【IWJウィークリー21号】「夏の終わり」から「秋の深まり」までを振り返るIWJクロニクル(前編)他(ePub版・PDF版発行) 2013.10.18

記事公開日:2013.10.18 テキスト独自
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 デスクの佐々木です。本号も、岩上安身と IWJ 記者が1週間走り回って取材し、まとめた渾身レポートをお届けします。ダイジェストながら、大ボリュームでお送りするため、気になるところだけの「ななめ読み」も推奨です!

 …と言いつつ、やはり忙しい方からの「もう少し短いテキストが欲しい」という声に応え、一週間のニュースのさらに「ダイジェスト」を前々号より掲載しています。読み心地はいかがでしょうか?

 今号と次号(22 号)では、いよいよ始まった秋の臨時国会を受けて、審議される重要課題について、IWJ が夏の終わりから秋にかけて追ったニュースを、「ニュース、この秋!」と題し、こちらもダイジェストでお届けします。こちらもぜひご覧ください。

21号簡易もくじ

  1. STFダイジェスト
  2. 詳細もくじ
  3. 岩上安身の「ニュース、この秋!」(前編)
  4. ニュースSTF(9/28~10/4)
  5. <IWJの視点>骨抜き「子ども・被災者支援法」
  6. <IWJの視点>原発銀座を襲った「数十年に一度の大豪雨」(前編)
  7. 特別寄稿「堺市長選を振り返る」
  8. 特別寄稿「TPPの根底にあるもの」(前編)
  9. ご献本ありがとうございます!のコーナー
  10. 編集後記(岩上安身)

1. 21号STFダイジェスト 9月28日(土)~10月4日(金)

★忙しい方も、ここだけ読めば一週間のIWJの動きがわかる!★

市長選で維新の「大阪都構想」にNOを突きつけた堺市民

 維新の会の「不敗神話」が崩壊しました。9月29日、「大阪都構想」の是非が大きな論点となる堺市長選が投開票され、都構想に反対する現職の竹山修身氏が維新公認の西林克敏氏に約6万票の差をつけて再選を果たしました。竹山氏の再選で、大阪都構想への堺市の参加の可能性は事実上消滅し、都構想実現にとって致命的な打撃となりました。

~「大阪都構想」の是非で揺れた堺市長選~

 橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会が掲げる「大阪都構想」は、大阪府・大阪市・堺市を解体し、広域行政を担う「大阪都」と、住民に密着した行政サービスを行う複数の「特別区」に再編することを目指しています。西林候補の維新陣営は、「堺はなくならない。なくすのは(堺)市長という役職と(堺)市議会だけだ」と連日訴えました。

 一方の現職・竹山候補は、「堺の健全財政や年460億円の税収が狙われている。堺市民にとって大阪都構想は百害あって一利なし」などと真っ向から対決する姿勢を示していました。

今の日本に蔓延する「凡庸さ」が惨禍を引き起こす

 日本はナチスと同じ道を歩むのでしょうか。「96条の会」発起人で、憲法研究者の奥平康弘東大名誉教授が9月28日に講演を行い、改憲論議が盛んな現在の日本社会に対して警鐘を鳴らしました。

~「凡庸であってはならない」~

 奥平氏は、ドイツの哲学者ハンナ・アーレントがナチス・ドイツの親衛隊(SS)の隊員であり、数百万のユダヤ人を強制収容所に送ったアドルフ・アイヒマンを「アイヒマンは極悪人では決してなく、凡庸な小役人に過ぎなかった。しかし、凡庸であったからこそ、ためらいなくホロコーストに関与し得た」と分析したことを紹介。憲法改正が叫ばれ、ヘイトスピーチが平然と行われる現在の日本社会には、まさにアイヒマンが体現するような「凡庸」さが蔓延していると指摘しました。

 これまでIWJが取材を重ねてきた憲法改正についての特集ページもぜひご覧ください

大企業の利益優先で何でもアリの「国会戦略特区」

 国民への搾取がとまらない。今日から始まった秋の臨時国会で政府・与党は、「国家戦略特区関連法案」の成立を目指しています。企業が従業員を「解雇しやすい特区」として批判を浴びていますが、この特区構想には、さらに投資家や大企業優先の内容が盛り込まれる危険性があります。

 9月29日、シンポジウムで登壇した立教大学・郭洋春教授は、米韓FTAの事例から、TPP・国家戦略特区で懸念される事態を解説。当初韓国での特区における自由診療解禁は、外国人を受け入れるための病院を認可するというものだったはずが、今や営利目的の病院の認可が進み、病院の株主または債権者に対する利益配当も許可されているという驚きの実態を報告しました。

 そのほか、「国家戦略特区」について言及している内田聖子氏・PARC事務局長や山本太郎参議院議員らによる講演会の模様は、以下の記事URLでご覧になれます

「格納容器内は溶けた炉心が散乱している」!?――小出裕章氏が東電と政府の発表に疑問

 「収束」からはほど遠く。10月3日、6度目となる小出裕章氏のインタビューを行いました。小出氏は福島第一原発事故直後から、今日のような汚染水の漏洩を懸念し、タンカーで廃液処理施設のある新潟県の柏崎刈羽原発まで移送するべきだと主張していました。私もこの小出氏の主張を東電に質問としてぶつけましたが、東電側がこの提案を取り入れることはありませんでした。

 インタビューで事故現場でタンクを造ることについて小出氏は、「現場は過酷な被曝環境にあり、溶接作業は困難。そのため、東京電力は(ボルト止めの)簡易型タンクを造ったが、これでは漏れるのは当たり前だ」と指摘しました。

 政府と東京電力は、溶けた炉が格納容器底のコンクリート部分に固まっていると説明しているが、小出氏は「溶け落ちた炉が格納容器の中で散乱しているのではないか」と疑問を呈しました。政府と東電はいまだに炉内の状況を把握できておらず、「収束」に向けた筋道すら描けていません。

 福島第一原発の事故収束作業の今後の見通しについて、生活の党代表の小沢一郎衆議院議員と小出裕章氏の対談の模様は、以下の記事URLでご覧いただけます

米軍と一体化し「破局」の道を進むのか

 日本は米軍の下請けに成り下がるのか。ジャーナリスト、軍事評論家で、旧日本社会党に政策提言を行っていたことでも知られる前田哲男氏は10月4日、私のインタビューに応え、安倍政権の外交・安全保障政策に対し「破局に進んでいる」と警鐘を鳴らしました。

 10月3日、米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官が来日し、2プラス2(日米外務・防衛閣僚による安全保障協議会)が行われ、「日米防衛協力のための指針」いわゆるガイドラインの再改定が決定しました。

 前田氏は、この指針の中に、日本の集団的自衛権行使容認を「歓迎」するという内容が含まれていることを指摘。属米的に特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、日本版NSCの創設、敵基地先制攻撃論、防衛大綱の改正などを進める安倍政権を鋭く批判しました。

 憲法解釈によって集団的自衛権の行使を容認する姿勢を見せている安倍政権の動きに対し警鐘を鳴らしている、阪田雅裕元内閣法制局長官のインタビュー記事もぜひご覧ください

北海道取材を敢行!アイヌの歴史と尊厳を辿る旅

 9月11、12日両日、アイヌ文化の振興と生活向上を目的とする「アイヌ政策推進会議」が、アイヌの人々が多く住む北海道で初めて開催されました。そこで政府は、アイヌ文化振興の拠点として「民族共生の象徴となる空間(象徴空間)」を、2020年度に北海道白老町に開設する方針を決めました。

 その1カ月前、私は北海道を訪れ、アイヌの歴史と文化を取材しました。まさにその「象徴空間」がつくられるポロト湖という湖のほとりで、白老町のアイヌ民族博物館の野本正博館長は、8月6日、私のインタビューに応え政府のこうした施策に疑問を投げかけました。

 野本氏は「2008年、先住民族としての権利を認める決議案が、初めて国会で通った。しかし、それで幸せになったのかというと、自分たちの生活は変わっていない。国連基準の先住民族の権利と、日本のそれとは違うのではないかと思う」と語りました。

~「チャランケ」は紛争解決の知恵~

 8月5日にインタビューした北海道アイヌ協会 竹内渉氏は、今年7月の参議院選挙で、17万票を獲得した三宅洋平氏が用いて有名になったアイヌの言葉「チャランケ」の意味について聞きました。

 竹内氏は「チャランケ」の意味について、「集落同士で狩猟のトラブルがあった時などに用いられる紛争解決の手段で、裁判のような徹底討論。ただ、ひとつルールがあって、相手が話を始めた時、かぶせて腰を折ってはいけない。最後まで聞く」と解説しました。

 「チャランケ」のような、徹底した議論と話し合いこそは、民主主義の基礎です。そして、その前提になるのは、情報の公開です。TPP交渉の情報は、一切公開しない、特定秘密保護法を定めて政府のもつ情報を秘密だらけにしようとしている。そもそも公約を次々くつがえすようでは、言葉に信がおけない。嘘をつかないことが大前提にならなければいけません。「アイヌ文化の振興」を謳う安倍政権は、何よりもこの「チャランケ」の精神こそ、アイヌから学ぶべきなのではないでしょうか。

 その他、『アイヌ・エコシステムの考古学』や『アイヌの沈黙交易』の著者である考古学者、瀬川拓郎氏へのインタビューについては、こちらのURLでご覧いただけます

2. 詳細もくじ

岩上安身のニュースのトリセツ

ニュース STF 〜Saturday to Friday~ 9月28日(土)~10月4日(金)

<28日 土曜日>
・「僕らは奴隷」 山本太郎議員が秘密保全法の危険性について連日の指摘
・96条の会 シンポジウム「国際社会のなかの憲法」
・国際地政学研究所創設2周年記念シンポジウム「地政学的視点から今日の安全保障を読み解く」

<29日 日曜日>
・原爆から原発へ 原発から原爆へ ~岩上安身による木村朗氏インタビュー
・「アイヌは交易を重要視し、市場依存型の社会を形成していた」~岩上安身による旭川市博物館 主幹 瀬川拓郎氏インタビュー
・シンポジウム TPPと国家戦略特区
・堺市長選、現職が維新新人に5万票の大差で圧勝

<30日 月曜日>
・「新千歳空港に降りたら『先住民族の土地だ』と思ってほしい」〜岩上安身によるアイヌ民族博物館 野本正博館長インタビュー
・子ども・被災者支援法基本方針案をめぐる政府交渉
・日本のODA「プロサバンナ」によって生活が悪化したモザンビークの農民たち ――現地調査でその悲惨な状況が明らかに

<1日 火曜日>
・「アイヌ差別は、北海道開拓移民の存在意義の裏返し」 〜岩上安身による北海道アイヌ協会 竹内渉氏インタビュー

<2日 水曜日>
・汚染水問題 海洋放出やめるよう求め、海外から10394筆の署名

<3日 木曜日>
・「格納容器内は溶けた炉心が散乱している」~岩上安身による小出裕章氏インタビュー

<4日 金曜日>
・「破局しかない」“属国”日本の戦略なき軍事国家化をめぐって~岩上安身による軍事評論家・前田哲男氏インタビュー

IWJの視点
・喜びの涙が悔し涙に変わっていった1年4ヶ月を振り返る ~骨抜きのまま閣議決定された「子ども・被災者支援法」基本方針(ぎぎまきのハニーフラッシュ!)

IWJの視点
・原発銀座を襲った「数十年に一度の大豪雨」 インフラの崩壊で露見した“新規制基準の穴”と欠如した危機意識(原佑介)

特別寄稿
・堺市長選を振り返る(IWJ中継市民関西・久保元直樹)

特別寄稿
・TPPの根底にあるもの ―ヴァンダナ・シヴァさんの本から考える― 神子島(かごしま)健(東京大学助教:社会思想史、相関社会科学)

ご献本ありがとうございます!のコーナー
・『茶色の朝』 ランク パヴロフ、ヴィンセント ギャロ、藤本 一勇、 高橋 哲哉(大月書店、2003/12)

デスク編集後記
(今週のデスク:佐々木隼也)

(…サポート会員ページにつづく)

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