2012年11月10日(土)18時30分より、福島県福島市の福島文化センターで、「県民健康管理調査『甲状腺検査』説明会」が、福島県立医科大学の主催により行われた。福島県立医科大学から、放射線医学県民健康管理センターの松井史郎特命教授、甲状腺検査部門長の鈴木真一教授が出席し、18歳までを対象とした甲状腺検査の詳細について説明した。
(IWJテキストスタッフ・宮里/奥松)
2012年11月10日(土)18時30分より、福島県福島市の福島文化センターで、「県民健康管理調査『甲状腺検査』説明会」が、福島県立医科大学の主催により行われた。福島県立医科大学から、放射線医学県民健康管理センターの松井史郎特命教授、甲状腺検査部門長の鈴木真一教授が出席し、18歳までを対象とした甲状腺検査の詳細について説明した。
■全編動画 1/2 ※開始後59分より1時間11分まで、および2時間53分以降、機材の問題により音声が欠けております。何卒ご了承ください。
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冒頭、主催者を代表して、放射線医学県民健康管理センターの松井特命教授から挨拶が行われた。甲状腺検査の実施について「チェルノブイリでの原発事故後に小児甲状腺がんが増えたことを踏まえ、震災時点で0歳から18歳までの約36万人を対象に、生涯に渡って見守っていく」と述べた。また、今回説明会を開いた理由については「現時点で約11万8千人の甲状腺検査が終了しているが、B判定の方々から本当に大丈夫なのかという声が多数寄せられたため」と話し、医師から直接説明を行う場が必要であった、と述べた。
続いて、甲状腺検査部門長の鈴木教授より、『甲状腺に関する基礎知識と甲状腺検査の概要』と題して、甲状腺検査の必要性や、検査の実施概要について説明が行われた。
まず、甲状腺検査の必要性について、チェルノブイリ事故後のベラルーシで採取されたデータを紹介し、事故当時0~5歳だった人が多く甲状腺がんになっていることを指摘。福島においても、保護者の不安解消などのため「現時点での甲状腺の状態を把握し、今後長期にわたって甲状腺の変化を見守っていく」と述べた。
次に、甲状腺検査の流れについて、一次検査と二次検査を実施することを説明した。一次検査について「ポータブル式の超音波機によってのう胞や結節を判定し、A1(無し)やA2(20mm以下ののう胞または5mm以下の結節)であった場合は2年後に再検査を行う。それ以上のB、Cであった場合は二次検査を行う」、二次検査については「精密な超音波検査、採血、検尿を行う」と話した。なお、判定については「複数の専門医による合議を経ることで正確を期す」と述べた。
さらに、検査について「長期にわたって継続的に、画像を保存しながら見守っていく」としたが、早期発見・早期治療については「甲状腺は進行が早い病気ではないため、副次的効果である」と位置づけた。また、今回の検査においての『のう胞』とは、「充実部分が無く、超音波検査のみで良性と判断できるもの」とし、「充実部分を伴うのう胞については、がんの可能性があるため、手遅れになることのないように結節として扱う」と述べた。また、のう胞の頻度が高くなる理由については「通常の診療よりも高い精度で、1mm以下の所見まで捉えているため」とした。
その後、甲状腺がんの特徴、治療法、放射線被ばくとの関係などを説明した。日本は、チェルノブイリよりも食事でヨウ素を過剰摂取しているため、甲状腺腫が少なくなることや、子供は放射線被ばくによる発がんリスクが高いが、予後のリスクは高齢者に比べて高くないことを述べた。
鈴木教授がひと通りの説明を終えた後、場内からの質疑応答が行われた。
男性からの「放射線の医学とセットで説明すべきなのに、なぜ山下俊一氏などの放射線の専門家が出席しないのか」という質問に対して、鈴木教授は「専門家の都合がつかなかった」と答えた上で、今回は甲状腺の検査に限った説明会であることを強調した。
若い女性が「説明会や資料の中で『見守る』という言葉がたくさん使われているが、見守るだけ、データを観察するだけが目的なのかと思ってしまう。県民健康調査に関して秘密会議などの事実が報道で明らかになっているからこそ、改めて姿勢を明確にしてほしい」と訴えた。それに対して鈴木教授は「観察だけして見放すわけではなく、早期発見・早期治療になるように務める」と主張した。
主婦の女性は「うちの娘は県の健康検査でA1と判定されたが、その後セカンドオピニオンでA2と判定された」と、検査に対する疑問を呈した。その理由について、鈴木教授は「子供のうちは、のう胞はよくできる。陽性の中で、大きくなったり小さくなったりする」と解説した。
年配の男性は、鈴木教授が「若い人ほど甲状腺がんの予後が良い」と発言したことに対して「2010年の甲状腺腫瘍診療ガイドラインに基づいた発言と思われるが、『チェルノブイリ原発事故を除く』という但し書きが記述されている。これを除外してしまうことは間違い」と指摘。それに対して、鈴木教授は「日本の今までの甲状腺がんについて申し上げたもの。チェルノブイリと日本ではヨード摂取量が違うため、我々が論じることではない」と答えた。それを受けて男性は「あらぬ疑いを招かないためにも、きちんと説明に盛り込んでほしい」と要望した。
その他の質問において、鈴木教授は、(1)検査が、日本全国で受けられるように取り組んでいること、(2)県外で行った検査が、県内の検査と異なるようなケースがなくなるように動いていくこと、(3)一般の病院でも検査ができるように勉強会を行っていくこと、(4)検査の開示請求が無料で行えるよう県に伝えること、などを回答した。
また、放射線の専門家が出席していない件について、疑問の声が相次いだため、松井教授が急遽弁明するという一幕もあった。