2014年7月31日18時30分から、東京電力で「中長期ロードマップの進捗状況に関する記者会見」が開かれた。12月にALPS本格運転開始の見通しの他、4号機SFPにある変形燃料の輸送、地下水バイパスの運用効果、建屋地下水流入抑制対策といったトピックスを発表した。
2014年7月31日18時30分から、東京電力で「中長期ロードマップの進捗状況に関する記者会見」が開かれた。12月にALPS本格運転開始の見通しの他、4号機SFPにある変形燃料の輸送、地下水バイパスの運用効果、建屋地下水流入抑制対策といったトピックスを発表した。
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2014年12月を目途に多核種除去設備ALPSを、本格運転に移行させることが発表された。また、製造が進められている増設ALPS、高性能ALPSについても、12月末から2015年1月を目途に本格運転に入ることを予定している。
多核種除去設備ALPSは、クロスフローフィルターの腐食など不具合があったが、対策を終えたという。また、除去能力が不足している核種が4種類ある。これら核種に対して、「もう一度、ALPSに通す。高濃度を下げることが最優先。残った核種はその後の実施だ」と増田尚宏氏は先に進む考えを示した。
これらの経験、対策は、今建設中の増設ALPS、高性能ALPSにも反映される。
ALPS本格運転がここまで遅れたことについて、増田尚宏氏は「ホッとした、機能としては心配していないが、運用のトラブルが大きくなる前に気付けた」と話し、汚染水対策の遅れについて、「通常の原発技術が使えないことをしっかり認識しないといけない。ALPSが止まって遅れたことより、しっかり運転することが大事だと」と感想を述べた。
4号機SFP(使用済燃料プール)には、震災時に燃料集合体1,535体(使用済1,331体,新燃料204体)が収められていた。それらを共用プールへ移送する作業が進められている。また、乾式キャスクの調達の遅れから、新燃料は6号機SFPへも移送することがすでに公表されている。
4号機SFPには、変形した燃料集合体が1体あることがわかっている。1982年の燃料取扱時の誤操作により変形したもので、ニューシア(原子力施設情報公開ライブラリー)に公開されている(報告書番号1982-東京-T003)。また、震災前から漏洩のある燃料集合体が2体保管されている。
変形燃料は、変形燃料輸送用のキャスクNFT-12Bを用いて移送する。燃料集合体を入れる一つの区切りが大きくなっていて、曲がった燃料集合体を入れることができる。このキャスクの安全評価を新たに実施した結果、実施計画の変更認可申請を別途行う予定だという。
変形燃料用キャスクNFT-12Bには、12体の燃料集合体が収容可能。東電は2基を保有している。NFT-12Bによる変形燃料の移送実績について、白井功氏は「運んだことはない。他電力では運んだ実績があるとは聞いている」と答えた。
HIT(高温焼却炉設備建屋)の地下に止水工事を行った。地下水の流入を抑制する効果が確認され、その状況について発表した。
東電は、止水工事前は1日に405トンの地下水が流入していたが、止水工事の結果359トンに減り、1日50トンの流入抑制効果があると評価した。
地下水バイパスの運用効果について、東電は「建屋の方に徐々に効果が出てきてると思ってる」と評価している。引き続き注意しながら抜いていくが、後どれぐらいではっきりとした効果が出てくるのだろうか?
増田尚宏氏は、「建屋への流入量でなく効果の見え方がどういう風に出てくるかは分からないが、3、4ヶ月位で出てくると思う」と述べている。運用開始からなので、「今からあと1~2ヶ月で見えるとみている」ということだ。
当初の計画通りに凍結せず、原子力規制委員会からも厳しい指摘を受けている”2号機海水配管トレンチの凍結止水”は、凍結の補助をして試験的に氷やドライアイスを投入していた。昨日から本格的に氷を投入し、24日から凍結管も増設する計画が発表された。氷は1日あたり15トン入れる計画になっている。
8月17~18日に凍ると想定していることに対して増田尚宏氏は、「解析上はそうなっている。解析と違うものがあれば、凍結管の増加なとで解析にあわせていく。なんとか9月の末までに凍らせて、汚染水抜きたい」と述べた。
1号機建屋カバー解体工事は、まだクレーンが壊れているため開始していない。増田尚宏氏は「直っても地元に説明してから」行うと答えた。
1号機建屋カバーの情報公開は、作業内容が分かる形で、現場の状況をウェブカメラで、ということも考えているとしたが、「我々としては(ダストモニタ、モニタリングポスト等の)正しい数値をお伝えするだけ」という認識だ。
作業員の被曝線量を下げるためにタングステンベストの着用が考えられているが、その効果を疑問視する声が上がっている。タングステンベストそのものが4kg以上と重いため、「重いものを着けて長時間、着けないで短時間か」という選択が迫られる。
増田尚宏氏は「作業にもよる。動く作業だと大変だと思う。個々の作業の形態による。じっとしてる作業なら良い」とコメント。
遮蔽の効果を数字を出すよう、原子力規制委員会から意見が出ているが、増田尚宏氏は「しっかりと確認していきたい」と答えるにとどまった。
作業時の被曝により、被曝線量限度を超えたベテラン作業員が現場で作業できずに減少、ニューカマーが増えていること等から、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、年間20mSvを上げなければいけないと発言している。「これを見直す必要性があると考えているか」と記者が質問した。
増田尚宏氏は、「現場に行けないでイライラしている面があるが、線量限度を変えないといけないというところまではいっていない」としながらも、「世界標準を見ながら検討していただければありがたい」と答えた。
現状については、「数字を変えないと作業員がいないというところまでは聞いていない。今は下請けが、しっかり作業員を確保してくれていると思っている」と希望的感想を述べている。
元経営陣が起訴相当とされたことについて、広報担当者は「多くの方々にご迷惑をかけて心からお詫びを申し上げる。検察に対して出されたものであり、当社としてのコメントは控える。要請があれば捜査に協力したい」と答えた。
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以下、東京電力ホームページより、リンクを表示
「中長期ロードマップの進捗状況」に関する会見開催(7月31日)のご案内について
2014年7月31日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第8回事務局会議)