7月20日(日)、福岡市早良区にある九州大学西新プラザで、NPO法人チェルノブイリ医療支援ネットワーク(CMN)主催による獨協医科大学准教授・木村真三氏講演会「被災地の住民とともに活動する専門家からの最新報告」が開催された。
また、講演会は二部構成となっており、後半からは、旧ソ連の医師免許を持ちチェルノブイリで医療通訳を務めている山田英雄氏も加わりトークセッションが開かれた。木村真三氏は、チェルノブイリ、福島の原発被災地で、住民に寄り添いながら放射線量の測定や汚染マップの作成、健康調査などに取り組んでいる。
木村氏は講演の中で、「『経済』という言葉の裏には、多くの人たちの犠牲上に成り立っていることを知って欲しい。本当の復興支援は、福島のことを知ることからはじまる」と参加者に語った。
- 14:10~15:30 第1部 木村真三氏(獨協医科大学准教授・国際疫学研究室福島分室室長)基調講演
- 15:45~16:45 第2部 トークセッション 木村真三氏×山田英雄氏
福島県での甲状腺癌増加 「心配ない」とする証拠はどこにもない
ベラルーシ共和国のブレスト州は、チェルノブイリ原発から約250㎞~500km離れているが、甲状腺がんが2008年~2012年の間だけでも890例、報告されている。この内、755人は女性で割合としては圧倒的に高い。事故から28年たった現在でも、甲状腺がんは、右肩上がりに発症件数が増加している。
一方、福島県では事故当時18歳以下であった人、約36.8万人が甲状腺検査の調査対象となっている。平成26年3月末の時点で、28.7万人の一次検査が確定。この内、二次の精密検査(細胞診)で「悪性または悪性の疑い」と判断されたのは89人で、この内50人は甲状腺の手術をおこなった。
木村氏は、「事故から何年たったから安心ということは全くなく、これからも増加していく可能性は十分にある」「すべての検査が終わっていない段階で、心配ないと断言するような証拠はどこにもない」と語った。
また、原発事故直後から福島県に入り放射線測定などを続けていた木村氏本人も、橋本病(慢性甲状腺炎)を発症したことが講演中に公表された。現在、細胞診をおこない、より詳細な結果を待っている状態であるという。
美味しんぼ・鼻血問題は、風評被害?
木村氏は、現在、福島県二本松市の小学校などで、放射線の影響を正しく理解してもらう為の、出前授業をおこなっている。このような授業をおこなう目的は、「福島の子供は、福島の出身というだけで、将来必ず差別を受ける。差別を受けた時に、論理的にきちんと放射線についての健康への影響を説明できるようにするため」であるという。
また木村氏は、先日話題となった漫画「美味しんぼ」の鼻血問題のせいで、福島県を訪れる人が減少したことを指摘。この件を「風評被害」と断じた。木村氏は、「事実としてあったことは認める」としながらも、鼻血と放射線との因果関係に否定的な見解を示した。
原発の再稼働には、住民投票の実施を
木村氏は、再稼働が強引に進められている鹿児島県の川内原発について、「火山などのリスクが、全く考慮されていない。」として、再稼働には反対の立場を示した。
また、マグニチュード9~10が想定されている南海トラフ地震にも言及し、中央構造線のすぐそばに位置する愛媛県の伊方原発などについても再稼働に反対であるとし、「原発を再稼働させようとするのであれば、最低限、県単位や全国で、原発の再稼働の是非を問う住民投票を実施すべきではないか?」と訴えた。
ウクライナとベラルーシ 全く違う国内情勢
チェルノブイリ原発事故により甚大な被害を受けたウクライナとベラルーシであるが、事故後の両国の対応や社会情勢は全く違うものになっていると、木村氏と山田氏は指摘する。
ベラルーシは、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領のもと、ヨーロッパ最後と言われる独裁政権が続いているが、ウクライナよりも経済的な格差が圧倒的に少なく、国民は一様に「豊かな顔」をしているという。トイレなどの衛生状態も、ベラルーシは、どこも清潔に管理されているのに対し、ウクライナは非常に不衛生とのこと。
一方、ウクライナは、東部で激しい内戦状態が続いており国内情勢は非常に不安定である。しかし、首都キエフよりも西側の州では、現在でも全く平和な状態にあり、ほとんど国が分断されて他人事の状態にあるという。
甲状腺がんについても詳しく話してる。
全年齢に経過観察が必要。
必聴です
(経済という言葉の裏には、多くの人たちの犠牲 の 上に成り立っているのを、知ってほしいと…)
経済という言葉の裏には、多くの人たちの犠牲上に成り立っていることを知って欲しい。
本当の復興支援は、福島のことを知ることからはじまる」と参加者に語った。