2018年4月4日(水) 14時半より、東京都港区の原子力規制委員会にて、原子力規制委員会 更田豊志(ふけたとよし)委員長 定例会見が開かれた。
この定例記者会見は、玄海原発の蒸気漏れ発覚後、初めての会見となる。記者会見は冒頭から更田豊志委員長への質疑応答で始まった。
(取材・文:武千晴、撮影:渡会裕)
※2018年4月7日、テキストを追加しました。
2018年4月4日(水) 14時半より、東京都港区の原子力規制委員会にて、原子力規制委員会 更田豊志(ふけたとよし)委員長 定例会見が開かれた。
この定例記者会見は、玄海原発の蒸気漏れ発覚後、初めての会見となる。記者会見は冒頭から更田豊志委員長への質疑応答で始まった。
記事目次
■ハイライト ※IWJ記者が質問をした場面です。
■全編動画
2018年3月30日、7年3ヶ月ぶりに再稼働したばかりの玄海原子力発電所3号機の配管から蒸気漏れがあったと同原発事業者の九州電力が発表した。九電はこのトラブルについて「2次系設備である脱気器空気抜き管からの微少な蒸気漏れ」があったと説明、4月2日時点での状態は、「配管外面の一部に凹みが確認され、凹み部の1ヶ所に貫通孔を確認するとともに、保温材の内部に、変色や錆のような物の付着を確認」したとしている。また、「本事象による環境への放射能の影響はない」と発表した。つまり、穴が空いた配管は保温材と外装板に包まれているが、外装板の隙間から雨水などが入り込んで保温材が湿り、配管を腐食させ、ついには穴が空いて蒸気漏れを起こした、というのが九電の説明なのである。
前委員会委員長の田中俊一氏は、2013年6月19日、原発の廃炉と再稼働を選別する「新規制基準」が正式決定された際には、「世界一厳しい基準ができた」と豪語した。 その基準をクリアしたはずの原発が、なぜ再稼働後わずか7日目にしてこのようなトラブルが起きたのか? 2018年3月23日に再稼働するまでの点検は完璧ではなかったのか? 記者から質問が次々と飛んだ。
今回蒸気漏れが発生したのは、「2次系設備である脱気器空気抜き管」。「2次系」設備内の冷却水は、原子炉内の「1次冷却水」から蒸気発生器において熱をもらうことで蒸気となり、タービンを回す。この「2次」冷却水が循環する系統を「2次系」という。「1次系」の水は原子炉容器内を通ることから放射能を含むが、「2次系」の水は1次系の水と直接混ざらないため放射能の問題はないとされている。
共同通信の記者は、「再稼働した運転中の原発で二次系とはいえ、配管に穴が空いたというのは、インパクトのあるトラブルだと思うが?」と質問した。
更田委員長は、「そもそもこんなに長期間、(炉は)冷たい状態にはならない。運転していれば温まるので(配管を覆う保温材が湿ったとしても)乾く。7年間という長い停止期間があったから起きたこと」と説明し、原発が7年間余り停止していたことが今回のトラブルの原因との見方を示した。言外に再稼働をさせなかった社会的圧力こそがトラブルの引き金を引いたのだと言っているように聞こえる。
その上で更田委員長は、「個人的な見解で言えば、これはなかなか見つけにくい」と九電を擁護しつつも、「安全上のインパクトに関わるような話ではない。むしろ九州電力がこれによって発電できない、という話であるので、これは『しっかり対処してください』というのが今の立場」と語った。
時事通信の記者は、「二次系(の配管)なので原子力的な問題ではないのかもしれないが、美浜(原発)の事故などを考えると、穴の大きさとか蒸気の漏れ方によっては安全上の問題はあるのでは」と問いただした。
「美浜発電所3号機事故」は、2004年8月9日に発生。関西電力の美浜発電所3号機のタービン建屋において、2次系配管である復水配管が破損した。事故当時、定期検査の準備作業をしていた協力会社の作業員が被災し、5名が死亡、6名が重傷を負った。
更田委員長は、「環境や人に与える影響以外に、作業者安全という視点は重要」と認めながらも、「今回のところは、場所と配管の規模、中を流れている流体の圧力、温度等考えると、美浜で起きた事例とはオーダー(単位規模)が随分違う。直接的に作業者安全を考えなければならないのは(ような)、大きく懸念されるような事故ではないと思う」との認識を示した。
その上で、「自らの作業者の安全を守るのは九州電力の責務」と、事業者である九電の責任を強調した。
記者の質問は、原子力規制委員会の責任に話が及んだ。
西日本新聞の記者が、「規制庁としての検査の対応として妥当だったのか、課題はないのか」と問うと、更田委員長は「規制庁、ないし国の規制当局が発見すべき事柄であったとは思ってない」と述べ、「今回のトラブルは安全上の位置づけでは比較的低く、定期安全管理審査などで書類で報告を受けるグレードのものだ」と答え、規制委員会の対応には問題ないとの立場を示した。
その上で、「手取り足取り、子ども扱いしなきゃならない事業者だったら原子力を扱う資格はない」「もしこんなところまで、あるいは箸の上げ下ろし一つ一つにまで国が関与しなければならないのなら、それこそ、事業者としての体を成していないので、本件に関していうと、やはり九州電力が自らの責任において、また自らの判断によって、きちんと対処してくれることを期待している」と、九州電力の責任を改めて強調した。
「電力会社を初めとする事業者が事業に責任を持つ」のは当然のことではあるが、では、原発事故が起きた時の住民避難については誰が責任を負うのだろうか!? 事故を起こした電力会社が避難路を誘導してくれるのだろうか? 2011年3月11日の福島第一原子力発電所事故以来、このことは不明確なままである。
IWJ記者は、「子どものように手取り足取りできなければ、原子力を扱う資格がないということだが、避難は事業者が基本的に責任を取るということでよろしいか?」との疑問を更田委員長にぶつけた。
(…会員ページにつづく)
玄海原発3号機配管蒸気漏れは「7年後の再稼働」ならではの穴! 更田委員長「手取り足取り…子ども扱いしないとならない事業者だったら原子力を扱う資格はない!」 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/416877 … @iwakamiyasumi
え、規制委が定めた新基準にクリアしたんでしょ?あなたたちこそ何してたの?
https://twitter.com/55kurosuke/status/981507777162964993
玄海原発・蒸気漏れ「子ども扱いしないとならない事業者に原子力を扱う資格はない!」「しっかり対処を」と九州電力の責任強調――「では住民避難は誰の責任で?」IWJが直撃質問~ https://iwj.co.jp/wj/open/archives/416877 … @iwakamiyasumi
責任者は不在のまま、住民を危険に晒す。旧日本軍と何が違うというのか。
https://twitter.com/55kurosuke/status/982379951952285696