2012年4月11日(水)、福島市の福島県青少年会館において、「飯舘村・避難区域見直しに関する懇談会」が開かれた。昨年暮れに政府が、福島第一原発は「冷温停止状態にある」と宣言したことや、福島第一原発事故の発生から1年が経ったことにより、政府は避難区域の見直しを図る方針を明らかにした。これに伴い、村民に区域見直しの概要について説明する必要があることから、今回の懇談会を開催する運びとなった。
(IWJテキストスタッフ・久保元)
2012年4月11日(水)、福島市の福島県青少年会館において、「飯舘村・避難区域見直しに関する懇談会」が開かれた。昨年暮れに政府が、福島第一原発は「冷温停止状態にある」と宣言したことや、福島第一原発事故の発生から1年が経ったことにより、政府は避難区域の見直しを図る方針を明らかにした。これに伴い、村民に区域見直しの概要について説明する必要があることから、今回の懇談会を開催する運びとなった。
■全編動画
冒頭、挨拶に立った飯舘村の菅野典雄村長は、「ちょうど1年前の今日(2011年4月11日)、『住民の被曝放射線量が20ミリSv(シーベルト)/年を超えるので、1ヶ月以内に全村避難を』という話が国からあった。あれから1年が経ち、線量の高低によって避難区域を3つに区分けする話が、国から出てきた」と述べた。その上で、「区分けは、村民の生活や財産にも深く関わってくることなので、疑問点や不安点があればどんどん話していただき、私や今日来ている国の担当者からお答えしたい」と語った。飯舘村村議会の議長も、「国から出た資料では3つの区域に分ける計画となっているが、区域は1つがいいのか、2つがいいのか、3つでいいのか、議会として結論が出せていない。今日は政府の担当者も来ているので、村民の忌憚(きたん)のないご意見をお願いしたい」と述べた。
政府原子力災害現地対策本部の佐藤暁氏は、避難区域見直しを実施することとなった理由について、「昨年12月に、福島第一原発から、これ以上、大量の放射性物質が放出される可能性は低くなったと政府が判断したため」とし、「これを節目に、村民に不自由を強いる状態を少しでも改善することが狙い。除染やインフラの復旧もあわせて進めていく」と語った。
続いて、対策本部の担当者が、区分け案の概要について説明した。これによると、被曝放射線量が20ミリSv/年以下の場所を「避難指示解除準備区域」、20~50ミリSv/年の場所を「居住制限区域」、50ミリSv/年以上の場所を「帰還困難区域」とし、線量の高低によって飯舘村の避難区域を3つに分割する内容とした。
その後、文部科学省の担当者が、「避難区域の見直しによって、村民が帰宅できるとの判断がなされた場合でも、損害賠償を直ちに打ち切ることはない」と述べたほか、損害額を算定する際に、村民の住居等がどの区域に属するかにより、判断が異なることを説明した。例えば、「帰還困難区域」では、長期にわたり帰還が絶望的であることから、「原則的に100%全損扱いとする」としたほか、「居住制限区域」や「避難指示解除準備区域」については、「避難解除までの期間等を考慮して価値減少率を決める」とした。
質疑応答では、村民の男性が「ここにいる政府関係者に聞きたい。除染の効果があると思うか。私はないと思う。効果があると言うなら、家族を連れて(飯舘村に)住んでみればいい」と強い口調で述べると、会場から大きな拍手が起こった。また、村民の女性が「私は『避難指示解除準備区域』となる地域に属するが、20ミリSv/年という基準では危険だと多くの人が言っている。国の基準は、もう決まってしまっているとしか思えないが、せめて5ミリSv/年ぐらいの数値で検討してもらえないか」と要望した。これに対し、対策本部の担当者は、「20ミリSv/年を5ミリSv/年に下げることは考えていない」と回答した。このほか、村民からは「昨年暮れに政府が出した収束宣言自体に、大きな疑問を感じている」という意見など、区域見直しに至ったプロセス等を疑問視する意見が相次ぎ、故郷に戻りたいという気持ちを持ちつつも、政府による性急な帰還促進策や除染促進策と映る今回の避難区域見直しについて、村民の多くが疑問視している状況が浮き彫りになった。