首都圏で暮らし、働く人々の数は、3700万人を超えるという。数え方次第では、世界最大の人口密集地である。その上空を、沖縄に墜落したあの「欠陥機」オスプレイが飛び回っている事実を、どれほどの人々がご存知だろうか。そもそも、東京都下の福生市に横田基地が存在し、そのために首都圏の上空の巨大な空間を在日米軍がレーダー進入管制空域(radar approach control=ラプコン)として、支配していることをどれだけの人が理解しているだろうか。
▲横田ラプコン(作成:IWJ)
2016年12月18日、「横田基地の撤去を求める座り込み行動」が横田基地(東京都・福生市他)と車道一本を挟んだフレンドシップパークで行われた。同行動は今回で93回目。
マスメディアが取り上げず、したがって、多くの人が知らない、しかし粘り強い反対運動が続けられているのである。
普天間基地のMV22オスプレイの飛行全面禁止と撤去、横田基地へのCV22オスプレイ配備計画の白紙撤回、オスプレイが名護市安部(あぶ)の海上へ墜落した際に、「県民や住宅に被害を与えなかったことは感謝されるべきだ」などと発言したニコルソン四軍調整官の「暴言撤回」と沖縄県民への謝罪などを要求した決議案が発表された。同決議は内閣府と防衛省に送られる。
横田基地の撤去を求める西多摩の会の高橋美枝子さんは、3歳のときに川崎大空襲を経験したという。
高橋さんはIWJのインタビューに応え、「『戦争だけはやっちゃだめよ』と母親はよく言っていた」と語り、「日本にある米軍基地から(軍機が)外に飛んでいって、私たちの知らないところで空爆などをやっている。そういう基地に対して何も言わないということは、私たちが加害者の側についているのと同じ。憲法9条のある日本で横田基地のような戦争のための基地があるのはおかしい」と強調した。
▲横田基地の撤去を求める西多摩の会・高橋美枝子さん
その上で、「今回沖縄では『ドラゴン06』というオスプレイが墜落したが、同機は10月には横田基地に来て4日間滞在していた。また、11月4日には東富士演習場(静岡県)に来ていた。12月8日は岩国基地(山口県)に行っている。つまり(墜落機を含めて)、オスプレイは日本全国を飛び回っているということ」と説明した。
続けて、高橋さんは「今回沖縄では空中給油のときに墜落したという。11月4日、オスプレイ7機が普天間から直接東富士演習場に来たが、その時には2回くらい空中給油をしてきている。以前は、普天間から岩国、そして、厚木または横田に寄って、東富士へ行っていた。
しかし今は、途中それらの基地には寄らずに、空中で給油をしながら、行きたいところに行くという訓練を米軍は始めた。日本の国土のどこの上空で給油をしているかわからない。日本のどこで墜落してもおかしくない」と深刻な懸念を訴えた。
- タイトル 横田基地すわりこみ行動
- 日時 2016年12月18日(日)13:30〜15:30
- 場所 フレンドシップパーク(東京都福生市)
- 主催 横田基地の撤去を求める西多摩の会
「人口の大密集地の首都圏にある横田基地が、戦争のための基地に変化してきている。ここにオスプレイの配備があったら大変なことになる」
横田基地の撤去を求める西多摩の会・事務局長の寉田(つるた)一忠さんは、IWJのインタビューに応え、横田基地の機能が強化されていると指摘して、次のように説明した。
「米軍再編が(ブッシュ政権化の)2005年から6年に始まった。そのロードマップの一つとして、自衛隊の総体司令部が府中から横田に移転し、(オバマ政権化の)2012年に本格的に動き出した。同年の1月10日から、一回に数十人が飛び降りるようなパラシュート降下訓練を、横田でやるようになった。
また、C130という輸送機の訓練が年々激しくなってきて、低空で急旋回するなど実戦的な訓練に入ってきた。騒音や恐怖を訴える市民の声が聞かれるようになってきた」
その上で、「この人口の大密集地の首都圏にある横田基地が、戦争のための基地に変化してきている。ここにオスプレイの配備があったら大変なことになる。テロにも狙われる」と訴えた。
▲12月18日に開催された「横田基地の撤去を求める座り込み行動」には、主催者発表によれば106名が参加した。集会が行われたフレンドシップパーク(東京・福生市)の車道を一本挟んだ塀の向こう側に、横田基地が広がる。写真の背景に写るビルと樹木は基地の敷地内のもの。
米海兵隊のオスプレイが名護市の安部の海上に墜落した件に関しては、IWJ記者が現地に飛び、オスプレイの残骸を手にとるなど、墜落現場における肉薄した取材や、地域住民の方々などにインタビューを行っている。こちらもぜひ併せてお読みいただきたい。
またIWJでは、2016年12月、元朝日新聞記者でカナダ・クイーンズ大学大学院博士課程在籍の小笠原みどり氏にインタビューを行っている。小笠原氏は、1977年の横浜米軍機墜落事件に実際に遭遇されてもおり、当時の状況と、その後の事故の経緯について語られている。この時も米軍は不起訴となり、被害者がないがしろにされ、そのお一人が謎めいた亡くなり方をされている事実についても言及されている。
日米地位協定のもと、日本政府が米軍を擁護しているという実態の横行を、小笠原氏は「不正義の制度化」という言葉で表現されている。ぜひ、以下の記事を併せてご覧いただきたい。
【奪われた空】スノーデン氏が暴く!米国による巨大監視システムの実態とは――岩上安身による小笠原みどり氏(元朝日新聞記者、カナダ・クイーンズ大学大学院博士課程在籍)インタビュー 2016.12.26
なお、墜落事故の第一報は、以下の記事にまとめているので、あわせてお読みいただきたい。