「賛同できない。日本全国、悲惨な中で、皆さんがたいへんご苦労されて、今日の豊かで平和で自由な国を築き上げてきた」──。これは、2015年9月8日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設をめぐる政府と沖縄県の集中協議の後、菅義偉官房長官が述べた言葉である。
翁長雄志知事の「戦後の強制接収が普天間問題の原点」という主張に反論したものだが、沖縄の戦後史に対する無理解が露呈した官房長官のこの発言をうけて、沖縄現代史の研究者らが、2015年12月15日、都内で抗議声明を発表、記者会見を開いた。
マイクを握ったのは戸邉秀明氏(東京経済大学准教授)、森宣雄氏(元聖トマス大学准教授)、鹿野政直氏(早稲田大学名誉教授)の3人。森氏は、「日本の本土と沖縄とでは、(戦後の)『占領』のされ方が違うということを、広く世間に伝えることができなかったのは、沖縄現代史を研究する自分たちの怠慢ではないかと痛感した」とも語った。
会見は、この3人に加え、欠席した冨山一郎氏(同志社大学教授)を加えた4人による、11月24日の声明文発表に伴うもの。声明文には「日本政府の国務大臣が、公式の場でこのような歴史認識を表明したことに対し、私たちは、沖縄と日本の戦後史の研究に携わる者として抗議し、発言の撤回を求める」とある。
声明文は会見に先立ち、菅官房長官宛で、申し入れ書とともに内閣府に提出された。
菅発言は本土の「沖縄観」を象徴する
「先ほど14時半に、菅官房長官宛に(9月8日の発言に抗議し撤回を求める)申し入れをした」との戸邉氏の一言で会見はスタートした。
申し入れに至るまでの経緯は、森氏が説明。森氏は「菅官房長官の発言については、当初、『困ったものだ』という感想を抱くだけだったが、後になって、官房長官が(集中協議の場で)『私は戦後生まれなので、沖縄の歴史は、なかなかわからない』と口にしていることを知り、これは認識不足の問題ではない、知りたくないことはないことにする、彼の意思の表れだと判断した」と述べ、「それと同時に、日本の本土と沖縄とでは、『占領』のされ方が違うということを、広く世間に伝えることができなかったのは、沖縄現代史を研究する自分たちの怠慢ではないかと痛感した」と言い継いだ。
1945年の敗戦から1952年のサンフランシスコ講和条約発効までの約7年間、本土も連合国の占領下に置かれたが、それは日本政府を通じた「間接占領」であり、沖縄の、米軍が直接統治を行う「軍事占領」とは、質の面で大きく異なることが知れ渡っていない、との言い分である。森氏は鹿野氏に声をかけ、菅官房長官の発言に抗議する「声明文」を書くことを決めた。
2人は菅官房長官の言葉の背景には、そのような発言を許す、本土に横たわる底の浅い「沖縄観」があるとの認識で一致したという。鹿野氏は「9月8日の菅官房長官の発言を黙認すれば、『私がこれまで(沖縄研究者として)書いてきたことは一体何だったのか』というオチがついてしまう。だから、森氏からの(声明文作成の)話を快諾した」と振り返った。
メディアの報道が「真の沖縄」を知らせる
【「外務省が米の機密解除に反対」 史実を隠す「外交の闇」 元諮問委員が証言!】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160106-00010011-nishinp-int
【映画で見る沖縄戦 「激動の昭和史 沖縄決戦」<予習編> 【WOWOW】#172】
https://www.youtube.com/watch?v=kPWzfW5Qf14