福島第一原発事故で全村避難が続く福島県飯舘村――。その飯舘村の村民の約半数にあたる2837人が11月14日、放射性物質で村の生活基盤が壊されたとして、賠償の増額を求め、原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた。
同日、住民と弁護団は参議院議員会館で記者会見を開いた。以下、その模様をお伝えする。
(取材:細井正治、記事構成:原佑介)
福島第一原発事故で全村避難が続く福島県飯舘村――。その飯舘村の村民の約半数にあたる2837人が11月14日、放射性物質で村の生活基盤が壊されたとして、賠償の増額を求め、原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた。
同日、住民と弁護団は参議院議員会館で記者会見を開いた。以下、その模様をお伝えする。
記事目次
■ハイライト
司会・保田行雄弁護士「先ほど、原子力損害賠償紛争解決センターにADR(裁判外紛争解決手続き)の申し立てをしてきました。今回、申し立てしたのは、全村民の約半数に当たる2837人、737世帯です。まず、飯舘村民救済申立団団長から一言」
長谷川健一団長「飯舘村民は、福島原発の恩恵を全く受けて来ませんでした。そして事故後、まる三年以上、ずっと黙って待ち続けてきましたが、結局、自ら声をあげ、怒りを表明して、自立へ向かって歩み出さなきゃだめだと思い、3月以降、少しずつ動き始めて、本日に至りました」
河合弘之弁護団共同代表「メディアの皆さんにまず認識、報道していただきたいのは、今までの単なるADR申し立てではなく、『団結して怒りを形にする』ということです。弁護団は今まで差止訴訟を闘ってきた弁護士が中心です。
『謝れ、償え』に加え『なくせ原発』という闘いの一環としてでなければ、真の賠償も勝ち取れないと考えています。『石の上にも三年』といいますが、飯舘村の人たちは、もう充分に待ちました。そして、バラバラのまま、せいぜい東京電力に恐る恐る請求する、といった程度だったのです。
しかし今回は、単なる『お金ください』とは違うのです。当然の損害賠償であり、それで自立へと向かっていくのです。これを一句に込めると、『悔しさを(『言い立て』と掛けて)飯舘村のADR』」
只野靖弁護団事務局長「東京電力に求めることは、まずは心からの謝罪。次に、飯舘村民は福島県内でも放射線被曝量が圧倒的に多いという調査結果がいくつも出ており、健康不安など精神的苦痛への慰謝料として300万円。また、避難生活に対して、現在の月10万円を含め35万円(交通事故の入院費でも一般的に53万円、むち打ち等他覚症状のない場合でも35万円が認められている)。
すでに他の福島の地域でも『ふるさと喪失慰謝料』等として裁判で争っているグループもありますが、飯舘村民の生活を破壊した、という損害賠償としては2000万円。不動産賠償などは少しずつ進んできていますが、住居確保に関わる賠償は、実際に建てたり買ってから、その領収書を持っていかないとダメ! などとされてしまっています。それでは本来の損害賠償でありません。無条件にすべきでしょう。
最後は、本件申立についての弁護士費用です。ほぼ実働の弁護士95人が週末ごと福島に通っては2~6人ずつ各一時間以上、ていねいに聴き取る、ということを、少なくとも737全世帯から、各一人以上から行ないました。そして、共通の損害を抽出。個別の部分は今後、追加していく見込みです」
質疑応答へ。
テレ朝記者「個々でなく集団でやる意義は?」
長谷川団長「団体としては浪江がやっていますが『町』として、飯舘は村民自身が団結してやります。でなければ上に届かない。10人20人でなく3000人が一丸となり、東電に、国に動いてほしいと訴えるんです」
NHK記者「3年8ヶ月過ぎたが、なぜ、この時期なのでしょう?」
長谷川団長「東電、あるいは国や村が『何とかしてくれるんだろう』と待ってきたが、結局自分たちで動かないと ダメだと思ったんです。(背景のバナー)『謝れ、償え、かえせふるさと飯舘村』に全て込められている。もう二度と元には戻らない葛藤の中で、率直な謝罪、賠償を、と」
菅野哲副団長「私たちも日本国民なんです。しかし待ち続けても難民に等しい現状のまま。そして今後は棄民状態にされる恐れも。飯舘村民としての誇りを捨てられない、捨てたくない、国に見放されたくない。そうした思いが今回の申し立てになったと思います」
読売記者「飯舘村は『帰還困難』『準備』『避難解除』、三区域に区分されていますが、今回の申し立て村民の内訳は?」
保田弁護士「多くは帰還準備とかですが、飯舘村全体として本当に戻れるのか、ということを正面から問うていきたいのです」
海渡雄一弁護士「ここが今回のひとつのポイントです。現在、多くの人は仮設住宅に住んでいて、最後まで仮設に居たくないから、という理由で飯舘村に帰ろうという人も少数はいます。しかし、多くは戻りません。戻れません。飯舘の豊かな自然、助け合いの生活は二度と戻らないとみんな覚悟を決めています。その上での申し立てなのです」
読売記者「『ふるさと喪失慰謝料』みたいなADRは初めてでしょうか?」
保田弁護士「はい。すでに裁判ではいくつもあるようですが、ADRとしては初めてだと思います」
共同通信記者「『自立した生活をめざす』と言っていましたが、現行賠償制だと何がダメで、今回の申し立てで、皆さんにとってどのような希望、展望が生まれると思いますか?」
長谷川団長「いずれ避難解除、賠償も打ち切りとなり、自立していかなければなりません。しかし除染も効果は50%だけ。しかも山はやらないので、また放射性汚染物質が流れてくるのです。そんな中で帰ったとして、果たして暮らしていけるのか? 元の仕事・生活は無理な状況です。そこで何とか再建・自立していけるよう、勝ち取りたいのです」
共同通信記者「浪江町のADRが出ましたが、東電側はあくまで個別の事情に対し支払うものだと主張して、頑なに拒否し続けております。今回も同様では?」
海渡弁護士「そのために全ての家族、家庭の『個別事情』を聴取し、申立書数千ページにまとめたのです」
東京新聞記者「今回これだけの村民が結集したのはなぜでしょう?」
長谷川団長「私も最初は千人くらいかと。せめて『ADRとは何か』という説明だけでもさせてほしい、と各区長さん達にもお願いに回りました。結果、みなさん、思いは同じだったのです」
東京新聞記者「他のADRにおよぼす意味は?」
河合弁護士「数が増えるほど東電が困り、結局、一人あたりが減るなど損するんだという村の幹部もいますが、敗北主義でしょう。少人数でお願いしても見向きもされません。東電も経産省も、原発を続け再稼働を狙う中で、もう損害、賠償額もできるだけ少なく値切ろうとしています。
現行の月十万…つまり1日3千円ほどでは日々を生き延びるだけで、その後の生活再建、自立につながりません。しかし、15万円への増額でさえ蹴り、逆に10万円さえ打ち切ろうという相手です。団結して闘わなければ勝てません」
フリーライター畠山記者「申し立てしていない村民に何か一言ありますか?」
長谷川団長「個別で先行の方々と合わせ、村民の3分の2になります。ただし、もう締め切る! ということではありません。残り3分の1の方々にも、私たちはいつでも扉を開けて待っています! と」
河合弁護士「私の事務所にも『全然知らなかった! 福島民報だかニュースで驚きました! 今からでも間に合いますか?』などといった問い合わせが何件もあります。だから、みなさん今回も報道をよろしくお願いします」
(…会員ページにつづく)
いまだに全村避難が続く飯舘村民の約半数2837人が決意のADR申し立て「誇りを捨てられない、捨てたくない、国に見放されたくない」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/205859 … @iwakamiyasumi
安倍総理、「日本を取り戻す」の中に飯舘村及び福島は入ってますか?
https://twitter.com/55kurosuke/status/534979577957724160