「犯罪者が犯罪を認めているのに『でも犯罪ではありません』と居直っているようなもの」〜安倍内閣「白紙領収書問題」について上脇博之教授が一刀両断!ドミノ辞職続く富山市議らの不正受給問題との共通点は!? 2016.10.10

記事公開日:2016.10.10取材地: テキスト
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(文・原佑介)

 次々と発覚する閣僚らの「白紙領収書疑惑」。

 稲田朋美防衛相の資金管理団体の政治資金収支報告書に添付されていた領収書のうち、約260枚(約520万円分)の筆跡が同一人物によるもので、さらに菅義偉官房長官の資金管理団体が政治資金収支報告書に添付した領収書のうち約270枚(約1875万円分)の金額欄が同じ筆跡だったことが明らかになっている。高市早苗総務相にも同様の疑惑がかかっている。

 この不正疑惑について2016年10月6日、参院予算委員会で日本共産党・小池晃議員に追及された稲田防衛相と菅官房長官は、自らの事務所で白紙領収書に金額などを加筆したことを認めた。

 しかし稲田防衛相らは、「未記載の部分の日付、金額を正確に記載した」と述べ、「何ら問題はない」と開き直っている。

 政治資金規正法を所管する高市早苗総務相も、「法律上、発行者の領収書作成方法が規定されていないことからも法律上の問題は生じない」と擁護するが、小池議員によると、高市大臣自身にも「白紙領収書疑惑」が存在するという。

 民間企業では絶対に許されないこの行為。専門家はどうみているのか。IWJは今回、政治資金オンブズマンの共同代表で法学者の上脇博之・神戸学院大学法学部教授に話を聞いた。

▲岩上安身のインタビューにこたえる上脇博之教授(2016年4月5日)

▲岩上安身のインタビューにこたえる上脇博之教授(2016年4月5日)

 上脇教授は「政治資金規正法違反である」と明言し、「徴収義務違反と領収書の写しの添付義務違反に該当する」と断言。高市大臣に対しては、「犯罪者が半分犯罪の事実を認め、自白はしているのに、『だけど犯罪ではありません』と居直っているようにみえる」と痛烈に批判した。

「あれはもう政治資金規正法違反ですよ。稲田防衛相らは半分、自白しています」

 国会議員らの政治資金の流れに不可解な動きがないかを監視し、悪質な場合には刑事告発をする。政治資金オンブズマンや落選運動を支援する会の共同代表として、長年活動してきた神戸学院大学の上脇博之教授。今回の「白紙領収書疑惑」について、上脇教授は「あれはもう政治資金規正法違反ですよ」と明言した。

 「稲田防衛相らは半分、自白しています。『自分たちで書いた』と認めていますよね? ということは、政治資金規正法に違反するんです。それはなぜか。

 総務省の出している『国会議員関係政治団体の収支報告の手引き』を見ると、受け取った側が追記することは認められていません。不備があれば追加で書いてもらうか、再発行してもらえと書いてあります。なので、稲田防衛相らの件は、徴収義務違反と領収書の写しの添付義務違反に該当します」

▲総務省HP「国会議員関係政治団体の収支報告の手引き」

▲総務省HP「国会議員関係政治団体の収支報告の手引き」

「もし白紙領収書に自ら書いていいなら、領収書はいらない。政治資金収支報告書だけを提出すればいいということになる」

 政治資金規正法は、第11条で、「(政治団体は)一件五万円以上のすべての支出について、当該支出の目的、金額及び年月日を記載した領収書その他の支出を証すべき書面を徴さなければならない」と定めている。

 当然だが、「支出を証すべき書面」を、白紙領収書を使って自らの手で用意すればいいなどとは書いておらず、「支出を証すべき書面を(相手から)徴さなければならない」と規定しているのである。

 稲田防衛相や菅官房長官などは、自らの事務所で領収書に金額を記入したことを認めながらも、「政治資金パーティー主催者側の了解のもとで未記載の部分の日付、日付、金額を正確に記載した」と述べ、「何ら問題はない」と開き直っているのである。

 「もし、自分たちで白紙領収書にあとから書いていいなら、領収書はいらない。(自己申告の)政治資金収支報告書だけを提出すればいいということになります。だけど法律では、『領収証の写しがないとダメですよ』とはっきり記されている。発行者によって書かれている領収書があって初めて、『書かれている内容は正しい』と担保されるんです」

 上脇教授はそう述べ、「稲田防衛相らは政治資金規正法を明らかに無視しています。『手引』は、『金額』や『年月日』など、ひとつでも漏れがあれば領収書にはならない、と言っているわけです。彼らは、それをわかったうえで白紙領収書をやっているんですよ」と、その悪質さを批判した。

▲「領収書」を定義する総務省『国会議員関係政治団体の収支報告の手引き』

▲「領収書」を定義する総務省『国会議員関係政治団体の収支報告の手引き』

高市大臣の姿勢は「犯罪者が犯罪の事実を認めているが、『だけど犯罪ではありません』と居直っているようなもの」

 「手引」は、法律の条文を補い、具体的な中身の解釈を記す、法律の「解説書」のようなものである。

 しかし、政治資金規正法を所管する高市早苗大臣は、「法律上、発行者の領収書作成方法が規定されていないことからも法律上の問題は生じない」などと、法の定めと真逆の理論を展開し、開き直っているのである。

 上脇教授は高市大臣の姿勢を厳しく指弾する。

 「僕からみると、犯罪者が、半分犯罪の事実を認め、自白はしているが、『だけど犯罪ではありません』と居直っているようにみえますね。高市大臣は、総務大臣として発言したというよりも、犯罪容疑者として発言しただけの話です。あれを真に受けては大きな勘違いをすることになります」

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