「環境により遺伝子の発現パターンが変わってしまい、子や孫の世代まで伝わってしまう場合がある」~5.21 新ちょぼゼミシリーズ「オルタナティブな日本をめざして」第75回『化学物質とエピジェネティクス』―講師:澁谷徹氏 2022.5.21

記事公開日:2022.5.26取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(取材、文・浜本信貴)

 2022年5月21日、午後1時30分より、東京都千代田区のたんぽぽ舎にて、環境エピジェネティクス研究所所長の澁谷徹氏を講師に迎え、新ちょぼゼミシリーズ「オルタナティブな日本をめざして」第75回「化学物質とエピジェネティクス」が開催された。

 講師の澁谷氏は、名古屋大学大学院農学研究科修了の農学博士(発生遺伝学)であり、そのまま研究職には進まず、財団法人・食品薬品安全センターで30年間、遺伝毒性の試験・研究(遺伝毒性学)に従事し、退職。その後、文献検索を中心として「環境エピジェネティクス」特に「継世代エピジェネティック遺伝(TEI)」についての研究を行っている。

 「エピジェネティクス」とは、澁谷氏によれば「突然変異によらないで、さまざまな環境要因によって遺伝子発現が変化する、生物が進化の過程で獲得した遺伝子の高度な制御機構」とのこと。

 澁谷氏は次のように説明した。

 「ヒトの遺伝子は2万5000ぐらいだが、ハエやマウスなどとほとんど変わらない。じゃあ、ヒトは一体どういうことをやっているかというと、やはり高度な遺伝子制御があるということです。それによって、高度な『発生』とか『生命の維持』をしている。これがエピジェネティクス。

 これがさらに、環境によって、遺伝子の発現パターンが変わってしまう。そして、それが子の世代、孫の世代まで伝わってしまう場合がある」。

 質疑応答では、「母性の人権」という観点から「カネミ油症事件」に長い間携わってきたという女性から、以下のような質問があった。

 「カネミ油症の患者について、原爆も水俣も行わなかった『次世代調査』が国により初めて実施され、その中間報告が示された。その報告会が実施されるが、そこで国側に釘を刺したいと考えている。何かヒントを頂けないか?」

 この質問に対して、講義に参加していた男性から以下のようなアドバイスがあった。

 「問題は『次世代調査』の中身。患者の症状だけではダメだ。その背後にある人間の体の生理メカニズムが、どういうふうにおかしくなったのか? その中でも最も重要だと思われるものの一つがこのエピジェネティクス的機能に異変が起きていないかをちゃんと調べること。

 単に(ダイオキシンの)生殖毒性だけじゃなく、エピジェネティクス的な異常はないのか調べろ、と。(中略)エピジェネティクス的な、科学的な技術を、ちゃんとそれを追求・追跡しろ、と。患者の二世だけでなく、三世、四世についてもちゃんと追跡させること。そこのところが、今日の(澁谷氏の)ご講演の教訓の一つだと思います」。

 「カネミ油症事件」とは、1968年に、福岡県北九州市にあるカネミ倉庫株式会社で作られた食用油の製造過程で、PCB(ポリ塩化ビフェニル)が混入し、加熱されてダイオキシンに変化、これを摂取した人々に健康被害をもたらしたもの。

 IWJは2013年に元化学会社社員の原田和明氏による講演「カネミ油症事件から『フクシマ』が見える」を記事にしている。ぜひ、以下のURLより御覧いただきたい。

 澁谷徹氏の講義とその後の質疑応答について、詳しくはぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■ハイライト

  • 日時 2022年5月21日(土)13:30~16:30
  • 場所 スペースたんぽぽ(東京都千代田区)
  • 主催 たんぽぽ舎(詳細

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です