岡田外相オープン記者会見1 「日米安保ではなく、日米同盟のあり方について、クリントン長官と会談します」 2010.1.8

記事公開日:2010.1.8取材地: テキスト動画
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 2010年1月8日(金)、岡田外務大臣オープン記者会見の模様。冒頭、今回より記者会見のオープン化の拡大が報告された。「日米同盟」と「日米安保」の違いという岩上氏の質問に対し、日米の安全保障に関わる関係は「日米安全保障条約」「日米安全保障同盟」「日米同盟」の三つがあると答え、それぞれに対する解釈を述べた。また、日米安保改訂50周年という節目の年に「同盟」のあり方について議論する機会があればと語った。 

 1月8日金曜日。2010年最初の岡田外相のオープン記者会見が行われた。岡田外相は休養がとれたせいなのか、血色よく、記者の活発な質問にもずっと応じ続けて、会見時間はこれまでで最長の54分にもおよんだ。

 この日は記者会見のオープン化の拡大が発表され、日本雑誌協会に加盟していなかった雑誌、たとえば『週刊金曜日』誌などが参加を認められ、出席していた。

司会「大臣の記者会見を行います。よろしくお願いします」

岡田「今年初めてでしたっけ? あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。私から何点か。

 まず第一点は、この記者会見のオープン化について、お話ししたいと思います。記者会見をオープン化してから、ほぼ3ヵ月ということで、この会見も非常に定着してきたかというふうに思いますが、その間、色々ご要望もいただきましたので、さらにその参加対象を拡大することにいたしました。そのことによって国民の皆さんへの説明責任をいっそう果たせるのではないかというふうに考えております。

 内容といたしましては、まず第一に、今までに加えて、日本専門新聞協会会員、地方新聞協会会員に会見を開放いたします。

 第二に、すでに改訂をいたしました、大臣会見等に関する基本的な方針についてで掲げられている『協会に加盟していなくとも、発行する媒体・目的・内容・実績等に照らし』、それに1から7のいずれか、今までの基準のいずれかに準ずると認めうるものについても会見を開放するということにしたいと考えております。

 席上、資料も配付をさせていただきましたが、そういったことでこの会見の対象を広げたいというふうにいたしましたので、まず、御連絡申し上げたいと思います。
(後略)」

 私の、一度目の質問機会は、早々にやってきた。

岩上「フリーランスの岩上です。よろしくお願いいたします。

 いま、オープン化についてお話がありました。この点について確認させていただきたいと思うのですが、もともとの条件、2のですね、9項目あります。

 この法人を前提にせず、個人、もしくはフリーランス、あるいはノンフィクションライター、ノンフィクション作家といった個人に関してですけれども、特定の媒体に定期的に記事を書いているという状況ではなくて、たとえば大御所になられた方だと、単行本をお書きになっていたりしましてですね、そういう書籍の執筆している方、たとえば外交問題について書いている方というのは、実はこの項目からは完全に脱落しているような状態で、雑協(日本雑誌協会)は書いてあるんですけれども、そのへんのくくりがですね、あいまいになっているかなというふうに思います。

 この点について、大臣の方向、見解をお教えいただきたいと思います」

岡田「まず記者会見に出てきていただく方は、この記者会見の結果を国民に広く知らしめるという基本的な役割を持った方というのが基本的考え方だというふうに思います。そういうことはしないけれど本を書くんだという方は、もちろん本という媒体を通じて国民に知らしめることになるかもしれませんが、これは日々の様々な情報について国民に知っていただくための会見でありますので、ちょっと私は性格が違うような気がいたします。

 そこまで広げたときに、たぶんここにも入り切らなくなると思いますし、本を書いたことがあるというだけなら、たくさんの方がいらっしゃいますので、そこまで広げることについては、ちょっと私はそう簡単に考える話ではないのではないかなというふうに思っております」

 この岡田外相の回答は、どうしても不満が残る。フリーランスのジャーナリストが大きなテーマに取り組んで単行本を執筆していれば、数ヶ月かかりきりになることもしばしばである。この参加条件では、「過去6カ月以内に出版物等に寄稿した人」となっているが、直近で6カ月以内には、発表していないこともありえる。「6カ月」という条件を緩和して、それ以前の実績もふまえた上で、もう少し単行本のノンフィクション、評論などの作品を執筆しているノンフィクション作家や評論家にも、機会を与えてもらいたい。法人が中心になりすぎである。個人、フリーランスに対する軽視を改め、参加条件の緩和を再考してもらいたいと思う。

 オープン化拡大関連では、他にこんな質問も出た。

「マガジンXの島田と申します。

 会見の基本的な方針なんですけれども、2の(8)の『発行する媒体の目的、内容、業績等に照らし、(1)から(7)のいずれかに準ずると認めうる者』という、これはちょっと曖昧でよくわからないんですけれども、たとえば、どういうものが入るのでしょうか? 雑誌とか出版物に一回も出していない、毎日書いているブロガーとかもこれに入るのかどうかということをおうかがいできればと思います」

岡田「ブロガーをここに含めるというふうには必ずしも思っておりません。ただ、上記の協会には入っていないけれども、出版物として、確立した、準ずるような実績のあるということで、『週刊金曜日』さんなどは、その、ひとつの具体例だと思っております」

 30分過ぎに、私の、2度目の質問の機会がきたので「日米安保」と「日米同盟」の違いについて、たずねた。

 これには、実は布石があった。岡田外相は近々、訪米してクリントン国務長官と会談し、普天間問題だけではなく、日米同盟のあり方全般について話し合う予定だという。他の記者がこれに関連して、「日米安保」と「同盟」の区別に注意を払わずに質問していたら、岡田外相自身が、「日米安保ではなくて、日米同盟ですね。私は安保とは言っていない。同盟という言葉を使ったはずです」と、釘を刺したのである。そうであれば、なおさら明確にその違いを岡田外相自身に定義してもらわなくてはならないだろう。

岩上「フリーランスの岩上です。お願いします。

 日米安保と、日米同盟を峻別して外務大臣がお話になっておられますけれども、多くの国民は、この二つの概念の違いが、よくわからないままになっているかもしれないなと思っております。

 私もよくわからなくて勉強をしているところなんですけれども、『日米同盟の正体』という本を書かれた孫崎享(まごさき・うける)という方がおります。

 元外務相国際情報局長の方ですが、その方が、一民間人だったらどうってことはないんですけれども、この方が、鳩山総理の私的勉強会のリーダーを務められていて、先日、普天間の基地の移設先を長崎県の大村の方にしたらどうかというようなことも提案されたりするような、内閣に影響を与えられるような方、この方が、『安保』と『同盟』の違いという定義は、同盟は05年に日米間で締結された文書に基づく概念であって、『安保』と『同盟』の最大の違いは、対象領域が、『安保』は日本及び極東を守るという話なんだけれども、『同盟』は、世界中にアメリカが国際戦略を展開していく、その時に、それに日本が追随してですね、日本が協力をするというもので、『日米安保』の本来の姿からずいぶん、実は変質してしまっているということをおっしゃってます。

 ちょっと長い質問になって大変恐縮なんですけれども、一般の国民にもわかるようにですね、この『同盟』と『安保』の違い、それについての大臣のご見解をですね、お示しいただきたいと思います」

岡田「まず、その前に孫崎さんは、鳩山総理が総理になる前の勉強会の責任者を務めておられた。その結果がまとまったので報告に来られたというふうに私は理解をしております。従って、総理になってから、議論をしたということではなくて、その前からの議論の結果だということであります。

 それから、今のお話で私は三つに分けて考えた方がいいというふうに基本的には思っています。

 ひとつは日米安保条約、もうひとつは日米安全保障同盟、もうひとつはより広い日米同盟。こういうふうに考えておりまして、日米安保条約はおっしゃるように、日米安保条約に基づく範囲というのは日本自身、及び極東でありますので、まさしくあの条約に書いたような、範囲のことに関する安全保障面での条約というのがコアであります。実は条約上はもうちょっと幅広くなっているんですけれども、より狭く言えばそういうことであります。

 日米安全保障面での同盟というのは、安全保障面における日米関係と言うことで、それは安保条約を超えてですね、たとえば、日本の基地を使う米軍が、極東や日本自身のためだけでなくて、よりアジア太平洋とか、より幅広い範囲で活動してるわけですから、そういう意味ではですね、より幅広いということが言えるかと思います。

 日米同盟という言い方になりますと、これは安全保障だけではなくて、より政治面でありますとか、あるいはもっと幅広く言えば文化面とか、様々な面での関係を指す言葉だというふうに私は理解をしておりますので、そういう意味で、地理的に言うと日米安保条約と、それから日米安保ということで広がると。それから同盟という言葉というと、安全保障だけではなくて他の分野にも広がると、そういうふうに私は理解をしているところです」

岩上「すいません、関連して、よろしいですか?

 すいません、関連して質問を続けさせてください、岩上です。

 そうしますと、その三つの概念のうちですね、日米安保条約が50年前に締結された条約であることは明白だと思います。

 二番目の安全保障同盟と、それから三番目の日米同盟、これについては、それの基礎となる合意文書とか、条約というのは、該当するのはどこを指すことになるんでしょうか」

岡田「それは明示的な文書がある場合もあるし、ない場合もあるというふうに思います。

 日米安保条約も、範囲は日本自身及び極東の平和と安全、安定ということでありますけれども、そのための基地を他の目的に使ってはいけないとは書いてないわけですから、そういう意味で、それはより広い範囲で使われているということであります。

 そういったことを、明示的に認めたものとしては、たとえば1997年ですか、6年ですか、橋本-クリントン日米安保の再定義(『日米安全保障共同宣言-21世紀に向けての同盟-』1996年4月17日)などがそういう文章にあたるというふうに考えております」

岩上「二番目ですか?」

岡田「二番目であり、そういう意味では安全保障だけではなくてもう少し幅広く言ってますから、三番目であるというふうにも言えるかもしれません。

 今回議論すべきは、そういった幅広い意味での日米同盟というものについてですね、もし機会があればですね、日米安保改訂50周年というひとつの節目の年にですね、議論してはどうかというふうに思っております」

岩上「ありがとうございました」
(続く)

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