環境省「海洋放出は環境影響評価法の対象でない」 規制庁「廃炉に何年かかるか答えを持たない」!?──12.7 院内ヒアリング集会 放射能汚染水「海洋放出」は許されない! ~21年8月東電検討資料に基づく関係省庁ヒアリング 2021.12.7

記事公開日:2021.12.8取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(取材、文・木原匡康)

 2021年12月7日(火)午後1時より、東京都千代田区の参議院議員会館にて、「放射能汚染水『海洋放出』は許されない!~21年8月東電検討資料に基づく関係省庁ヒアリング」が、経産省前テントひろば主催で、約4時間近くにわたって行われ、IWJが生中継した。

 冒頭で、ピースデポ代表の湯浅一郎氏が、「福一、放射能汚染水の海洋放出は許されない─世界三大漁場に放射能を流すな─」と題する講演を行った。

 湯浅氏は、政府が福島第一原発の汚染水海洋放出の根拠とする経済産業省の「ALPS処理水の取り扱いに関する小委員会報告書」の問題点を指摘。「タンク貯蔵の選択肢を排除したこと」「トリチウム水放出の影響が小さい証拠はないこと」「生物濃縮の可能性」とともに、最大の問題として「放出する海がどういう海かの検討が何もなされていない」と強調。海洋放出される海は世界三大漁場の一つで、それは環境破壊に警鐘を鳴らした『沈黙の春』で知られるレイチェル・カーソンが「惑星海流」と呼んだ、太陽光と地球の自転による海流の賜物であると訴えた。

 続いての省庁ヒアリングでは、環境省、原子力規制庁、外務省、経済産業省・資源エネルギー庁、東京電力から、計14名もの担当者が出席した。なお動画では、省庁側の要望により、資源エネルギー庁、東京電力の担当者の顔は避けている。

 事前に主催者側から省庁に送られた質問のテーマは、湯浅氏の論文にもとづく「A 海の放射能汚染は許されない」をはじめ、「B 現在の『海洋放出』計画の問題点」「C 放出位置は基線の内側? 外側?」「D 地元の反対」「E 周辺国・太平洋沿岸国等の懸念とロンドン条約・国連海洋法条約・環境影響評価」で、計35問に上った。

 例えば、「海洋放出による放射線の影響」を問う質問に対して、資源エネルギー庁の担当者は、海洋放出は「国際条約やICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に沿って定められた規制基準を遵守する」としたが、主催者側はICRPの基準そのものを疑問視した。

 「海洋放出」事業に関して、「環境影響評価法」にもとづく環境影響評価(環境アセス)を行わない理由について、環境省の担当者は、「同法は事業実施前に環境影響評価を義務付けるもので、事業開始後は評価手続きは義務付けられていない」「万が一の事故による影響は当初予定している事業に含まれず、ALPS処理水の海洋放出は同法の対象に含まれない」と回答。しかし法律の趣旨にもとづいて実施すべきとの声があがった。

 担当者の回答が一通り終わると、改めて厳しい追及が行われた。

 たんぽぽ舎・共同代表の山崎久隆氏は、廃炉の期間が最長40年とされることに関して、「原子力学会ですら、100年から300年かかると言っている。それを最初に見直せば、全体の工程の組み立てが変わる」と指摘。「地震の影響で何が起こるかわからない状況で建っているボロボロの破壊炉」の「地震対策が最優先ではないか」と強く訴えた。

 再稼働阻止ネットワークの木村雅英氏が、「どういう時に廃炉が完了したといえるのか?」と問うと、資源エネルギー庁の担当者は、「放射性廃棄物の状態の分析を進めているところで、全体像が見えない中で、廃炉の完成形を言うのは難しい」と回答。木村氏は「だったら、なぜ廃炉を口実に汚染水を放出するのか?」と激しく指弾した。

 参加した社会民主党の福島瑞穂参議院議員は、次のように質問した。

 「(廃炉期間は)30~40年と言われるが、そんなもんじゃないだろうというのがみんなの思いで、汚染水は未来永劫ダダ漏れされるんじゃないかとの危機感が、今日の交渉のキモの部分だろう。原子力規制庁は、廃炉は何年かかると思っているのか?」

 これに対して、原子力規制庁の担当者は、「それに的確に回答する答えを今持っていない。少なくとも、ロードマップでそこを目指して、政府一体でやっている」「今、規制委員会として何年と言える状況ではない」と回答した。

 その他、長時間にわたる厳しいやり取りの詳細は、ぜひ動画を御覧いただきたい。

■ハイライト

  • 日時 2021年12月7日(火)13:00~
  • 場所 参議院議員会館 B109会議室(東京都千代田区)
  • 主催 経産省前テントひろば

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です