亀井大臣オープン記者会見3 「警察であれ、検察であれ、適正捜査を常にやらなきゃいかん」 2010.1.15

記事公開日:2010.1.15取材地: テキスト動画独自
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 2010年1月15日(金)、亀井金融・郵政改革担当大臣のオープン記者会見の模様。岩上安身の、石川議員の政治資金収支報告書の不実記載問題に関連して小沢幹事長とその周辺に対し東京地検特捜部の強制捜査が行われている件についての質問に答えた。

前回からのエントリーの続き。

 1月15日、民主党の小沢幹事長周辺に東京地検の強制捜査が行われた。その翌々日の15日金曜日という緊迫した状況下での、亀井大臣のオープン記者会見。

 冒頭、新井将敬氏の自死をめぐるエピソードを語った亀井大臣に対して、私が質問する機会が回ってきた――。

■全編動画

岩上「フリーの岩上です。よろしくお願いします。
 元警察官僚としての亀井先生に是非、ご見解をおうかがいしたいですけれども、この数日、小沢さん、その周辺に対するですね、東京地検特捜部の強制捜査が行われおりますけれども、(小沢氏自身に対する)被疑事実を明確にせず、被疑者もはっきりしないまま、石川議員の政治資金収支報告書の不実記載という非常に軽微な形式犯の被疑事実だけをもって、ほぼ別件と思われるような捜査の仕方をですね、ガサ(※強制捜査のこと)を入れております。

 かなり強硬なやり方であって、それに対して一般のマスメディアも、一律に検察リークの報道をほぼ垂れ流しているような状態で、一色に染まっているという。こういう状態は、検察とマスコミ一体化による一種の人権侵害であり、冤罪の可能性の問題や何かを全く考えない、かなり強引なやり方ではないかと思われます。

 小沢さんという方を支持するということとは全く関係なく、一個人に対する人権侵害ではないかと思うんですけれども、この点、先生はどういう風にご覧になってらっしゃるか、教えていただきたい」

亀井「私はね、かつての捜査二課長としてもね、いわゆる知能犯とか、贈収賄関係とか、反吐が出るほどやりすぎちゃったんだけどね。やはり適正捜査というのは、常にやらなきやいかん。デュー・プロセス(due process of law:法に基づく適正手続)ね。手続きの正当化」

岩上「はい」

亀井「私は、警察であれ、検察であれ、それは常に考えながらやっていかなきゃいかんと思いますよ。だから検察も検事総長がね、そういう一つの、このチェックする機関もあるわけですから、そういう事の中で、私は、そういう判断をしながらね、進んでくれるだろうと、進んでもらわなきゃいかんと思いますね。

 ただ、今この具体的なことについてね、『どうだ、こうだ』というようなことを私の口からね、これは言うべきでもないし、今の時点で『けしからん』と、私が言うべきことでもないしね。それ以上のことは言えないと。やはり適正な捜査をせにゃいけません。さっき新井将敬の話したでしょ?」

岩上「はい、はい」

亀井「任意捜査の過程の相手の日興證券の常務がね、供述がどんどん変わってきたの。私は大学ノートで調べられた中身を毎日、新井将敬に対する話をしているのを見せてもらった。ぐるぐる(供述が)変わって来てね。最終的に新井将敬が犯罪者になっちゃった。最初と全然違う。大学ノートに書いてあるんですよ。その捜査の中で新井将敬が泣きじゃくって訴えたんだけれどもね、検察というものはね、ある面では喧嘩だよね」

岩上「ありがとうございます」

田村「最後です。はい」

佐々木「フリーの佐々木実といいます。
 今のお話に関わるんですけど、新井将敬さんの自殺は衝撃的な事件だったんですけど、前日に電話されて、新井さんはその検察の捜査が――」

亀井「いや、おれが電話したんじゃない。向こうから電話してきたんだ」

佐々木「ええ、で、検察の捜査が公正ではないということを、亀井先生に訴えていたということですか?」

亀井「いやいや、だから俺にね、『自分の友達は、何日間も、何日間も、連日事情聴取を受けてね、自分についてはわずか3時間ぐらいでね、逮捕だというね、それはひどいじゃないの』という言い方をしてたなあ、俺に対して。『もっと聞いてもらいたい、真実をもっと聞いてもらいたい』ということをさかんに……泣きじゃくっていたなあ、電話の向こうでねえ。それが最後だった。

 あれはねえ、衝撃的な事件だ。あれはね、この女房は気丈な女房だね。彼が自決するのがわかっていて、一夜をともにしてるんだよね。そうだよ。俺は知らなかったんだけど。夜中からさあ、(逮捕)許諾請求のあれがあるからね、翌日さ。

 連絡がとりたいっていうんだけど、女房に電話したらさ、『私も探しているんです』ってゆうてねえ、大嘘言っているんだ、女房は翌日の朝。実際はホテルで将敬と最後の夜をともにしてんですよ。それで昼に自決するということを示し合わせた上で、自分の自宅に帰ったんです。

 で、俺に電話でさ、『知りません』ってシラ切ってるんだね。気丈な女ですよ。

 それで、昼、示し合わせた通り、将敬が死んだ頃の時間に再び……。それでおれに電話いれたんだ。『亀井先生、死にました』っちゅうてね。私らも現場にふっとんでいっちゃって。

 週刊新潮……週刊誌はおかしな事書くからな。大嘘ばかり書きまくっちゃったけどね。それで行って、そしたらベッドに横たわってきれいに将敬を奥さんがちゃんとした上で、なんか俺に電話したわけね。そういう状況だったけどね。

 まあ、そういう意味では、奥さんも言ったけど、『法廷で無罪を証明することは、ほとんど不可能ですと。日本の場合は難しいと。それをやったって、やってもね、息子たちがね、それを信じてくれるだろうけども、こうした主人が自決することによって、少なくとも、少なくとも息子たちは、お父さんを信じてくれるだろうと。少なくとも息子たちは、お父さんの潔白を信じてくれた』こういって奥さんは俺に言ってたな」

 耳をふさぎたくなるような、痛々しい話である。

 亀井氏は、検察といえど、疑いをかけられた者が、悔しさのあまり、自決するほどの、不当な捜査がありうることを明らかにし、同時に、その背景に、帰化した者への差別が存在することを示した。

 先に書いたとおり、これは、参政権の付与・獲得よりも帰化をすすめる国民新党の主張とは矛盾する。帰化しても、なお、差別が存在することを明示しているからである。

 陰鬱になる話であるが、追い打ちをかけるように、そうした陰鬱さを増幅してくれるような「事件」が、17日に起きた。

 平沼赳夫元経済産業相が、地元の岡山市内での政治資金パーティーの席上、事業仕分けを批判した流れで、民主党の蓮舫議員について、「元々日本人ではない。キャンペーンガールだった女性が帰化して、日本の国会議員になって、事業仕分けでそんなことを言っている。そんな政治でいいのか」と差別発言したのだ。

 平沼氏と言えば、元々は亀井氏の盟友である。2009年11月18日には、亀井氏自身が自ら足を運んで、国民新党と平沼グループの「合流」を持ちかけもした。結局は、平沼氏がこの話を断り、私の単独インタビューに平沼氏自身が答えた通り、「保守勢力の結集」を標榜して、日に、新党結成構想を唱えたばかりだった。

 このニュースを受けて、ただちに私は、Twitterで、「帰化をした者に、こうした差別を行うなら、『参政権ではなく帰化を』という主張そのものが、説得力を失ってしまう。平沼氏は謝罪して、発言を撤回すべき」とツィートした。

 平沼氏が、どういうつもりでこんな差別発言をしたのか、わからない。

 ただ、冷静に、ロジカルに考えても、あるいは感情的なレベルで受け止めても、到底、受け入れられない発言であることは確かだ。

亀井大臣の、新井将敬氏について語る語り口には、差別されることの痛みへの共感と、温もりのある情がこもっており、平沼氏の発言とは一線を画している。しかし、帰化すれば、問題は解決するわけではない、という点で、壁に突き当たっていることは確かだ。

田村「時間です」

亀井「あっ時間。はい」

田村「申し訳ございません」

亀井「今から、ちょっと用事があるからな」

一同「ありがとうございました」

 小沢氏に対しては、東京地検は任意の事情聴取を求めたが、小沢氏はこれを拒否。 日に行われた民主党の党大会で、小沢氏は、「不当な権力の行使には、断固、戦う」と、検察権力との「全面戦争」を宣言した。

 異常な事態である。

 何度も書いてきているが、検察は、小沢氏に対しては、何が被疑事実か、いまだに示していないのだ。

 このまま小沢氏については、立件の見送りも、今の段階ではまだ、ありうるのに(あくまで理屈の上では、という話で、もはや検察も引っ込みがつかないかもしれないが)、連日、主要マスメディアは、事細かに小沢氏の土地購入資金の「疑惑」について書きたて、「小沢対検察」の対決を、盛り上げている。検察自身が、国家公務員守秘義務違反に抵触する可能性のある捜査情報のリークによって、この騒然たる空気を作り上げている節すらあることに、懸念を覚えるのは、私だけではないと思う。

 こうした捜査のあり方、そしてメディアの一方的な報道のあり方に対して、先日インタビューをした元検事の郷原信郎弁護士のように、強い懸念を表明する論者もいるが、そうした論者に発言機会を与えるマスメディアは、なぜか非常に少ない。

 検察は、東京地検特捜部の意向とは異なる記事を出稿したメディアには「出入り禁止」を課す構えすら見せているという。メディア側は、日々の捜査情報を漏らすことなく手に入れたいがために、検察の顔色をうかがい、批判色は極力、出さずに抑え込んでいる。

 これは、どう考えても異常である。

 我々国民は、何よりもまず、何がそもそも問題なのか、その事実を知りたいのだ。そうでなければ、小沢氏を支持するか、支持しないのか、国民は判断することができない。何が根拠になっているのか、出所が不明の、新聞記事やテレビのニュースの情報だけでは、どうして冷静な判断が下せるのか。

 マスメディアは、例によって、「政治家は、説明責任を果たせ」の大合唱だが、今の段階で、何を説明せよ、というのだろう。

 順番が逆である。いったい、何が問題なのか、それを決めるのは、検察なのである。どのような被疑事実で、小沢氏を立件するか、しないのか、それを決めることができるのは、検察だけなのである。

 だからまずは、検察こそが、国民に、そもそも問題は何か、何が被疑事実なのか、その説明責任を果たさなくてはならない。

 検察幹部が説明しないというなら、法務大臣が、幹部から聴取したうえで、国民に説明すべきである。

 何度も、何度も、重ねて言うが、私は小沢氏を擁護しているのではない。この国の最強の権力の行使は、慎重の上にも慎重でなくてはならない。結果さえ出ればよかろう、というのは、やはり間違っていると思う。

 亀井大臣が、私の質問に答えて言われた通りである。「司法には、適正なプロセスが求められる」のだ。

 この国の主権者は、小沢一郎でもないし、東京地検特捜部でもない。ましてマスメディアではない。

 国民である。国民にこそ、主権がある。説明を受け、それが納得できるものであるかどうか、決めるのは国民なのだ。

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