「東京を世界一働きやすく、暮らしやすい、希望の持てる街にします」──。
都知事選の告示日である2014年1月23日、立候補した前日弁連会長の宇都宮健児氏は新宿アルタ前で第一声をあげ、集まった聴衆に、「みんなが暮らしやすい、世界一働きやすい街にする」と訴えた。
午前10時半、選挙カーに立った宇都宮氏は、自身の43年間の弁護士としての実績を紹介。サラ金の高利を大幅に引き下げる、グレーゾーン金利を撤廃させる「貸金業法」や、地下鉄サリン事件被害対策弁護団の団長として「オウム被害救済法」を成立させたこと、さらに「年越し派遣村」の名誉村長として貧困問題に取り組んだことなどをアピールした。
「弁護士経験を活かし、東京都を、お年寄りも若者も、女性も男性も、障害のある人もない人も『みんなが暮らしやすい、世界一働きやすい街』にするため、都知事選挙挑戦を決意した」。
こう語る宇都宮氏は、都知事選挙への立候補にあたって五つの「基本政策」と、二つの「特別政策」を用意した。
- 日時 2014年1月23日(木) 10:30~
- 場所 新宿アルタ前(東京都新宿区)
東京を「世界一働きやすく、暮らしやすい、希望の持てる街」に
一つ目の基本政策は、「東京を世界一働きやすく、暮らしやすい、希望の持てる街」にすることだという。「石原、猪瀬都政は福祉を切り捨てた。一人あたりの老人福祉予算は23%削減。全国2番目の高さだったのが、石原都政から最下位近くになってしまった」。
続けて、「老人ホームに入れない高齢者が4万3千人もいる。保育園も足りない。待機児童は2万人を超える。福祉を充実させ、老人ホームに入れない高齢者や待機児童の問題を解消する」と述べ、同時に、「石原氏以降、都営住宅が一個も作られていない」とも指摘。「入りたくても倍率が高い。都営住宅に入れない人は20万人もいる。都内にたくさんある空き家を、都が借り上げ、公共住宅として提供する。ヨーロッパですでにある『家賃補助制度』も検討し、住まいの貧困を解決する」とした。
また、若者を使い捨てにする「ブラック企業」を規制する条例や、「過労死防止」条例なども実現すると訴えた。
首都直下型地震対策
首都直下型地震発生の可能性が指摘されている今、建物の耐震工事が急がれている、と宇都宮氏は言う。「石原都政から、東京都の防災、震災対策予算は、それまでの1兆円から6千億円に激減した。東京都は、道路にはお金を出すが、『建物の耐震工事は自分でやりなさい』というのが基本方針だ」。
こうした都政の在り方を宇都宮氏は批判し、「お金がない人は耐震化工事、不燃化工事ができない。『震災が起これば死んでもしかたない』というのか」と怒りを込め、二つ目の政策として「都民の命を大切にしない防災対策を転換し、改修工事、補修工事に力を入れる」と語った。
脱原発・脱被曝の推進
東京都は福島第一原発で作られた電力の最大の消費地であったことからも、東京都民には、福島第一原発事故被害者を最大限支援する責任がある、と宇都宮氏は主張する。
「株主総会で、福島第一第1、第2の廃炉を提案し、柏崎刈羽再稼働に反対するとともに、廃炉を提案する。これは泉田新潟県知事と連携しながら進めていく」と三つ目の政策の構想を語った。
教育政策と“対安倍内閣”政策
第四の政策として、宇都宮氏は「子どもの教育の改革」を挙げる。「いじめのない、のびのびと子どもを守れる学校を作る。そのためには教員が自由でないといけない。管理統制や日の丸・君が代強制をやめさせ、30人学級を実現する」。
そして、最後の基本政策を、「安倍政権の暴走のストップ」だとする。「憲法を守り、東京からアジアへ向けて平和のメッセージを発信しよう」とし、東京都が国のブレーキ役になると位置づけた。
二つの特別政策 ~五輪構想と議会でうやむやになった猪瀬問題
これら五つの基本政策とは別に、二つの「特別政策」があるという。一つは「シンプルで、環境へ配慮した」、宇都宮氏独自の「東京オリンピック構想」だ。
「東日本大震災の被災者や原発事故の被害者も喜べるように、被災者の生活再建に全力を注ぐ。また、『平和と友好の祭典』にするためにも、世界各国との関係改善に努める。そして、パラリンピックを成功させるために、東京をバリアフリーの街に作り変える」
このような構想を披露し、オリンピックに向けたカジノ招致の動きには、きっぱり「反対」と断言した。
もう一つの「特別政策」が、猪瀬直樹前都知事が、医療法人「徳洲会」グループから5千万円を受け取っていた問題の追及だ。「『金と利権』と決別し、クリーンな都政を実現する。このような政策を実現するためには、みなさんの支持が必要です」と聴衆に語りかけ、最後に「名護市長選で、沖縄の人は、札束に魂を売らなかった。これに続き、都民の心意気を示そう」と呼びかけ、第一声を締めくくった。