そもそも民進党蓮舫代表の「国籍問題」なるものに、何の違法性も問題もないことをIWJではかねてより指摘し続けてきた。
それでもあえて問題があるとするならば、それは1972年の日中国交正常化により日本が台湾の政府を公式に認めていないという「2つの中国」の問題であり、加えて1984年まで改正されなかった女性差別的かつ非人道的な国籍法とによって引き起こされた手続き上の混乱であり、そんな状態を長年放置してきた行政の怠慢だろう。
「二重国籍疑惑」を違法行為か国益を害する大問題であるかのように最初に指摘したのが極右言論サイト「アゴラ」だった。「アゴラ」主宰者の池田信夫氏や元官僚で評論家の八幡和郎氏らは、執拗に蓮舫氏の民族・国籍を追及し、蓮舫氏側の説明の細かな矛盾点を「虚偽」「嘘」と決めつけて差別主義・排外主義的に攻撃し、「偽装愛国者」らを煽り続けてきた。またそれらに周到に追随してきた産経新聞、読売新聞をはじめとした大手メディアもレイシズムに加担してきたとの批判はまぬかれない。
2017年7月18日、民進党本部で蓮舫代表が、「自身の『国籍問題』の説明責任を果たす」ため、台湾内政府との間で交わされた国籍離脱手続きの書類とともに、1980年代に自身がまだ台湾籍だった頃に使っていた最後の、期限の切れたパスポートや、日本国籍を選択宣言した日付の記載された現在の戸籍の一部までもメディアに公開し、自身がすでに台湾国籍を有していないことをあらためて公表した。
▲民進党 蓮舫代表
- 日時 2017年7月18日(火) 17:00~
- 場所 民進党本部(東京都千代田区)
公開に先立ち「戸籍は秘匿性の高い情報、他者によって強制的に示せと迫られるものではない」「開示するのは私で最後にしていただきたい」と強く訴え
蓮舫氏は昨年10月に日本国籍を選択する宣言を届け出た後も、プライバシーを理由に国籍選択の日付が記載された戸籍の公開を拒んできた。
それを今回公表することに決めたのは、7月2日に投開票のあった東京都議選での「敗北」とも言える結果を受け、党内会合で一部の議員から蓮舫氏の「国籍問題」が原因だと指摘されたため、執行部への不満を和らげるためだと言われている。
その一方、会見に先立つ事前説明の場で民進党の大串博志政務調査会長は、
党内外から「今回の戸籍公開が悪しき前例となり、排外主義者達によるマイノリティへの卑劣な攻撃の口実となる」と、懸念する声も多数寄せられていると明かした。この懸念はもっともなものだと思う。
その上で、記者会見にのぞんだ蓮舫代表は、「私の不確かな記憶や不安定な発言に端を発した問題。説明責任を果たす必要がある」と、戸籍の一部を開示した理由を説明した。
同時に「戸籍は秘匿性の高い情報であり、安易に公開を迫られるものではない。他者によって強制的に示せと迫られるものではない」とも述べ、「開示するのは私で最後にしていただきたい」と強調して訴えた。
野党第一党党首として、政治的にやむを得ないギリギリの選択、苦渋の決断をした蓮舫氏の胸中がうかがえる。
「様々な形で差別を受けているマイノリティの方たちに寄り添い、その方たちの声を汲み上げ、共生社会を実現する先頭に私が立っていきたい」
この日の午前中、法政大学の山口二郎教授や立教大学の西谷修特任教授、同大学の香山リカ教授など学者5人と、神原元氏、金竜介氏、小田川綾音氏ら弁護士5人が連名で民進党に申し入れを行い、排外主義的な声に乗せられ、戸籍という個人の秘匿性の高い情報を公開するのをやめるよう、求めた。
▲記者会見を行う山口二郎・法政大学教授、香山リカ・立教大学教授ら
この申し入れのための記者会見では、「戸籍公開」という蓮舫代表の決断や民進党執行部への批判が繰り返されたが、在日コリアン弁護士協会理事の金竜介氏は、「我々在日コリアンは『蓮舫頑張れ』と思っている。『あなたはできる(差別と戦える)立場にいるじゃないか』と。この数年路上で排外主義に抗する人々が頑張って、法律もできた。その中には民進党もいる。その流れを作ったことを信用して欲しい。蓮舫さんもキツいんだったら助けてくれと言って欲しい。我々はいくらでも助けますから」と語り、「多様性の象徴」としての蓮舫氏に期待すると同時にマイノリティとして心無い攻撃にさらされる蓮舫氏を思いやる発言もあった。
▲在日コリアン弁護士協会理事・金竜介弁護士(左)と西谷修・立教大学特任教授(右)
IWJが蓮舫氏の会見で、質問に際してこの金弁護士の言葉を伝えると、それまで終始厳しい表情だった蓮舫氏に笑顔が見られた。
そして「野党第1党党首として、戸籍を開示しないことがマイノリティへの責務なのではないか」との金弁護士の言葉も伝えた上で、「一部であれ、戸籍を開示してしまった今、差別を受け続けているマイノリティの方たちへ伝えたいことはないか」と尋ねると、蓮舫氏は以下のように答えた。
「申し入れはしっかり読ませていただきました。本当にしっかりした考えを持っておられるし、この方たちがヘイトスピーチに対して、あるいは排外主義者に対して毅然とした対応でこれまで向き合ってきた姿勢には共感しますし、その部分で私たちもヘイトスピーチをなくすための法律もこれまで作ってきました。これからも同じ姿勢で基本的人権に配慮をする、基本的人権を守るための活動は民進党として行っていきたい」
そして「様々な出自とか性別、いろいろなものによってマイノリティの差別を受けている方たちに寄り添う、その方たちの声をしっかりと汲み上げる、そして共生社会を実現する。それを多様性の象徴でもある私が先頭に立って実現していきたいと、強く思っています」と、あらためて決意を語った。
法の趣旨も理解できないまま実在しない「二重国籍問題」を騒ぎ立て、排外主義者を煽り立てる「アゴラ」
会見では、「戸籍・離脱証明・旅券」の開示を求めてきた極右サイト「アゴラ」の編集長・新田哲史氏が、自分たちが「この問題を最初に指摘した」と、得意満面に自己紹介し、質問に立った。
様々な形で差別を受けているマイノリティの方たちに寄り添う・声を汲み上げる・共生社会を実現する先頭に私が立つ!!~民進党蓮舫代表が戸籍の一部公開の場で断言 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/390834 … @iwakamiyasumi
歪な社会を反映している二重国籍騒動。酷い話だ。
https://twitter.com/55kurosuke/status/887432060628983808