府知事選対論、「Xバンド」争点にならず ~山田氏×尾崎氏の舌戦は基地問題以外のテーマで 2014.3.15

記事公開日:2014.3.15取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 京都市上京区の同志社大学・今出川キャンパスで、2014年3月15日(土)に行われた「マニフェスト志向型公開討論会」では、任期満了に伴う京都府知事選(4月6日投票予定)への出馬を表明している、現職の山田啓二氏と新人で医師の尾崎望氏が、景気、地域間格差、医療といったテーマで激論を交わした。

 山田氏のスピーチは、府知事としての、これまでの取り組みが成果を上げてきていることのアピール色が強く、今後に関しては、伝統産業拠点の創設やイベント開催といった明るい政策メニューを、集まった市民らの意欲を鼓舞するような口調で掲げてみせた。

 一方の尾崎氏は、京都が抱える諸問題で、悪化が顕著な部分に照準を合わせ、当該する統計データで説得力を持たせつつ、議論を展開した。「状況改善には、府政の刷新が肝要」との立場から、最低賃金保証の徹底など、庶民を重視した政策を標榜。住民自治の掘り起しをベースにした「地域自立」の必要性にも言及した。

 なお、「有事の際、敵軍の攻撃を受けるリスクがある」との懸念から、地元住民らの間で「配備反対」の声が強まっている、米軍のXバンドレーダーの問題は、まったく話題に上らなかった

 同レーダーは、弾道ミサイルを正確に追尾できる、米軍が誇る高性能軍事装置で、昨年9月に京都府が受け入れを表明。12月には小野寺五典防衛相が、今年中に、京都府京丹後市にある航空自衛隊経ヶ岬分屯基地内に設置される見通しであることを明らかにしている。

■ハイライト

  • 出席立候補予定者(着席順) 山田啓二氏(現京都府知事)/尾崎望氏(小児科医、京都民医連会長)
  • コ―ディネーター 村田晃嗣氏(同志社大学学長)

 共催者が実施したアンケートの結果から、「有権者の関心が高いテーマについて、討論が行われる」との旨が、コ―ディネーターの村田晃嗣氏(同志社大学長)によって伝えられた。

 最初のテーマは、もっとも関心が高かったとされた「景気」。尾崎氏は「今の京都の景気は、全国で最低水準にある」と訴え、事業所の廃業率や給与の落ち込みなど、京都の現状を具体的な数値で指摘した。

 そして、自身が掲げる景気対策を説明。「消費増税に強く反対する。日本の事業所数の9割超が中小企業であることに鑑み、京都にも『中小企業振興基本条例』を制定するなどして、地元の中小企業に仕事とお金が向かうようにする。『公契約条例』で、2次、3次の下請けまで『最低時給1000円以上』を浸透させたい」などとした。

アベノミクス効果の認識で見方が分かれる

 山田氏は「京都の景気の現状は厳しい」としつつも、「京都の失業率は(2002年は)6.5パーセントだったが、現在は3.5パーセントにまで回復している」と、安倍政権が進める経済政策、アベノミクスの効果を背景に、京都の景気は好転しているとの認識を示した。その上で、「産学連携の下で、企業ネットワークを強化し、物流と伝統産業の拠点を京都に作りたい。東京オリンピックを見据えた、文化の祭典も開催したい」と表明した。

 これに対し、尾崎氏が「景気認識が、私と異なる。アベノミクス効果を中小企業は実感できていない」と異論を唱えると、山田氏は「廃業率が高いといっても、6件に1件は飲食関係で、飲食関係の場合、若い世代に顕著な『居酒屋よりカラオケ』といった趣味趣向の変化も影響している」と切り返した。

 とはいえ山田氏も、「コアは中小企業」と発言しており、中小企業の活性化が急務としている点では尾崎氏と一緒。「中小企業の人材育成を担う大学を作りたい」と語った。

 過疎化や高齢化を背景にした京都府内の「地域格差」については、最初に山田氏が「個々の地域が、どれだけ魅力をアピールできるかに現状打開のカギがある」と発言。「府の役割は、条件の悪い地域を(インフラ整備の面などで)支援すること」と述べ、年内に舞鶴若狭自動車道が全面開通予定であることと、その経済効果などを説明した。

エネルギー政策は、共に「脱原発」

 尾崎氏は、地域格差についても、データを基に現状の厳しさを訴えた。「市町村合併が始まった2003年と比較して、人口が増えたのは長岡京市、京田辺市、木津川市、精華町のみ。残りは、京都市を含め、すべてが人口減だ」。

 尾崎氏は1人当たりの所得格差が広がっていることにも触れ、「対策には、住民自治の掘り起しが重要」と力を込めた。「(山田氏とは)求めているものが、だいぶ違う。私は、農村や山村が自立した姿を求めている。大規模なインフラづくりは考えていない」。

 医療については、尾崎氏が「国の社会保障制度の改定が、住民の命と健康を守る方向に向かっていない」と指摘した上で、「京都では、医療・介護面の格差が鮮明だ。地域によっては極端に医師が不足しており、助かる命が助からない例がある」と指摘。客席に向かって、自身のサイトに対策メニューをアップしていると伝え、「中学生までは医療費を無料にしたい」とも語った。

 一方の山田氏は「医師不足は深刻な問題」と指摘しつつも、「(昨年4月に)府立与謝の海病院を府立医大附属病院に組み入れたことで、地域医療の拠点として機能を強化した」と話した。

 教育に関しては、山田氏が「失敗の大切さを子どもたちに教えたい。強い子どもたちをつくりたいと」と、競争の色合いが濃い教育環境の有用性を主張すると、尾崎氏は「ひと握りの子どもたちには、そういうやり方が有効かもしれないが、そうではない子どもたちの方が多い」と反論した。

 原発政策を巡っては、2人とも「脱原発」の立場を鮮明にした。尾崎氏は「大飯原発からの距離は、京都府北部が30キロ圏内に入り、京都市内も60キロ圏内だ。避難計画を作っても、実際の避難では不可能なことがいくつも出てくるに違いない。よって、脱原発を掲げる」と言明。山田氏は「原発は、たとえ停止していても危ないもの。原発依存からの脱却が必要」とし、「京都だけで『脱原発』を叫ぶのではなく、関西広域連合で団結して、その決意を表明したい」と力を込めた。

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