「特定秘密保護法を施行しても、政府と報道機関の関係はこれまでと変わらない」──。
福島県出身の自民党議員で、現内閣府特命担当大臣の森雅子参議院議員による記者会見が、1月21日に日本外国特派員協会で行われた。
森氏は、少子化対策、消費者及び食品安全、子育て支援など、現在12分野の大臣を担当している。本会見では、担当の一つである「特定秘密保護法案」を中心に、法案の意義や中身、報道機関や一般国民への影響について、ジャーナリストやメディア関係者らと意見を交わした。
日本外国特派員協会は、昨年11月12日、特定秘密保護法案の制定に対して、「日本の民主主義と報道活動に対する脅威とならないような内容への大幅な修正を強く求める」という内容の反対声明を発表している。
その後、法案は野党を含めた4党による修正協議を経て、12月6日に国会で可決され、13日に公布された。法案成立後、担当大臣本人が協会の懸念に対してどのようなコメントをするのかに、注目が集まった。
森大臣「法律によって秘密が拡大するという議論は誤解」
森大臣は、9.11事件前後に米国に滞在していた自らの体験を紹介し、テロに関して日本大使館からの限られた情報しか入ってこなかったと回想。「日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増し、国際テロ情勢は緊迫化している」と、安全保障上の面から法案の必要性について訴えた。
森大臣は、法案の成立によって、「全省庁共通のルールが策定され、政府内部や海外と緊密に連絡を取り、厳格に情報管理する態勢が確立された」と語り、それまで各省庁で恣意的に行われていた機密情報の指定管理プロセスが明確化されると、法案の意義を強調した。
特定秘密の範囲については、法案は現在政府が保有する機密事項のうち、「その一部を『特定秘密』として指定することを定めるもの」であると述べ、「法律ができたら秘密が拡大する」というマスコミや一部専門家の議論は誤解であるとの見解を示した。
加えて、特定秘密は、①公になっていないこと、②防衛・外交・スパイ活動・テロリズムの4分野23事項に該当すること、③特に秘匿する必要があること、の3要件を満たす情報に限定されることにも触れ、また、通常5年、大臣の更新により通算最長30年、内閣全体の承認で最長60年と規定された秘密指定期間は、他国に比べても短いものだと語った。
また、セキュリティークリアランス(適性審査)に関して、評価対象者の明示的な同意が必要であることや、調査内容は7つの項目に法律で限定していること、対象者の家族についての調査内容は「名前・生年月日・国籍・住所」のみであると説明した。
さらに、特定秘密情報の共有に関して、行政機関内や民間契約先だけではなく、国会の場や情報公開審査会、裁判所などにも情報は共有すると説明。情報が適切かつ効果的に利用されるようになると述べた。
森大臣「知る権利に配慮する規定を入れたのは、私の判断」
報道などでも議論の多い「罰則規定」について、森大臣は、「特定秘密を扱う公務員や契約会社の従業員が漏洩をした場合」、あるいは「スパイ目的で暴行や窃盗などによって特定秘密を取得した場合」にのみ罰則対象となることを明らかにした。前者が10年以下、後者が5年以下の懲役である。
さらに、報道取材の自由にも十分配慮すると明文で規定していることに触れ、「『知る権利に配慮する』と条文に入れたのは、私の判断だ」と、条文作成の経緯を紹介。取材活動は法令違反や不当な行為がなければ、報道機関の通常の取材行為は処罰の対象にはならないと、あらためて強調した。
森大臣は、「取材活動への懸念の声が聞かれるが、政府と報道機関の関係はこれまで通り」と語った。また、国民への影響についても、「国民が一般の生活を脅かされることはない」とし、法案の目的は曖昧なルールを法律にすることで、政府の勝手を許さないようにするため、と述べた。
特定秘密は裁判の証拠として使うことができるのか
質疑応答では、特定秘密保護法案と日本の司法制度の関係についての質問に対し、弁護士である森大臣は、「現在の法律や司法制度はそのまま適用される」と述べた。
特定秘密が裁判の証拠として使われる場合、裁判官のみが証拠を見られる「インカメラ方式」が適用されると解説した。また、情報公開法に基づく情報開示請求があった場合にも、情報開示を判断する審査会の委員には特定秘密が開示されると述べた。
「インカメラ方式」の導入は、日本では裁判の公開を保障する憲法82条や民事訴訟法などを理由に認められていない。しかし、専門家や市民団体などが導入を強く要望し、2009年1月の最高裁判決で「立法により情報公開訴訟にインカメラ審理を導入することは可能」との補足意見が出ている。
今回の森大臣の発言は、その判決の趣旨を汲み取り、立法手続によって特定秘密の裁判にインカメラ方式を導入することを示唆した点で、非常に重要である。
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