よほどやましいことがあったのだろう。加計学園の獣医学部新設をめぐり、政府が「加計ありき」を隠蔽するために「加計隠し」を図っていたことが明らかになった。
8月6日付の朝日新聞の報道によると、2015年6月5日、国家戦略特区会議ワーキンググループ(以下、WG)に加計学園系列である千葉科学大学の吉川泰弘教授(現・加計学園新学部設置準備室長)ら加計学園の幹部3名が出席していたが、議事要旨に出席・発言の記載がなかったことが明らかになった。
これに対し、2016年10月17日には京都産業大学の関係者がWGのヒアリングに参加し、獣医学部新設に関してプレゼンテーションを行っており、内閣府が作成した議事要旨に出席・発言の記載が存在している。(※)
(※)内閣府が作成した議事要旨には、大西辰彦京都産業大学副学長(当時)や大槻公一京都産業大学教授の出席・発言が記載されている。
なぜ京都産業大学の関係者が政府関係者と会合したことは明らかにされているのに、加計学園の場合が政府関係者と会合したことは隠されているのか。加計学園と政府との間で「加計ありき」を示す事情が存在したため、その隠蔽を図ったのであろうか。
さらに、週刊朝日8月18日‐25日号によると、WGの約2か月前の2015年4月2日に、加計学園の関係者が愛媛県今治市の職員と首相官邸に同行していたことが今治市の関係者の証言から明らかになった。
新たな報道を受け、2017年8月7日、衆議院第一会館で民進党加計学園調査チームのヒアリングが行われた。
ヒアリングには、民進党・加計学園疑惑調査チームから座長の桜井充議員、山井和則議員、宮崎岳志議員、玉木雄一郎議員、杉尾秀哉議員らが出席し、政府側の担当者として、内閣府の塩見英之参事官が出席した。
- 民進党 国会対策委員会「加計学園疑惑調査チーム会合」―議題:2015年6月5日のWGについて
- 日時 2017年8月7日(月)14:00〜
- 場所 衆議院第1議員会館(東京都千代田区)
加計ありきを隠蔽!? 内閣府の担当者は2015年6月5日のWGに加計関係者がプレゼンテーションを行ったことは明らかにせず
国家戦略特区の獣医学部新設の公募手続開始日(今年1月4日)の前に、加計学園の関係者がプレゼンテーションを行ったのか否かについて、国会内でやり取りがされたことがあった。
桜井充議員は、今年5月23日の参議院農林水産委員会で、「WGの中で、京都産業大学はきちんとした形でプレゼンテーションを行ってきていますが、加計学園が自らプレゼンテーションを行ったのか、私の調べる範囲ではなかったんですけど、実際加計学園からのプレゼンテーションはあったんでしょうか?」との質問を内閣府の松本内閣府副大臣に対して投げかけた。
松本副大臣は「加計学園は、今年1月4日の(国家戦略特区における獣医学部新設の)公募手続開始後はプレゼンテーションしたことはあるが、それ以前はない」と答弁していた。
しかし、朝日新聞の報道によれば、加計関係者が公募手続開始日(今年1月4日)以前の2015年6月5日にWGに参加し、プレゼンテーションを行っていた可能性がある。加計関係者が公募手続開始以前にプレゼンテーションを行っていたとすれば、松本副大臣は虚偽の答弁を行ったことになる。
そこで、ヒアリングの冒頭に桜井充議員はこう切り出した。
「松本副大臣の答弁と朝日新聞の報道(2015年6月5日に加計関係者がWGに参加していたこと)は全く異なっているんですよ。そうすると、(朝日新聞の誤報か、あるいは)国会で虚偽答弁したことになるんじゃないかということになるのですが、この点をどのように考えているのかお聞きしたい」
これに対し、内閣府の塩見参事官は、手元のペーパーと桜井議員の方を交互に見ながら、こう答えた。
「加計学園は、今治市の独自のご判断で、今治市と一緒に研究をしていた説明補助者として、同席していただきました。私共は、WGは(獣医学部新設の)提案者である愛媛県と今治市のお話を承る場と認識しており、その発言について議事要旨を作成し、公表しているわけでございます」
何を言っているのか、さっぱりわからない答弁である。朝日新聞の報道が誤報であり、松本副大臣の国会答弁が正しい、とも言いきっていない。質問に対してまったく答えていないのである。
追及は続いたが、塩見参事官は感情を悟られまいとするような口調で、2015年6月5日のWGで加計関係者がプレゼンテーションを行ったか否かという事実についてはついにまったく明らかにしなかった。
今年3月に公開された2015年6月5日のWGの議事内容を記載した議事要旨で、実際の議事内容が一部削除されていたことは、「加計ありき」を隠蔽するための「加計隠し」である
加計の関係者が参加した2015年6月5日のWGのヒアリングでは、議事内容が当初「非公開」とされていた。その後、今年3月6日、内閣府が議事内容を「議事要旨」として「公開」した。
しかし、公開された議事要旨によれば、内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(当時)が『議事内容の扱いは公開でよろしゅうございますか』と問いかけたのに対し、愛媛県の山下企画振興部地域振興局長(当時)が「はい」と答えている。このやり取りからすれば、議事内容を当初から非公開にせず、公開してもよいはずである。
桜井議員は、「議事要旨に記載された内容からすると、議事要旨を非公開にするという説明は違っているのではないか」と塩見参事官にたずねた。
すると、塩見参事官は、ヒアリングの冒頭と変わらず、感情を悟られまいとする様子で、「議事要旨と資料が公開されなかったのは、愛媛県と今治市の要望を受けて(WGの八田達夫)座長が非公開にすると判断したためであります」と答えた。
この回答に対し、桜井議員は間髪入れずに「違う違う。そうじゃない」と否定し、こう続けた。
「議事要旨の藤原次長の発言のところに何て書いてありますか。『資料その他の議事内容は公開の扱いでよろしゅうございますでしょうか』と聞いて、愛媛県の山下一行企画振興部地域振興局長(当時)が『はい』と答えているじゃない。そうしたら、今のあなたの説明は違うでしょう?」
桜井議員は、議事要旨のやり取りについて繰り返し質問したが、内閣府の塩見参事官は議事要旨の内容には全く触れず、「当初は非公開」にし、「後に公開」したという経緯だけを壊れた機械のように繰り返し続けた。桜井議員の質問のポイントは明らかなのに、一切、そのポイントには回答しようとしなかった。塩見氏が発言するたび、民進党の議員は野次を飛ばしたり、「駄目だよ!」と声を出して呆れ果てた様子を示したりしていたが、塩見氏の頑なな姿勢が変わることはなかった。
ヒアリングの翌日8日、公開についてのやり取り部分が議事要旨からバッサリ削除されていたことが報じられる!
本ヒアリングの翌日8月8日、新たな事実が明らかとなった。8月8日付の東京新聞で、WGの八田達夫座長が2015年6月5日のWGのヒアリングの「議事要旨」に関し、冒頭の議事内容公開についてのやりとり部分を削除していたことが報じられたのだ。
もともとのやり取りはこうである。
内閣府審議官「議事内容は公開の扱いでいいか」
愛媛県「非公開を希望する」
内閣府審議官「提案した事自体については、公開していいか」
愛媛県「はい」
これが3月に公開した議事要旨では以下のようになっている。
内閣府審議官「議事内容は公開の扱いでいいか」
愛媛県「はい」
このように、実際には愛媛県側が「非公開」を希望していたにもかかわらず、即時に「公開」を了承したかのように書き換えられており、実際のやりとりとはまったく「真逆」の議事要旨ができあがっているのだ。
内閣府の塩見参事官が同じ説明を繰り返すのは「加計隠し」のため!? 議事内容を当初非公開としたのに、後日公開することになった理由についての質疑応答は、終始噛み合わず
8月7日に行われたヒアリングに話は戻る。ヒアリングでは、議事内容を当初非公開としたにも関わらず、後日議事要旨が公開されることになった理由について質疑がなされた。