TPPを考える専門分野会議ならびに記者会見 2012.3.13

記事公開日:2012.3.13取材地: テキスト動画
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 2012年3月13日(火)、衆議院第一議員会館 地下1階 大会議室にて行われた、「TPPを考える専門分野会議」の模様。

■ハイライト

  • 第1部:9:05~10:00
    「医療・医薬品に関する専門分野会議」
    国内医療関連団体との意見交換
    第2部:10:05~11:00
    「知財・保険・郵政・食の安全に関する専門分野会議」
    国内業界団体、消費者団体、農業団体、郵政・共済関係者、との意見交換
    第3部:11:05~12:00
    「米韓FTA・ISD条項に関する専門分野会議」
    全国知事会、全国市長会、全国町村会、との意見交換
  • 日時 2012年3月13日(火)
  • 場所 衆議院第一議員会館(東京都千代田区)

【第1部、文字起こし】

道休誠一郎議員 (衆・宮崎2区 比例九州 1期)

「昨日のイトシアでの集会、そして砂防会館への街頭行動、それに続く国際シンポジウムと、たくさんの方にご参加頂き、本当にありがとうございます。
TPPを考える専門分野会議が午前中三部門にわたりまして、皆さんのご意見も伺いながら、それぞれの分野に突っ込んだお話をして頂く会を開催致します。私は総合司会を務めます衆議院議員の道休誠一郎でございます。よろしくお願い致します。
今日はまず山田先生からご挨拶頂いた後に9時5分からそれぞれの分野についての動議を致します。まずは山田先生のご挨拶を頂きたいと思います。先生、よろしくお願いします」

山田正彦議員 (衆・長崎3区 5期)

「おはようございます。今日は少し深く堀って、専門分野、医療や知的財産権、あるいは農業の問題も含め、3部に分けて色んな分野の専門分野に関するシンポジウムにしたいと思います。
昨日の話に引き続き、ケルシーさん、ワラックさん、それからピーターさんに権議員にラッセル議員、そして宋弁護士さん、朱さん。韓国からの3人、ニュージーランドから2人、アメリカから2人、来て頂いており、それぞれこのTPPに関して、今アメリカ、ニュージーランド、そして韓国が米韓FTAでどうなっているかということも含めながら、私どももその分野についてひとつしっかりと意見交換をさせて頂きたいと思っております。よろしくお願いします」

道休「有り難うございました。早速ですが、第一部の医療・医薬品に関する意見交換会を始めたいと思います。それではコーディネーターの山崎先生、よろしくお願いします」

山崎麻耶議員 (衆・比例北海道 1期)

「おはようございます。第一部のコーディネーターを務めます衆議院議員の山崎麻耶です。よろしくお願い致します。先ずは日本側からご出席の各団体の皆様をご紹介します。

日本医師会、羽生田副会長、中川副会長。日本歯科医師会、大久保会長。同じく、峰副会長。日本看護協会、小川常任理事。日本薬剤師会、山本副会長でございます。

まずは日本側の各専門職団体からそれぞれお一方5分位ずつ、どんな問題意識を抱えていらっしゃるか、また海外からお越しの識者にどんなことをお尋ねしたいか、まずはご発言をお願いしたいと思います。では、日本医師会からよろしくお願い致します」

中川俊男氏(日本医師会常任理事) (日本医師会)

「日本医師会の中川です。5分ということで、簡単に申し上げます。昨年の11月2日、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は三師会として二つの要請を政府に致しました。一つ目は、政府はTPPに置いて将来にわたり日本の公的保険医療制度を除外することを明言すること。二つ目は政府はTPP交渉如何に関わらず医療の安全安心を守るための政策、例えば混合診療の全面解禁を行わないこと。医療に株式会社を参入させないこと等を個別具体的に国民に約束すること。この二点でございます。この二点について未だ政府から明確な回答はありません。

昨年の11月11日に総理はこのように仰いました。TPP交渉参加に向けて各関係国との協議に入ることと致しました後のことですが、『世界に誇る日本の医療保険制度、これは断固として守りぬくんだ』と仰いました。日本の医療保険制度を守る。国民皆保険を守るということの意味合いが実は我々は非常に不安なんです。今の国民は公的医療保険に加入している訳ですけれど、入ってさえいれば日本の国民皆保険を守ったことになるのかということに尽きます。全国民が公的医療保険に加入していること。そして公的医療保険給付の範囲が縮小されないことがまず一点、混合診療が全面解禁されないこと。これが二点目。三点目、営利企業、株式会社が医療機関経営に参入しないこと。これらが守られて初めて国民皆保険が守られたことになると思います。以上です」

山崎「非常に簡潔にありがとうございました。後ほどまたご発言頂きますが、何よりまずは我々の国の宝である国民皆保険を守ること。三つの条件を明確に付けられました。後ほどまた、皆さまからコメントも頂きたいと思います。続きまして、歯科医師会の大久保会長、よろしくお願い致します」

大久保満男氏(日本歯科医師会会長) (日本歯科医師会)

「おはようございます。よろしくお願い致します。基本的には、今、中川先生が仰ったことと全く同じですが、私の方からはもう少し原理原則的なお話をしたいと思います。資料の日本歯科医師会の見解の1ページ目を開いて下さい。私は医療というのは究極的には患者と医師との関係性の中にあると思っております。大きな意味でサービス業というのは皆人間の関係性の中にありますけれど、特に医療は、病気というのは患者さんの身体の中にありますから、文字通りそれを外に出せない。つまり、医師と患者の個人の関係性が究極的には保たれてなきゃいけない。ところが医療というのは逆に今度は医療を提供する病院とか診療所のような専門性を持った場所がなきゃいけない。その場所が患者さんを支えるため地域社会のなかに深くびるといん内蔵されてなきゃいけない。つまり、地域者かにの中にきっちり根を下ろしてなきゃいけない。つまりそれは医療や診療所は社会性を持っているということです。その社会性を担保したのが、いま中川先生がおっしゃった日本の国民皆保険制度だと思います。つまり、そういう歴史的に存在をしてきて、しかも地域社会の中にしっかり根を下ろしている医療というものを国際市場というものの中に乗せるとしたら、根っこを切り取っていわば表面的に浮いてしまったようなものを議論の中になすということは基本的にあり得ない。つまり、医療そのものを地域や国の制度から切り離して、議論の中に乗せるということは全く私はできない、不可能なこと、してはならないことだと考えてます。これが私は原理原則だと思っています。

もうちょっと、細かいことを申し上げますと、次のページに、これは私の友人の慶応の権丈教授の絵を教授の許可を得て私が少し直したもので、タイトルは私が『市場の失敗と国会の失敗』としました。基本的な本来のタイトルはその下にある『市場と再分配の***0:08:34.4』というのが権丈さんのタイトルですが、右側のこれが市場です。ここはご承知のように労働の対価によって需要と供給で価格が決まる。しかし人間の生命というのは左側の社会保障の下にあるように軽い重いというのはありません。全ての生命は富んでる人も貧しい人も年寄りも若者も全部一緒です。それを市場に乗せられないので、私たちは社会保障という制度の中でやる。これは国が税金を再分配するということによって成立しますので、この再分配ができないというのは国家の失敗だと思います。つまり、市場が価格を設定できない失敗があるように、国家にも失敗がある。再分配ができなくなったときは国家の失敗だと私は思います。この市場を国民が健康であるということを通して需要を支えているというのが私ども医療人の使命だと思ってます。

最後、これは中川先生、混合診療の解禁についての反対、ということを申し上げましたが、これは2004年に実は総合規制改革会議が出した資料(*)で、さすがにまずいと思って3日ぐらいでホームページから消えた資料だと言われてますが、私はこれが新自由主義を考えている人たちの本音だと思ってますけども、『現行制度、保険診療のうえに特定領域制度』まあ、自由診療以外のものが載ってます。これを本来目指すべき制度として注目すべきというか、非常に危機感を持っているのは、保険診療を今よりも小さくしてそのうえに保険外の自由診療を乗せる。この乗せた分を民間保険会社が賄うということだと思います。つまり、問題は、今の公的保険制度をゼロにはしない。しないけれども、圧縮して、できるだけそこでカバーできない分を増やしていって、それを保険会社が担う。しかしこれによってどういうことが起きたかというと、アメリカでもう明白であります。従って、ここの部分も含めて混合診療というものを解禁するということに大変大きな危機感を持っている。これは基本的に私ども医療人の共通した見解だと思います。以上です」

(*)参考
総合規制改革会議
* 主な公表資料
* 総合規制改革会議による3年間の取組の総括資料(平成16年3月)
* 総合規制改革会議の活動を総括して [PDF形式]
* 総合規制改革会議の主な成果事例 [PDF形式]
* 規制改革・民間開放推進3か年計画(平成16年3月19日閣議決定)
* 概要 [PDF形式]
* 本文 

◆2004年日米投資イニシアティブ報告書
(概要)[PDF形式]
(本文)[PDF形式]

山崎「はい、大久保会長、ありがとうございました。いずれも国民皆保険、混同診療、ご発現ございましたが、生命に軽い・重いはない。まさしくそこが原点かと思います。続きまして、日本看護協会、小川常任理事、よろしくお願い致します」

小川忍氏 (日本看護協会)

「おはようございます。日本看護協会の小川と申します。本日はお招きいたしまして、ありがとうございます。いまEPAの枠組みのもとでインドネシア、フィリピンから外国人看護師、介護師の候補者の皆さま方が来日をされております。そのEPAの問題をちょっとご紹介いたしますけれども、その外国人看護師の方の国家試験の合格率が低いということで、国家試験の出題を日本語ではなくて、現地の母国語、あるいは英語、それを併用して出したらどうかと。その母国語と英語の国家試験とコミュニケーション能力の試験を併用して、試験を実施したらどうかという議論がいま検討会で行われております。

しかし、海外の国を見ますと、そのような特例的な扱いをしている国というのはないんですね。これはそもそも、今現在のEPAの枠組みは、日本語の能力がある人もない人もごちゃまぜにして受け入れている、そういう問題があって、その問題を解決しないままに、単に合格率が低い。それは当たり前の話で、日本語の能力がない人も多く来日されてますので、合格率が低いのは当たり前なんですけれども、よりきちっと受け入れるというのであれば、日本語の能力をきちっと審査した上で受け入れていく。そうすれば国家試験の確率も上がると思います。現に、いま外国の国で看護師の国家試験を受けて、日本語の能力の試験のM1というレベルの試験に合格した方が日本の国家試験を合格すると8割以上の方が日本語による国家試験に合格しているんですね。

そういう意味では、きちっと審査したうえで来日して頂くという枠組みにすればこの問題は解決するんではないかというふうに思うんですが、順番が逆ですね。国家試験の合格率が低いから日本語ではなくて、英語で、あるいは現地の母国語でやったらどうかという議論になるんですね。ここはやはりちょっと本末転倒な絵が検討されていて、恐らく賢明な皆さまですので、そうはならないと思いますけれども、そういうなにか国民の健康とか安全の問題を別のものと天秤にかけて議論される、そういう嫌いがどうもあるんではないかと思っております。

例えば、両国間の、EPAは両国間の貿易交渉ですけれども、いわゆるその自動車産業等の振興のためになにか国民の健康と安全を同じ土俵に乗せて議論していく。私はそれは本来あってはならないと思います。やはり国民の安全健康をきちっと大事にしていく。そういうなかで、交渉をして頂ければと考えております。

医師会や歯科医師会のみなさまがおっしゃったように、日本の医療制度、社会保障制度、これを守っていく。或いは充実をさせていくというのが今後、必要でございます。そういう意味で、医療の無保険者が4千万人も5千万人もいるアメリカの制度、これははっきり言って社会保障制度の後進国でございますので、もちろん学ぶべきものは学ぶという姿勢は大事ですけれども、そういった社会保障制度の後進国からやはりそういうさまざまな難題を突き付けられるというのは問題だと思います。そうした意味で、このTPPに関しては慎重に是非考えて頂きたいと思っています。以上でございます」

山崎「ありがとうございました。人の労働力の移動というクロスボーダーのことも指摘を頂きました。それでは日本薬剤師会山本副会長、よろしくお願い致します」

山本信夫氏(日本薬剤師会副会長) (日本薬剤師会)

「おはようございます。日本薬剤師会の山本でございます。今日はこうしたチャンスを頂戴いたしましてありがとうございました。私どもはいま皆様がお話になられましたように同じ医療職でありますので関心の点は同じでありまして、とりわけ医療保険制度をどうするかと。皆保険制度を維持し、かつこの先も国民が安心して医療を受けられる体制を作って頂きたい。

その中で私は薬剤師でございますので多くの場合はその医療技術の中で含まれています医薬品の位置づけということを考えてみますと、10年、15年前の医薬品と現在使われている医薬品を比べてみますと、明らかに質は上がっておりますし、効果も上がっていますし、位置づけも高まっています。これまで手術をしなくてはならなかったような患者さんにとってみましても薬を使うことによって安全に安定した治療が進んでいる訳でありますが、そうした部分で見ますと、これまで何度か三師会での要望書でも申し上げましたように皆保険制度を守って欲しい。安心と安全を守って欲しい。政府に向けてはそれを明確にして頂きたいというお願いをしてまいりましたが、なお現在に至ってもまだ明快な回答はいただけていないです。

確かにアメリカの商務省でしょうか、カトラー氏が『It’s not About』ということで幾つかの項目を挙げていますけれども、いつの間にかそれがその前に『It’s About ~ It’s not About』となるかもしれませんので、そうした意味ではかなり慎重な対応が要るのではないかと。とりわけ、知的財産権を持ったものの究極の塊であります医薬品を考えてみますと、それに関する日本の産業が決して弱いとは申しませんが、かなり強力な力を以って圧してくればそこは非関税の問題で壊されてしまう。まさに我が国の国民はいい薬をとても高いお金で使う形になってしまっては全く国益に反するどころか、国民の安心と安全を守れない。その一方で薬価制度が不透明だという言い方をされておりますが、これほどクリアに価格が決められている制度はございませんし、その中での安定した医療の提供ができていると信じておりますので、そのあたりにつきましても、少し離れますが、食品の、特に表示の中でアメリカではこういう表示はしなくてもいい。日本ではこういう表示をしなさい。そういうことを問題にして、かなりプレッシャーがかかった時代がありました。薬も同様に品質を担保する中で厳格な規格を持っておりますが、そういう規格が邪魔だから外せとなればまさに品質の問題でも問題が発生するだろうという気がしますので、私どもとしては、なお混合診療、とりわけ薬は混合診療になじみやすいという性格があります。

一方、社会保障と税の一体改革の中では明らかに医薬品を混合診療にしようという方針を政府が出されておりますので、その中でTPPを結んだ時、いったいそのロジックをどう繋げるのかと、私どもは理解できません。そういった意味からしますと、薬剤師としてはよりTPPの中に参加をし、更にその議論に乗っていくことが本当に国益にとって良いことなのかどうかと。国益に反しないのかどうか。さらに言えば、国民の安心なり、安全なりをきちっと守れるのかどうかといったようなことをより明確に説明したうえで賛否を問うべきであって、まず賛成しろとか反対しろとかいうのはいささか順序が逆ではないかなと思っておりますので、是非慎重にお考えいただきまして、国民的なコンセンサスを得たうえで議論を進めて頂きたいと思います」

山崎「ありがとうございました。ただ今、日本側の4団体からそれぞれ問題意識の表明がございました。ケルシー教授、どうでしょうか。コメントお願い致します」

(…会員ページにつづく)

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