとは思いますが、それについてはお尋ねいたし ません。それとはまた別に、ホワイトビーチ案というものが浮上しているということが取りざたされておりますが、ホワイトビーチ案というものは、沖縄県民の 理解を得られるプランになるとお考えでしょうか。今、沖縄県民はその県外移転というものを非常に強く希望していると伺っておりますけれども、確かに島の陸 上部からは基地がなくなって、海上に行くということになるのでしょうが、これはいかがなものでしょうか。大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

【大臣】今の御質問は、特にコメントいたしません。

【読売新聞 川崎記者】日米合意の現行案について、非常に困難であるということを今回の会談でも大臣は仰られたと思いますが、それでは現時点で現行 案というのは、なお選択肢に含まれるという認識は、大臣はまだ変わらないのかどうか。現行案はもうないということなのかどうか。大臣が仰るゼロベースの中 には、現行案はなおまだ含まれているのかどうかについて、改めてお聞きします。

【大臣】先ほどお答えしたと思いますが、私は従来からゼロベースということを言っております。そこは変わっておりません。総体的に、今、政府案とし て考えているものと比べれば、困難さがあるということですが、総体的に困難さがあるということと、(現行案が)なくなったということは、全く次元の違う話 であります。

G8外相会合

【フリーランス 岩上氏】今、冒頭で大臣がお話頂いた点に関して、2点。同行の記者団にはブリーフィング 等をされたと思いますが、以前もありましたが、ネットメディア等があります。大臣の口から直接、国民に向こうでの模様をできるだけ詳細に語っていただきた い。一点は、核政策を巡って、特にフランス側と非常に強くやりやったという内容について、できればもう少し詳細にお語り頂きたいということと、それから、 今のゲイツ米国防長官との会談は、「ブリーフィングをしたということで割愛します」ということを先ほど仰られましたが、この内容について、繰り返しになる かもしれませんが、ダイレクトに国民に語っていただきたいと思います。

【大臣】核政策につきましては、先ほど言いました「核なき世界を目指す」ということと、それから「核の役割を低減する」ということです。いずれも、 オバマ大統領のプラハ演説に出てくる話でありますが、そういった表現を成果物に盛り込むべきだということを申し上げました。それに対して、特にフランスの クシュネール外相からは、フランスの政策、自らは核の縮減ということは自発的にやってきているということですが、しかし、核の役割を低減するというのは、 そういう考え方にはフランスは立っていないということです。例えば、核の役割を低減するということで、まず思い浮かぶのは、核を持っていない国に対する核 使用をしないという「核の消極的安全保証」ですが、フランスは必ずしもそういう考え方に立っていない。通常兵器の攻撃に対しても自国の安全を確保するため には、核を使うということを排除していないということで、私(大臣)が言った「核の役割を低減する」という考え方とは相容れないということでありました。 これは、外務大臣レベルで対応できることではなくて、国の大きな政策であるということで、絶対譲れないということです。昨年のG8サミットでの表現を基本 的に踏襲してもらいたいということでありました。私(大臣)からは「この1年があったのだから、前進を示すべきだ」ということで、途中からは「議長声明で もいいから残してもらいたい」ということを申し上げましたが、フランスは非常に固いということでした。あと、どこの国が何を言ったかというのは、あまり言 うべきではないと思いますが、私(大臣)の立場に立って、発言をしてくれた国もありましたが、やはりEUの中の協力と言いますか、最後はそういうことで す。それから、コンセンサスの取れてないものは書かないということでありますので、一人でも強硬に反対するということになると、それは書かないということ で今回は盛り込まれなかったということであります。ロシアも核の先制使用ということを否定しておりませんので、ロシアも賛成できないということでありま す。今回、ひとつは、そういう核の先制使用ということ、或いは核を持っていない国に対する核の使用ということを、必ずしも否定していない核保有国があると いうことですから、「消極的安全保証」ということを、より実効性を高めるためには、核を持っている国は皆そのことを認めないと、例えば安保理でそれを決議 するとか、そういうところまで行かないと単なる宣言で終わってしまう訳ですが、一つ一つそれぞれの国ときちんと議論していかないといけないということを改 めて感じました。もう一つは、G8サミットというのは、核を持っている国と持っていない国がそれぞれいて、非常にユニークな構造になっておりますが、こう いうところでしっかり議論していくことが全体の核軍縮を進める上で非常に有用ではないかと改めてそのことを感じた次第であります。これ以上やると、新たに 来た日本の外務大臣は変人ではないかと思われてもいけませんので、全体の1日半の議論の中で1時間というのは相当な時間ですので、他にお互い激論になった という点もありませんでしたので、私(大臣)も途中で断念をしたということであります。

 それから、ゲイツ国防長官との話というのは、多分、紙は出ているのではないかと思うのですが、あまり具体的な中身を言うべきではないとい思ますけれど も、私(大臣)からは日本の考え方ということは、具体的には説明しておりません。これはクリントン国務長官に対してもそうです。それはルース駐日大使に説 明したということで、中身の説明までは今回しないという方針で私(大臣)は挑みました。ただ、ゲイツ国防長官からは、実行可能性ということについて、若干 の質問があったり、それから、会話の中で私(大臣)の方から、日米合意案が一番いいというのが米国政府の考え方だというのはよく分かっているけれども、し かし、実際に実現可能性ということを考えると、我々が提案した考え方の方が、より実現可能性が高いと考えているので、真剣に検討してもらいたいということ を申し上げたところであります。

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