「9条を残しつつ自衛隊を明文化」「2020年を新しい憲法が施行される年に」――安倍総理が改憲に向け大幅譲歩!? 露骨に歩み寄る自公、秋波を送る維新が「改憲集会」で足並みを揃える! 2017.5.3

記事公開日:2017.5.4取材地: テキスト動画
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(取材:城石エマ、谷口直哉 文:城石エマ)

 「『9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む』という考え方、これは、国民的な議論に値するのだろう、と思います」――。

 敗戦を迎えた日本で、「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」を柱とする日本国憲法が施行された1947年5月3日から、今年(2017年)5月3日で70年を迎えた。

 節目となったこの日、各地で憲法関連の集会が開催。その中で、都内の砂防会館では今年も、日本会議系の民間団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(共同代表・櫻井よしこ氏)などが改憲を求めるフォーラムを開き、安倍総理がビデオメッセージを寄せた。会場には、主催者発表で1150名の参加者が集まった。

 冒頭の言葉に加え、安倍総理はビデオの中で、さらに続けて次のようにも述べた。

 「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい、と強く願っています」

▲安倍総理からのビデオメッセージに聴き入る参加者たち

 自民党は今年3月5日に総裁任期を「連続3期9年」に延長したばかり。安倍総理が次期総裁選で三選すれば、最長で2021年9月まで続投が可能となる。「2020年」は、安倍総理が総理大臣として改憲を実現するための「デッドライン」だろう。

 この日、フォーラムに登壇した公明党の遠山清彦衆議院議員(衆院憲法審査会委員)は、「9条1項と2項を変えずに、3項(自衛隊)を追加するというのは、我が党の『加憲アプローチ』に合うものであると留意したい」と、安倍総理の発言を歓迎した。

▲安倍総理の発言を歓迎する、公明党の遠山清彦衆議院議員(衆院憲法審査会委員)

 これまで、「国民の理解が得やすい」という理由から、自民党が改憲でまず着手するのは「緊急事態条項」の創設であると見られてきた。しかし、同盟相手の公明党は、「緊急事態条項」の創設に慎重な態度を見せていた。森友学園問題、加計学園問題、さらには今村雅弘前復興大臣や山本幸三地方創生担当相の暴言で政権の存立自体が揺らぎ始めている今、少しでも実現可能性が高い選択肢をとったのだろう。

 そこには、なんとしても改憲にこぎつけたい安倍総理の思惑がにじむ。

記事目次

■ハイライト

  • 登壇者 櫻井 よしこ (ジャーナリスト・主催者代表)/古屋圭司氏(自民党・衆院憲法審査会幹事)/遠山清彦氏(公明党・憲法調査会事務局長)/足立康史氏(日本維新の会・衆院憲法審査会委員=予定)/西修氏(駒澤大学名誉教授)/打田文博氏(美しい日本の憲法をつくる国民の会事務総長)/尾崎正直氏(高知県知事・巨大地震被害予想県)/西高辻信宏氏(日本青年会議所副会頭)/平池牧子氏(JC憲法輿論確立会議)

「緊急事態条項を入れることを優先事項の一つに」――櫻井よしこ氏がトーンダウン!? それでもやめない根拠なきプロパガンダの流布!

 昨年の同フォーラムでは、櫻井よしこ氏が震災の際に憲法のせいで「助けることのできる命が助からなかった」というデマを公然と唱えて、「緊急事態条項」の創設を訴えた。しかし、安倍総理の発言を受けてか、今年は「憲法に緊急事態条項を入れることを優先事項の一つにしていきたい」と、トーンダウン。

 それでも、近いうちに起こるかもしれない「南海トラフ地震」の可能性に触れつつ、「どうやって国を、国民を、命を守るのか。最大限、私たちが知恵を絞って対策を取らなければならない」と、「緊急事態条項」が国民の命を救うことになるのだと「アピール」するのも忘れなかった。口調を変えても、災害をダシにして全体主義を実現しようとする本質は何も変わっていない。

▲自称「ジャーナリスト」の櫻井よしこ氏

 そもそも、「緊急事態条項」があれば助かった命がある、などとする櫻井氏の発言は、まったくもって事実無根のデタラメである。

 昨年の同フォーラムでの櫻井氏の発言によれば、3.11では憲法の財産権の保障によって、がれきなどの撤去ができず、道がつくれなかったという事例があり、その結果、対策が遅れ、助かる多くの命が助からなかったと、事実とは全く異なる虚言を唱えたが(いつ、どこでそんな出来事が起こったのか、桜井氏は事実関係には一切触れない。事実に基づかず、真実をねじ曲げる点で、櫻井氏はもはや「ジャーナリスト」とは呼べない)日弁連災害復興支援委員会前委員長の永井幸寿弁護士は、現行の災害対策基本法によって、そうしたケースにも充分対応が可能であるとして、櫻井氏の発言を否定した。

 しかし、きちんとした知識を前提としなければ、櫻井氏の言葉に説得されてしまう人がいるのも事実だろう。この日、フォーラムが終わったあとでIWJの取材に答えた参加者の女性(東京都板橋区)は、「櫻井さんの言っていることはとてもバランスが良い」と櫻井氏をほめつつ、「緊急事態条項」のことは「よくわからない」と言葉を濁した。IWJ記者が「被災地からは、国に権力を集中するよりも地方に権限を、という声もありますが」と伝えると、「それでしたら、現場に近いところのほうがちゃんと行動できると思います」と述べた。「緊急事態条項」についての前提知識は、まだ一般的にはあまり浸透していないようだ。

 「緊急事態条項」はいらないと断言する永井弁護士の徹底反論は、以下の記事で詳述しているので、ぜひ、ご一読いただきたい。

 また、永井弁護士には岩上安身もインタビューをして、「緊急事態条項」について詳しくお訊きしている。ぜひ、こちらもご覧いただきたい。

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