2013年3月24日(日)13時30分より、福島県会津若松市の会津大学講堂で「県民健康管理調査『甲状腺検査』説明会」が行われた。福島県民健康管理調査検討委員会の鈴木眞一教授が、検査内容や、今後の調査の指針を解説し、会場からの質疑応答にも答えた。
(IWJテキストスタッフ・阿部玲)
2013年3月24日(日)13時30分より、福島県会津若松市の会津大学講堂で「県民健康管理調査『甲状腺検査』説明会」が行われた。福島県民健康管理調査検討委員会の鈴木眞一教授が、検査内容や、今後の調査の指針を解説し、会場からの質疑応答にも答えた。
■全編動画
この説明会は、福島県が現在実施している「甲状腺検査」の内容、および甲状腺に関する医学的特徴等を紹介、説明することで県民の理解促進を図り、小児甲状腺がんに対する不安を軽減することを目的に実施された。県民健康管理調査検討委員会のメンバーであり、福島県立医科大教授の鈴木眞一氏が、主に解説を担当した。
鈴木氏は、まず、日本国内における放射線の影響については、「チェルノブイリと違い、早期に水、食品の流通規制が行われたため、外部被曝を上回る内部被曝があるとは想定しにくい」との見解を示した。「環境に放出された放射線量はチェルノブイリの7分の1」であり、「チェルノブイリでの甲状腺がん発症の値は、50ミリシーベルト以上としている論文がたったひとつあるだけで、学術的には100ミリシーベルト以上というのが定説である」と、従来からの主張を繰り返した。
「日本において、小児甲状腺腫瘍の疫学調査は、今までされていない。今まで施行していなかった検診を行うと、ゆっくり育つ甲状腺腫瘍が、早い時期に、偶然に多く発見されることは容易に想像がつく」としながら、「保護者の不安の解消と、現時点での甲状腺の状態を把握し、今後長期にわたる福島県民の甲状腺に変化があるかないかを、生涯に渡って見守って行く」と、今後の方針を示した。判定の分類は、「A判定:A1=次のA2の症状が見られなかったもの。A2=5.0mm以下の結節(しこり)や20.0mm以下の嚢胞」「B判定:5.1mm以上の結節(しこり)や20.0mm以上の嚢胞」「C判定:甲状腺の状態から判断して、直ちに2次検査を要するもの」の、3つである。
5mm以下の結節については、「明らかな結節といえるものは少なく、多くは嚢胞との区別がつかない程度のもの。良性と判断できない結節は5mm以下でもB判定にして二次検査を行う。腫瘍は小さいほど進行が遅く、ある程度の大きさになってくると増大速度を上げてくるため、5mm以下で悪性を疑わない超音波所見であれば、2~3年後でも十分対応ができる」とした。また、「最新の超音波機器と、専門医が施行することによって、1mm以下でも検出できるようになった。かなり小さい所見も捉えながら、長きに渡って見守り、逆に不安を助長したり、過剰診療にならないように、努めていきたい」とし、実際に模擬被験者とともに、超音波検査を実践してみせた。
会場の母親からの「100万人に1人といわれる甲状腺がんが、3人発見というのは、確率的に数が多いと思うが、放射線の影響は?」という質問に対しては、「100万人に1人ということも、そういう正確なデータがあったわけではない。10歳以下だと100万人に1人だが、10歳以上だと桁が上がる」と述べ、「だから、今回ちゃんと統計を取ろうという話」と、調査の必要性を説いた。「あなた(質問者)は、『一生、傷を背負って行く』という言い方をしたが、なるべく小さい傷で寿命を全うしてもらうため、そのために努力をしている。見ないフリをしてるわけではない。この後の経過を、これからも見ていく」などと繰り返し、母親の思いと、鈴木氏の学者としての視点とが、噛み合わない場面も見受けられた。