集団的自衛権の行使容認を巡って、いま何が起きているのか――浦田一郎 明治大学教授が解説 2014.1.18

記事公開日:2014.1.18取材地: テキスト動画
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(IWJ・鈴木美優)

 昨年12月初めに、特定秘密保護法が成立した。また、昨年末に、安倍総理が靖国神社を参拝したことで、日本の外交政策に緊迫状態が続いている。「許すな!憲法改悪・市民連絡会」は1月18日、「自民党の国家安全保障基本法案について~集団的自衛権行使解禁の動きの中で考える」と題された市民憲法講座を開催した。明治大学教授の浦田一郎氏が、自民党の考える国家安全保障法案についての講演を行った。

 「積極的平和主義」を掲げている安倍政権が目指しているのが、集団的自衛権の行使である。現行の憲法9条の解釈では集団的自衛権の行使は認められていない。これに対し、自民党は、憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を可能にする、または、行使を可能にする新たな法律をつくって立法改憲する、という2つの策略で進めようとしている。

記事目次

■ハイライト

  • 講演 浦田一郎氏(明治大学教授、憲法学)
  • 第83回市民憲法講座 自民党の国家安全保障基本法案について~集団的自衛権行使解禁の動きの中で考える
  • 場所 文京区民センター(東京都文京区本郷)
  • 主催 許すな!憲法改悪・市民連絡会

日本は「普通」になれるのか?

 「防衛や外交に関する重要な秘密を保護することは、普通の国家ならどこでもやることだ」。

 アメリカをはじめとする主だった国では、国家安全保障会議を設けるなどし、防衛や外交に関する秘密を保護している。これについて浦田氏は、普通の国家のやり方だと述べたが、続けて、「だが、この問題に関しては、『普通』が本当にいいことなのかと問わなければならない」と主張した。

 浦田氏は「逆に日本は『普通』になれるのか?」と問いかけ、日本が戦争責任や政治責任をきちんと考えてきたかを見つめ直す必要があるとした。日本では、戦後、市民革命が行われることもなく、戦時体制から安保体制に移行して社会が築かれてきた。昨年末に安倍総理は靖国神社を参拝したが、中国や韓国から非難され、米政府も落胆したと公言している。浦田氏は、「これでは日本は普通になれないのではないか」と語り、日本が他国と同じような政策をとることに疑問を示した。

 また、日本も加盟する国際システムの集団安全保障では、「軍事で参加すべき」とする義務は同盟国に課されておらず、集団的自衛権の保持は単なる権利に過ぎないことを浦田氏は解説。続けて浦田氏は、「国際法上の権利だからといって、憲法解釈の理由で行使しなくても国際法上問題ない」と述べた上で、「国際法に合わせるということは、要するに、憲法を無視しろということだ」と主張した。

「積極的平和主義」とは何なのか

 浦田氏は、「集団的自衛権解禁という言葉の代わりに、『積極的平和主義』という言葉が使われている」と言い、政府は集団的自衛権の行使によって平和構築しようとしていると解説。浦田氏によると、政府の国家安全保障策は防衛面で固められており、その内容には、日米同盟の実効化、水陸両用の作戦計画なども含まれるという。

 他国から攻撃されていない日本が、集団的自衛権を行使する必要があるのか。 集団的自衛権については、10年以上前から国会で議論されてきたが、「集団的自衛権」とは、政府見解によると、「自国と緊密な関係を持つ他国が武力攻撃を受けた場合に、その他国を助けるため、防衛するために武力を行使すること」であり、この見解によれば、「イラク戦争やベトナム戦争などの前線で日本が戦うことになる」と浦田氏は指摘する。

 国際法上では、集団的自衛権は認められている。しかし日本には憲法9条に戦争放棄の規定があるため、集団的自衛権の行使は、現状では不可能なのだ。そのような憲法による規制がかかった中で、集団的自衛権を行使できるようにしようとする動きが政府内で強まっている。ここで、浦田氏の解説を基に、政府内各々の見解を比較していく。

集団的自衛権解禁を巡る各々の声

 与党の自民党は、集団的自衛権を全面的に容認する方向に進めている。浦田氏によると、安倍政権は日米同盟を強化することで、日米関係における日本の役割を大きくすることが狙いだという。集団的自衛権解禁の方法としては、憲法9条に手を加える明文改憲と、憲法解釈を変えることで実質的に憲法改正を行う憲法解釈変更の2つの方法が、現在同時進行で議論されているとのことだ。

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