【岩上安身のツイ録】外征、収奪、差別・・・古代からアメリカのような「帝国」であろうとし続けてきた国・日本――2013年のオリバー・ストーン監督来日に際して 2017.1.22

記事公開日:2017.1.22 テキスト
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(岩上安身)

※2013年8月9日~12日のツイートを加筆し、再掲しています。

 北海道でアイヌ民族の話を聞いた2日後(2013年8月8日)、長崎でオリバー・ストーンの話を聞く。考古学や古代史や言語学や形質人類学の本を読んだ直後に『もうひとつのアメリカ史』(オリバー・ストーン&ピーター カズニック共著)を読む。まったく異なるジャンル、と思いきや、通底しているものがある。

 米国は、どう美しい理想を掲げても、「帝国」なのだ、という事実を、『もうひとつのアメリカ史』は序章から徹底的に繰り返す。国内の経済の矛盾を外部の市場を獲得し、収奪することで克服しようとする「帝国」のひとつなのだと。

▲『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』全3巻
▲『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』全3巻

 8日の長崎のシンポジウムにおいて、オリバー・ストーン監督は、場内の市民に対して、「なぜ、皆さん日本人は素晴らしい人たちなのに、中国人、朝鮮人に対しては残酷なことをしてきたんです?」と問いかけた。その答えは、実のところ彼自身の本の中に書かれている。日本もまた、「帝国」だからである。

▲オリバー・ストーン監督――2013年8月8日、長崎市内
▲オリバー・ストーン監督――2013年8月8日、長崎市内

 正確に言えば、「帝国」であろうとして無理を重ねてきた国、ということになる。「帝国」の本質は収奪である。戦争はそのための手段に過ぎない。「帝国」として最も冒険主義的な拡張を図ったとき、即ち明治維新直後から1945年までの時期、朝鮮、台湾、満州、中国まで支配の爪を伸ばした。

 しかし実は、日本(畿内を中心とする大和朝廷)は、近代の帝国主義のはるか昔、古代の時代から、「帝国」であろうとし続けてきた。

 征服のために最も時間がかかったのは、東日本。「日本書紀」「続日本紀」に描かれた、先住民の蝦夷(エミシ)を追い詰めてゆく様は、北米大陸で先住民を駆逐し、土地を奪ってゆく過程と様相が重なり合う。

 近世まで日本人(和人)の征服事業が届かなかった蝦夷地に住んでいたのがアイヌ。そのアイヌを一気に日本という国家に編入してしまったのは、明治以後のことだ。米国の白人が200年かけて行った征服事業を日本という「帝国」は、2000年あまりの時をかけて行なってきたのだ。

 征服事業があまりに長期に渡ったせいで、大方の日本人は、収奪するものと収奪されるものが、画然と存在するという事実がわからなくなってしまっている。「なぜ日本人は残酷な振る舞いをしたか?」というストーン監督の問いは、米軍がフィリピンでどんな残酷な虐殺や拷問をしたかについて、ストーン監督自身が書いているように、それが「帝国」の本質なのだ。

 今や、自分たちのコロニーや自治区もなく、言葉や文化の伝承もおぼつかなくなっている先住民アイヌの姿は、米国内の先住民ネイティブの似姿でもある。米国では他民族を征服し、土地を奪い、領土を拡張してゆくことを、「自明の運命(マニフェスト・デスティニー)」と呼び、正当化した。この特権意識こそ、「帝国」の意識のコアをなす。

 米国の中には「帝国」であろうとするベクトルと、民主的であろうとする勢力や理念がせめぎ合ってきた。事情は日本も同様だが、日本の場合、後者の勢いが非常に弱い。もともと弱いところにもってきてますます弱体化が進んでしまった。

 周辺民族を見下し、過剰に侮辱し、ことさらに威丈高になるのは、「帝国」意識の産物である。 その「帝国」意識は、外地だけでなく内地にあっても発動され、様々な差別や収奪の発生源となっている。

 「帝国」の中核をなす特権層に見受けられる差別意識がはっきり指弾され相対化され、「帝国」の支配層の特権意識と搾取の構造への批判が高まらないと、この残酷さを本当の意味で相対化し、反省して乗り越えることは困難であろうと思う。日本は今また、極東の「小帝国」であろうとする欲望と、その実現を図る具体的な勢力が頭をもたげてきている。

 米国という「大帝国」が自国だけで版図の経営をまかないきれなくなり、リバランシングの名の下に、肩代わりをつとめろと迫る、こんな時こそ、極東の地域限定「小帝国」として、周囲に対して再びブイブイ言わせるチャンスだと、日本国内の帝国主義者たちは思っているはずだ。

 だがおかしいのは、敵基地攻撃論まで掲げて、外征も行えるようにして、ミサイルや下手すれば核保有まで視野に収めている、というその拡張主義者は、いったい何を得ようとしているのか。その目的と狙いがまったく見えない。今さら周辺諸国を併合しようなどというのは夢物語である。いったい彼らは何をしたいのか。

 「小帝国」日本にとっては、何らの獲得物もなく、米国という、上位のグローバル「大帝国」の鉄砲玉にされて、さらにTPPという軍事経済ブロックにより、富は根こそぎ、という、実に実に痛い結末に終わるのではないか、と思えてならないのだ。廃墟にこだまするのはヘイトスピーチのみ、とか。

岩上安身が本に付けた大量の付箋に、オリバー・ストーン監督が大喜び!

※2013年8月10日のツイート

 僕は本を読む時、付箋を貼ったり、線を引いたりするのだが、「もう一つのアメリカ史」は、付箋を貼りながら読んでいる。それを見たオリバー・ストーンとピーター・カズニック教授は、大喜び。カズニック教授は、自分のデジカメを取り出して撮影していた。

▲付箋だらけの『もう一つのアメリカ史』
▲付箋だらけの『もう一つのアメリカ史』

食料戦略にも発揮される米国の「帝国主義」

※2013年8月11日、12日のツイート

 今日届いた本。鈴木宣弘東大教授の新刊『食の戦争〜米国の罠に落ちる日本』(文春新書)。前書きから。

 「アメリカのウィスコンシン大学の教授が農業経済学の授業で、『食料は軍事的な武器と同じ。直接食べる食料だけでなく、畜産物のエサが大事である。まず、日本に対して、日本で畜産が行われているように見えても、エサをすべてアメリカから供給すれば、完全にコントロールできる。これを世界に広げていくのがアメリカの食料戦略だ。諸君も頑張れ』」。

 これが米国の大学の授業。この帝国主義的な支配の論理が、米国の食料戦略。

▲鈴木宣弘著『食の戦争』
▲鈴木宣弘著『食の戦争』

 Amazonは、日本でも、他の国々でも、法人税を払わない。そうした租税回避企業はAmazonだけではない。そのツケは中間層以下に降りかかる。グローバル経済の現実。「タックスヘイブン」の著者・志賀櫻氏に14日水曜日インタビュー。

 税金をいかにして逃れるか、富裕層と巨大多国籍企業は、常に知恵を絞っている。時には戦争とそのあとの占領政策においても。オリバー・ストーン監督とピーター・カズニック教授の共著『もう一つのアメリカ史』には、あのイラク戦争のあと、何が行われたか、こう記されている。

 「2003年5月27日、ブレマーは、イラクが『経済活動を再開した』と宣言し、命令を発し始めた。命令第37号で税金を一律15%にし、それまでおよそ45%を払っていた富裕層と個人の税金を軽減した」。あれだけの大戦争をして、まずやったことは減税だったのだ!

 「…命令第39号では国営企業を民営化し…」、国営企業を民営化させるには、戦争が必要だったのだ! 麻生副総理は、「日本の水道事業をすべて民営化します!」と米国のCSISで約束して来た。今日、戦争をしたわけでも、負けたわけでもないのに、である。何という気前の良さ!

▲講演する麻生太郎副総理――2013年4月19日、ワシントン
▲講演する麻生太郎副総理――2013年4月19日、ワシントン

 再び、『もうひとつのアメリカ史』から引用する。

 「…イラク企業を100%外国人が保有することを許可した。利益はそっくり海外へ持ち出せるようにした。リース契約などの契約は40年間まで結べるようにし、更新も可能にした。命令第40号では銀行を民営化した」

 「…ラムズフェルドは、これらの改革によって、『自由世界でも特に進んだ――そして魅力たっぷりな――税制と出資法』になったと公言した。復興費は推定で5000億ドルに達したから、『エコノミスト誌』が『資本家の夢』と呼んだのも不思議ではない」。復興費の乱用。どこかで聞いた話だ。

 「…ノーベル賞受賞者で元世界銀行首席エコノミストのジョセフ・スティグリッツによれば、イラクは『旧ソ連圏諸国で実施されたよりもっと過激なショック療法』を受けたのだった」。日本のTPP参加は、米国の資本にとって、一滴の血も流すことなく手に入れたおいしい戦利品だったことだろう。

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