2013年06月14日(金)18時30分より、東京都千代田区の上智大学四谷キャンパスにて「『96条の会』発足記念シンポジウム」が行われた。本会場が満杯となり、ほかに8会場を設けてパブリックビューイングで対応するほどの盛況であった。樋口陽一東大名誉教授は「60年間の学究生活の中で、講演にこれほどの人が集まったことはない」と語り、「憲法を基準にして公権力を縛ることを、立憲主義と言う。ところが『自分を縛るルールを緩めてくれ、やりたいことができるから』というのが今の自民党の改憲案だ」と批判した。
(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)
特集 憲法改正
2013年06月14日(金)18時30分より、東京都千代田区の上智大学四谷キャンパスにて「『96条の会』発足記念シンポジウム」が行われた。本会場が満杯となり、ほかに8会場を設けてパブリックビューイングで対応するほどの盛況であった。樋口陽一東大名誉教授は「60年間の学究生活の中で、講演にこれほどの人が集まったことはない」と語り、「憲法を基準にして公権力を縛ることを、立憲主義と言う。ところが『自分を縛るルールを緩めてくれ、やりたいことができるから』というのが今の自民党の改憲案だ」と批判した。
■ハイライト
冒頭、上智大学教授・三浦まり氏から「96条の会」について、「この会は、熟議を欠いた安易な憲法改定に、反対する人々の集まりとして発足した。立憲主義の重要性について、とりわけ改憲のハードルを下げることの危険性について、有権者が深く考える機会を提供することを目指している」との説明があった。
基調講演では、樋口陽一氏が「96条は、憲法の憲法、根本規範、憲法改正権などと言われている」と述べ、「96条が持つ憲法改正の権限を、その権限によって変えることができるのか、という本質的議論をクリアしないまま、96条を使って96条を変えることは、理屈の上ではできない。一部の政治家は、手続き上の問題だけというが、大きな間違いだ」と語り、以下のように続けた。
「昨年、安倍首相は『たった3分の1の反対で発議できないのはおかしい。そういう横柄な議員には、退場してもらう選挙を行なうべきだ』と話した。職責を果たそうとする国会議員を横柄と呼び、たまたま手にした2分の1の議席で発議し、あとは国民に丸投げする。これは明らかに、主権者としての国民への侮辱である」。
パネルディスカッションでは、山口氏が「国民投票があるからいいじゃないか、と言う人がいるが、直接民主主義は強烈なアプローチ。改憲後、のべつ幕なしに国民投票をすることになる。そうなると、すべて形骸化し、逆に国民投票が、国民主権を破壊する」と危惧した。
岡野氏は「憲法は、マイノリティにとって最後の砦だ。その時の多数意見で決めるものではない。新憲法では家族を強調するが、セーフティネットや社会福祉が削られるなかで、家族というものに負担を押しつけようとしている」と述べた。
長谷部氏は「憲法の中の『国民』には、2つの意味がある。国民投票の国民は、有権者としての国民。前文でいう国民は、国政の福利を享受する、将来の世代を含めて長期的な意味を含んだ国民、という意味だ」と説明した。
山口氏は「反知性主義が、今の政治の基調だ。今、安倍首相はトーンダウンしているが、株価さえ維持できれば乗り切れる、と思っているようだ。ただし、世論には力がある。私たちは無力ではない」と語った。