緊急対談 山本太郎×鈴木宣弘 「衆院選投票前に聞かないと後悔する知りたかったTPPの話」 2012.11.28

記事公開日:2012.11.28取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

特集 TPP問題

 2012年11月28日(水)15時、東京都大田区の大田区消費者生活センターで、「モンサントの不自然な食べもの」上映実行委員会主催による、「緊急対談 山本太郎×鈴木宣弘 『衆院選投票前に聞かないと後悔する知りたかったTPPの話』」が行われた。TPPの論客である東京大学の鈴木宣弘教授に、俳優の山本太郎氏が話を聞く形で進められた。鈴木教授は、TPPで懸念される多岐にわたる深刻な影響を紹介した。また、TPPを巡る交渉において、「内閣官房、外務省、経済産業省の関係省庁の担当者が、国民に情報を知らせずに水面下で協議している」と語った。
※会員用記事に全文文字起こしを掲載しました(2014年7月11日)

■ハイライト

  • 日時 2014年11月28日(水)
  • 場所 大田区消費者生活センター(東京都大田区)

 冒頭、山本氏は「TPPも、原発も、アメリカの基地も、すべてつながっている問題。結局、弱い者にしわ寄せがいく。TPPで、アメリカから24分野にも渡る不平等条約を押し付けられると、脱原発の道筋からも、遠ざかってしまう」と話した。

 鈴木教授はTPPについて、「太平洋を取り巻く各国で、経済連携を進めること。だが、実際には、参加国の関税を全て撤廃し、規制緩和を徹底し、アメリカの大企業が儲けられるようにする仕組みだ」と説明した。また、「2カ国、3カ国のFTAは、TPPと考え方は同じだが、国として守るべきものは例外を作って、お互いメリットがあるように交渉してきた。しかし、TPPは徹底的にアメリカ企業に有利になるよう、他国の規制等は全て撤廃という、非常に極端、かつ今までにない形が特徴だ。TPPで、世界各国を経済植民地化するのが、アメリカの思惑だ」と指摘した。

 TPP参加の経済的メリットについて、鈴木教授は内閣府の試算を紹介し、「TPPに参加しても、GDPは0.5%程度しか増えず、日中のFTAの方がGDPは増える」と説明した。さらに、「ASEAN10カ国+日中韓の13カ国で、アジア中心のFTAができれば、TPPの倍のメリットがある」と話した。

 一方、TPPの規制緩和によるデメリットの一例として、安全ではない食品が入ってくる可能性を指摘した。遺伝子組み換え食品は、現在は、安全審査の実施や表示義務により、消費者が選択できるようになっている。鈴木教授は「アメリカから、それは不当だと言われれば、遺伝子組み換えの表示ができなくなり、消費者は選択の自由を奪われる。価格は安いけれど、身体に影響が出るようなものを、食べざるを得ない状況になる」と危惧する。さらに価格の安さだけで、国内の農業を止めてしまうことの危険性について、「農業は国家戦略。食糧の輸入に頼りすぎて、いざという時に兵糧攻めをされたら、日本は存続できない。国民に危機感が足りない」と訴えた。

 TPPのISD条項について、鈴木教授は「アメリカの企業が、日本でビジネスをする際に不利益を被る場合、日本政府を国際裁判所に提訴して、莫大な損害賠償を求め、不利益になる制度自体を撤廃させられる条項だ」と述べた。「しかも、国際裁判所といいながら、アメリカの傘下にあるので、アメリカ企業に有利な判決ばかりでている。人々の命を守る安全基準、環境基準、社会の平等を守るためのセーフティネットのような制度まで、アメリカ企業の都合でなくすことができる」と説明し、「TPPというのは巨大企業の利益のために、ルールの廃止を要求し、応じなければ、ISD条項での提訴、という2段構え。そこが恐ろしい」と話した。

 医療分野への影響については、「日本の国民健康保険があるため、アメリカの保険会社と製薬会社の利益が損なわれるとして、ISD条項で提訴されるだろう。安価な後発医薬品(ジェネリック)に利益を阻害されないよう、アメリカの新薬の特許期間を長くして、市場を独占することも可能だ」と話した。鈴木教授は「このように、アメリカは日本にとどめを刺そうとしているのに、日本政府は、TPPでは日本の医療については取り扱わないから絶対大丈夫だ、と言う」と批判した。

 鈴木教授は、TPPへの参加協議に関して、「アメリカから要求された項目に対して、日本の官僚が裏交渉をしている」と指摘する。「自動車の問題、郵政民営化の問題、米国産牛肉の輸入月齢規制の緩和。この3大懸案事項について、アメリカと合意すると、TPP参加が決まる。総選挙後の政府の対応で、踏みとどまれるかもしれないが、実務的には官僚レベルで参加が承認されてしまう。危険な状態だ」と、懸念を表した。

 山本氏は「TPPを進める事自体、国を売るようなものだ」と驚き、「今、できることは、TPPに対する国民の認識を広めていくこと。例えば、TPPに参加したら歯を1本抜くのに100万円かかる、と聞けば、無関心な人も驚くはず。一人ひとりが、いろんな形でやれることがある」と話した。質疑応答では、エネルギー政策、公共工事、遺伝子組み換え食品など、TPPが影響を及ぼす、幅広い範囲に渡って質問が続いた。

(…会員ページにつづく)

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